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時空ドーナツ (ハヤカワ文庫 SF ラ 3-9)

時空ドーナツ (ハヤカワ文庫 SF ラ 3-9)

時空ドーナツ (ハヤカワ文庫 SF ラ 3-9)

作家
ルーディ ラッカー
Rudy Rucker
大森望
出版社
早川書房
発売日
1998-10-01
ISBN
9784150112493
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時空ドーナツ (ハヤカワ文庫 SF ラ 3-9) / 感想・レビュー

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白義

無限大と無限小が循環の果てに一致する究極の領域、そこでは多元宇宙そのものから素粒子の一つ一つに至るまで全てが等しく命を持つ。禅とロックが交響する奇天烈宇宙論で神の脳までたどり着くヴィジョンだけで並のSFを超える密度なのになんとそこまでいってまだ半分。アイデアもさることながらさらにそれを人工知能に自我を与えるためのギミックにした上で、ラストはやけっぱちのアナーキーな崩壊感覚で一気に駆け抜ける疾走感。ハードな数学的背景だけでなくプレサイバーパンクというべき砕けてファンキーな文体感覚もまた確立されている超絶傑作

2018/01/24

ニミッツクラス

98年の本体620円の初版。カバーは横山アニメで、邦題と相まって手の出なかった一冊。大森訳が吉と出るか凶と出るか今回トライ。カバーの雰囲気だけではハチャメチャかと思えるが、著者ラッカーは数学者で、少なくとも本書は時折想像しがたい描写の入るエンターテイメントハードとでも言うべき3部構成の作品だ。主人公たちは無限に縮まっていく。その過程はとても面白く、一応の結末が出たと思った処がまだ本書の半ばで驚きあきれる。3部から現状打破のコントラ活動になるが、自分ならその件を応援したいかなぁと疑問にも思う。★★★★☆☆

2016/09/22

unknown

フランク・ザッパ(と、ストーンズ)からインスパイアされた、三部構成の超空間物理サイバーパンクSF処女長編。時空ドーナツ理論はある意味【万物同サイズの法則】かも。ミクロの世界からマクロの宇宙まで旅する第二部のイメージのめくるめく氾濫や、 巨大なネットワーク知性が大暴走しててんやわんやな第三部終盤の、時空/時間流をジャンプする展開は凄まじい。専門用語の連発に加えて、カオスでぶっ飛んだ内容に面食らわせられつつも、グイグイ読ませる手腕はやっぱり魅力的。フリークアウトする面白さ。

2011/02/10

hirayama46

本国ではなかなか不遇な立場にあり、ろくに読めない状況が続いたらしいルーディ・ラッカーの処女長編。久しぶりにラッカーを読みましたが、記憶よりも読みやすいな、と思いました。翻訳が黒丸尚じゃなくて大森望だからかしら……。内容は「物質は限りなく極小化を進めていくとある地点で極大に裏返る」という奇想をベースに進めていく長編で、アイデア中心ですがディテールに凝っていて楽しかったです。ただ、どんどん縮んでいくミクロ描写に比べて、想像力が追いつかないくらいに巨大化するマクロ描写は不足があるというか省いている感じが惜しい。

2020/11/13

roughfractus02

極大と極小を繰り返せば意識は生ずるのか?著者の物語の疾走感に慣れた読者なら、どうやって人工生命や四次元概念を書物に留めず、読者の生きる世界に導入するのか?という数学者である著者の研究テーマを念頭に、自らの現実感を試す実験として本書に向かうことも可能だ。クウォークより小さくなり宇宙より大きくなることは<~より・・・、~より・・・>の循環によって現実感「より」以上の何かに接近する技法のようだ。著者が本書を「トランスリアル」小説と呼ぶのは、彼と読者の「リアル」を「トランス」する何かにジャックインするからだろう。

2018/10/28

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