江藤淳と大江健三郎 (ちくま文庫)
江藤淳と大江健三郎 (ちくま文庫) / 感想・レビュー
佐島楓
個人的な疑問としてなぜ江藤淳は自死してしまったのかという疑問があったのだが、本書を読む限り、病苦によるプライドの損傷と人生に疲れたという理由のように感じた。この二氏は掴みづらい方々のように思っていて読了後もその印象は変わらない。少しずつ読み解いていきたい。
2018/08/20
NEWS23キャスター・寺(本名・小川彩佳)
途中まで読んで一時中断していたが、少し読書欲も湧いて残りを夢中で読んだ。右寄りの文筆家と左寄りの小説家のダブル伝記。そして小谷野敦。面白い。小林秀雄をキッパリ「馬鹿」などと書いてあり驚くが、読んでいるとこういう言葉や寸評が飛び出すのは何となく読書にライブ感覚を感じて楽しい。どんどん右傾化する江藤淳が、死ぬ直前の妻にかけた言葉はウルッと来てしまった。おすすめです。
2019/04/25
タイコウチ
政治思想的には対極にあった江藤淳と大江健三郎の歩みを並列的にたどるダブル伝記。江藤にはあまり関心はなかったが、大江は80年代からしばらく愛読していたので興味深く読んだ。個別に思うところはあるが、著者とは同世代なので、社会情勢の推移など感覚的には理解しやすい。作品論にはあえて踏み込まず(とはいえ、そこここで歯に絹着せぬ鋭い短評はある)、雑誌の対談などからのゴシップ的引用が効果的で、二人の人柄が鮮やかに立ち上がる。大江の時にギョッとするような(おそらく計算を超えた)奇抜なユーモアを高く評価しており、共感する。
2018/09/23
Gen Kato
江藤淳と大江健三郎の歩みを並列して描く。その視点がまず面白いし、作者特有の断定(作品や人格の否定)が良くも悪くも刺激的。ある時期までの大江しか読んでいなかったけれど、もっときっちり読みたいとも思えた。江藤淳の『漱石とその時代』、最初の二巻はいいと思って読んでいたのだけれどね(小谷野氏にかかるとバッサリ、でした)
2018/09/13
けいこう
大江健三郎のエッセイや対談でみせるユーモアは私も好き。 一番良い味わいだったのは、〈「生きている影の廃墟の影」から四十年、三島の自決を「病気」と言ったから二十七年、江藤は遠いところへ来た。三島のそばへ来ていた。〉という文章につづく、江藤淳の死の場面を描いたところで、淡々と死までの出来事をつづる。
2020/06/07
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