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輝く金字塔 (バベルの図書館 21)

輝く金字塔 (バベルの図書館 21)

輝く金字塔 (バベルの図書館 21)

作家
アーサー・マッケン
ホルヘ・ルイス・ボルヘス
南條竹則
出版社
国書刊行会
発売日
1990-06-01
ISBN
9784336030412
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輝く金字塔 (バベルの図書館 21) / 感想・レビュー

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内島菫

アーサー・マッケンの時代までに上書きを重ねてきた歴史―パリンプセストを一枚一枚はがし、それらの表だけでなく裏もためつすがめつ眺めるような三つの短編集。怪奇小説で一人称が冴えるのは、狂気のような主観性を前面に出すだけでなく、そんなふうにして世界を斜めから見る姿勢に支えられてこそであるだろう。マッケンの小説は表面的なおぞましさではなく、世の中に対する裏返った姿勢が不道徳とされたのではないかと思う。

2018/07/20

藤月はな(灯れ松明の火)

「富士には月見草がよく似合う」ではないが怪奇小説には南條氏の訳がとても合う。「黒い石印の恐怖」は未大陸的な社会を追求した博士に起こった恐ろしい事実を手伝っていた女性の視点から話す形式なのだが第三者による、今にも「逃げろ!」と叫びたくなるような怖いものがじわじわと迫ってくるような語りがとても怖かったです。「白い粉薬の話」は白い粉を呑んでからの弟の言動や弟の最期と語るのも憚るような手紙の終わり方に寒気がし、表題作は何かに魅入られてしまったとして諦めるしかないという結論にぞっとしました。

2012/12/06

あたびー

#日本怪奇幻想読者クラブ 「怪奇クラブ(三人の詐欺師)」を読まずにこの本だけをお読みになった方は、「黒い石印」と「白い粉薬」の語り手が同じ女性であるとは思わないでしょう。詐欺師の一味である彼女が、求める人物の行方を探るためにこれらの作り話(と言ってよいのでしょう)をしたのは何故か?そこの所はまだよくわからないのですが、いずれも何とも恐ろしい戦慄すべき話で、人間のメタモルフォーゼを含んでいます。かの時代の人々がこの物語を受け入れ難かったというのもうなずけます。

2020/02/18

三柴ゆよし

本書はマッケンの短篇のなかでも、有史以前の邪神や悪意ある妖怪変化が、なんらかのかたちで人間に恐怖の触手をのばす作品を収録している。心ある人ならおわかりだろう、完全にラヴクラフトなのである。それもそのはず、ラヴクラフトが彼の神話体系を創始するにあたって手本としたのがマッケンの諸作だったという。特に風景描写において発揮される、言語過剰な散文は、まさしく詩的なラヴクラフトといった感じで、でもやはりこれは少し読むのがつらい。また怪異の顕現もきわめて写実的な描写による。ほのめかしや暗示による効果はみられない。(続)

2011/09/27

きりぱい

眠る直前まで読んでいて、夜中に変な夢で目覚めたのは完全にこれの影響。キプリングを邪悪にして、ラヴクラフトにウェットさをプラスしたような、でも幻想性と詩情には満ちていて、ケルト文化のテイストとなかなか見えてこない真相に誘いこまれる。告白に至ると途端に勿体ぶった堅苦しさになって、「もうこれ以上は言うまい」のくくりには、そこをもっと聴きたいのに!と思ってしまうのだけど、言われなくてもやっぱりぞぞーっ!読みやすいのに真相は理解しがたいという不気味さ。

2010/08/24

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