絞め殺しの樹 (小学館文庫 か 58-1)
絞め殺しの樹 (小学館文庫 か 58-1) / 感想・レビュー
Sam
初読みの著者。題名からは島田荘司「暗闇坂の人喰いの木」のようなおどろおどろしい話?などと思ったがそんなはずもなく(人間の悪意や理不尽を余すことなく描いたという意味ではおどろおどろしかったが)、非常に骨太で読み応えのある作品だった。どこまで行っても過酷な運命から逃れられない母と子が描かれるが、カタルシスと再生の予感に溢れた終盤の展開は見事。構成も巧みだと思うし匂い立つような描写がまた素晴らしい。凡百の作家が到底及ばぬ力量の作家であることが本作だけで分かる。(まだ受賞作は未読だが)直木賞も当然か。
2024/04/22
まさ
文庫になったので改めて再読。ずっと重たい日々が続く話であることはわかっているのだけど、河﨑さんの作品は日々に向き合い懸命に生きることを教えてくれる。時代は違えど寄生してくる人はいる。しかしそこに生きるには強い自分になっていかないと。重いけど、前を向こうと感じさせてくれますね。
2024/04/29
カノープス
木内昇、津村記久子、そして河﨑秋子。個人的に今、最もその才能に注目している3人。作家に男も女もない。書いたものだけで評価されるべきだが、現代においてズシリとした手応えあるものを読ませるのが女性作家に多いのは何故なのか…これは興味深い現象である。本作の河﨑も最高である。古き良きNHKの連続テレビ小説を思わす女の一代記風の第一部前半~中盤は、特に素晴らしい。小山田の息子がサイコパスすぎた事だけがマイナスの印象。時代背景、置かれた立場を考えればミサエの行動は理解できる。木内昇の解説が嬉しく、かつ素晴らしかった。
2024/04/14
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