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邪宗門 下 (河出文庫 た 13-13)

邪宗門 下 (河出文庫 た 13-13)

邪宗門 下 (河出文庫 た 13-13)

作家
高橋和巳
出版社
河出書房新社
発売日
2014-08-06
ISBN
9784309413105
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邪宗門 下 (河出文庫 た 13-13) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

大日本帝国はポツダム宣言を受け入れ、戦争は終結した。しかし、それに代わって民主主義の世の中、自由な社会が実現したわけではなかった。相変わらず、国体は護持されていたのである。混乱の続く教団は、阿礼の破滅へ向かう衝動に動かされ潔を第3代教主に選ぶ。彼は極めて有能ではあるが、宗教者ではなかった。潔の暗くニヒリスティックな情念は、教団を核に蜂起へと突き進んでいった。後半は圧倒的なばかりの迫力で怒涛の如き展開を見せる。凄まじいパワーであり高揚感を伴うが、それが「終末」への道程であることは、潔や阿礼にも、作家にも⇒

2022/05/06

キャンダシー

あまりにも美しすぎるフィナーレ。邪宗門って何だと思う?人間の心だよ。ニヒリストの千葉潔は、絶対的な神を希求しながら、虚無の深淵の中へ飛び込むしかなかった。それが自己処罰という救済の宿命だったとしても。そして宿命自体であった行徳阿礼も千葉潔とともに、お筆先の「六終局」をすでに魂の戦場において完遂していたのではないのだろうか。自分を愛せない者同士が、理性を逸脱した倒錯の論理と美しい琴の音が交差するその刹那に、内面の虚無を純粋な愛にまで昇華して、ゆくりなくも神を顕現させた痕跡を見たことは、私にとって僥倖だった。

2021/01/11

こばまり

今はただ、どえらいものを読んでしまったという気持ち。これは小説であり思想であり観念だと思いました。発表当時、全共闘世代の学生がこぞって読んだというのも頷けます。作者高橋和巳の母が傾倒していた天理教を一部モデルにしているそうですが、現代に生きる我々には依然記憶に新しい、ある宗教団体を想起させます。

2015/11/12

たかしくん。

年末年始を跨いで、漸く読了。下巻は、宗教なる1つの理想に向っていくことの狂気をこれでもかと描き続けます。上巻での理屈っぽい文体は減り、逆に思わず目を背けたくなる現実離れした場面も、まま現れてきます。思うに後半の主人公は、語り手でもあり幾分冷静な目線で接する「阿貴」ではないかと…。意外にも、前評判の(?!)千葉潔と行徳阿礼の究極の愛と狂気は、終盤の僅かに100ページにも満たずでした。とにかくもこの作品が、現代日本文学において「豊穣の海」に勝るとも劣らぬ、日本語の表現の極地を示しているものと確信してます。

2018/01/03

ぐうぐう

ひのもと救霊会に対する集団、あるいは、教団内部の対立、それを『邪宗門』は徹底して描く。高橋和巳の凄いところは、対立する考えを、偏ることなく、公平に主張させている点だ。『邪宗門』が思想小説と言われるゆえんが、ここにある。日本の現代精神史をなぞりながら、架空の教団を借りつつも、すべての宗教に起こり得るだろう、教団の膨張と共に妥協を排除し、先鋭化した果ての姿をシミュレーションするという、壮大な思考実験の場なのだ、ここは。(つづく)

2017/07/10

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