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夢みる宝石 (ちくま文庫 す-31-1)

夢みる宝石 (ちくま文庫 す-31-1)

夢みる宝石 (ちくま文庫 す-31-1)

作家
シオドア・スタージョン
川野太郎
出版社
筑摩書房
発売日
2023-10-10
ISBN
9784480439130
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夢みる宝石 (ちくま文庫 す-31-1) / 感想・レビュー

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パトラッシュ

養親に虐待された少年が家を逃げ出し、巡業カーニバルに加わって居場所を見つける。そのまま成長ドラマとして展開すると思いきや、超自然的な力を持つ「夢みる宝石」を巡るファンタジーに変貌していく。そこでは人の心のみならず時間すら歪む世界がアメリカの現実と隣接し、心身に哀しみを背負った者だけが双方を行き来できるのだ。スティーブン・キングが描く「隣家に住む怪物」ホラーの原型であり、ふと周囲を振り返ってしまう恐怖を秘める。豪華絢爛な宝石が散りばめられた万華鏡に触れると、二度と戻れない麻薬のような輝きに魅せられてしまう。

2024/01/10

Shun

SF作家シオドア・スタージョンの長編小説。本作は新訳版として古い作品が待望の復刊ということで、長編作品でもスタージョンの描き出す幻想的世界観の一端が味わえました。SFというよりはファンタジー寄りの幻想小説で、無機質な鉱石ではない意志を有する宝石が人間の社会に秘かに影響しているメルヘンとも思える設定が特徴。しかしその雰囲気はダークな類のものでグリム童話に近いか。主人公の孤児の少年は家主に虐げられ家出をし、拾われたカーニバルでは奇々怪々な面々が寄り集まって暮らす。社会に見捨てられた者たちの命の輝きを感じた。

2023/12/03

tom

養親の虐待に耐えかねてサーカスに飛び込む。無事に逃げ出しサーカスでの暮らしを楽しむ物語だと思い込んで読んでいたら、物語は思わぬ方向に展開する。このギャップがすごい。SFなのかファンタジーなのかよく分からないけれど、たぶんSFだろう。人類は地球を制圧していると思い込んでいるけれど、人類の知らないところで「宝石」たちも生きていて、お互いに無関係に暮らしていた。宝石は何の気なしに「人類」もどきを作っていて・・。この想像力はすごい。地球を支配しているのは昆虫という説もあるわけで、実際にあるかもしれない地球の現実。

2024/02/20

geshi

SFと幻想の中間をいくような奇妙で美しい物語。子どもの頃にあった世界の輝きと残酷さがノスタルジックに回帰させ、孤独の中で迎え入れてくれるカーニバルのフリークスたちに胸が暖かくなり、別れのシーンでは悲しみが心揺さぶる。「夢みる宝石」が出てきた中盤からはファンタジックすぎて想像しずらいところもあった。それほど幻想的に描かれても中心にあるのは「人間とは何か」であり、悪意を持つ人間に対して善性をもって人間たらんとしたジーナの姿が美しく、人間性を肯定する人間賛歌として響く。

2024/02/10

ふりや

ずっと前に『人間以上』と一緒にハヤカワ版を読んだことがあるのですが、本作はちくまから出た新訳版です。カーニバルに加わることになった孤児ホーティの、仲間との交流、団長「人喰い」の恐るべき野望。そしてタイトルでもある「夢みる宝石」の秘密とは。カーニバルを舞台にしていることもあり、ブラッドベリの『何かが道をやってくる』に通じる幻想的な雰囲気があります。筆者の、虐げられた人々や行き場の無い者たちに対する優しさが暖かくてとても心に沁みました。終盤の敵役との対決からの気持ちの良いエンディングもかなり盛り上がります。

2023/11/05

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