忘れたことと忘れさせられたこと (文春文庫 え 2-10)
忘れたことと忘れさせられたこと (文春文庫 え 2-10) / 感想・レビュー
Toshio Iwamura
日本論争史に1ページを飾る江藤淳と本多秋五との無条件降伏論争を知ることがきでる。ポツダム宣言の諸条件を受諾した日本が、なぜか「無条件降伏」したという本多の強弁を、完膚なきまでに江藤が論破している。知的闘争の面白さを知る上でも必読の書。
小鳥遊 和
本書で重要なのは書名とされた「忘れたことと忘れさせられたこと」である。後半の文学論は「思想の精髄は文学」と考える史家には重要かもしれないが、私にはどうでもよい。本書を読んで驚くのは、江藤が朝日新聞の様々な書き手の文章を通じて示す事実だ。それは、敗戦直後の日本人が「異常な平静さ」を保ち、「保障占領」する連合国を、国民が自由に意思表明しつつ「折衝、交渉する相手」であると対等視していたことである(8.23朝日社説「自らを罪するの弁」は「同胞の意志を伸暢し利益を代表するのが言論界の重大任務」と書く)。(続く)
2023/08/13
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