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死への準備日記 (文春文庫 ち 2-7)

死への準備日記 (文春文庫 ち 2-7)

死への準備日記 (文春文庫 ち 2-7)

作家
千葉敦子
出版社
文藝春秋
発売日
1991-05-01
ISBN
9784167461072
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死への準備日記 (文春文庫 ち 2-7) / 感想・レビュー

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奥澤啓

千葉敦子は生の最後の一瞬まで明晰な観察者、記録者として生きた。徹底したリアリストでありつづけ病気の回復に幻想を抱くこともなかった。その強さは何よりも文章が物語る。書くことが生きることである。言葉人間としての最後になった本書は、私小説のように感じられた。母親の戦時中の体験には言葉を失った。読んでほしい。再読して自分ならどういうふうに最後の日と立ちむかうかと、どうしても考えてしまう。47年の生涯はあまりにも短いが、その密度はあまりにも濃密である。私は思う。死は恐れるものではなく、死もまた生きることなのだと。

2015/02/05

奥澤啓

千葉敦子は個人主義者であり、唯物論者であり、無神論者であり、観察者であり、記録者であった。81年の乳癌の発病からは自身を観察し記録した。残された時間をいかに生きたのか。家族を想い、料理に気を配り、遺言書を書き、印税でジャーナリストを志望する日本人以外のアジア人のための奨学基金の計画を練り、友人と散策をする。世界情勢にも眼を向ける。87年7月7日ニューヨーク発信の文章が最後だ。「体調悪化し原稿書けなくなりました。多分また入院です。申しわけありません」。その2日後に逝く。その筆致にはいささかの自己憐憫もない。

2015/02/05

奥澤啓

この作品へのアマゾンのレヴューや千葉敦子に関する個人サイトやコメントを読むと、「勇気づけられた」、「彼女のように強く生きたい」、という肯定的な人と「我の強さに辟易する」、「壮絶な闘病」、「弱い人を見くだしている」、という否定的な人にわかれるようだ。感想は人それぞれとしか言いようがない。私は前者だ。彼女の闘病記に壮絶さを感じたことはまったくない。それどころか、すがすがしさ、爽快感を覚える。早世はもちろんおしまれる。けれども、これだけ自身の生を生ききった人は、やはり、稀有だろうと思う。読みつがれてほしい人だ。

2015/02/07

奥澤啓

『「死への準備」日記』の感想を二編書きましたが、単行本(朝日新聞社、87年刊)にもとづくものでした。文春文庫版(文芸春秋、91年刊)では単行本刊行後に見いだされた、ワープロのフロッピーに残されていた未完の原稿がおさめられています。死の3日前の7月5日、退院直後に書かれたようです。あとがきは実妹千葉明子(はるこ)によります。千葉敦子の闘病が多数の友人によってささえられていたことへの感謝、彼女が友人らを「高エネルギーの持主」と賞賛していたこと、 彼女が書きえなかった死の直前2週間ほどの経過も書かれています。

2015/02/05

ミカママ

この人の強さが好きで、エッセイはほぼ読んだと思うのだけど、これは少々痛々しすぎる。どうしてここまでがんばるのか?そして強いのはいいけれど、だからと言って強くない人を見下す(印象を受けた)必要はあるのか。がんなどにかからず、もしも今でもご健在だったとしたら、どんなに強い(頑固な)おばさんになってただろう、と想像してしまう。

2013/05/06

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