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ヴァリス (創元推理文庫 696-5)

ヴァリス (創元推理文庫 696-5)

ヴァリス (創元推理文庫 696-5)

作家
フィリップ・K・ディック
Philip K. Dick
大滝 啓裕
出版社
東京創元社
発売日
1990-06-01
ISBN
9784488696054
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ヴァリス (創元推理文庫 696-5) / 感想・レビュー

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かとめくん

宗教SFとでもいうのでしょうか。女友達の自殺を止められなかった後悔から少しづつおかしくなっていくファット。神秘体験と神学談議に明け暮れ、出会った映画「ヴァリス」に真理の入り口を見て、製作者を訪ねるが… いや~、神学談議は知らない言葉がたくさん出てくるし、浅学菲才な自分には荷が重いが、ディックとファット、そのほか登場人物の造形と、映画であるはずの「ヴァリス」が何らかの意思をもった、神の依り代のように感じられる描き方はさすがにディックならではですかね。

2023/05/15

galoisbaobab

晩年のディックの渾身の作品って感じだね。これは小説というか1974年以降の自伝と言ってもよいね。ディックは自分の脳みそが認識してしまった”事実”を説明するために新しい概念を輸入するしかなくてそれがグノーシスだったように感じる。ここは科学の力が効力を失う場所。そもそも普通の人間関係の中でも科学なんて無力だしね。しかし、読むのに時間かかっちゃったよ。

2018/12/19

たー

何だこれ??前半はしんどかったけど、後半はなかなか面白かった。でもやっぱり曲者。またいつか再読だ。

2012/05/14

roughfractus02

ハヤカワ版新訳は同一人物内でのファットとディックの葛藤がディックの自伝的物語を照らし出すのだが、創元(その前はサンリオ)版訳はファットの妄想が作る壮大な神学体系が前景化する。本編読後、備忘録とも敵対者ともとれるラテン語「Adversaria」と題した訳者大瀧啓裕の60pに及ぶグロッサリーを読むと、ドイツ観念論に繋がるグノーシスの隠された神の兆候を読む知の試みは、注釈の連鎖を作品の外に連れ出してさらに増殖するかのようだ。本書の面白さは、真の意味を求めても多数の解釈しか残らない点に読者を気づかせることにある。

2020/05/17

傘緑

「ファットはグロリアのおちついた声のなかに、ニヒリズムの調べ、虚無のひびきを感じとった。ファットは人間を相手にしているのではなかった。電話線のむこうにいるのは、反射作用によってうけ答えするだけの存在だった」晩年のあまりにも知的に宗教に傾倒し救済にすがりついたディックの、ある意味で集大成ともいえる作品(訳者がさらに拍車をかける)。私は冒頭の、上に引用した無機質で、透明で、小暗い、空虚な、淡々とした、簡潔な一文が怖い。気を許せば呑み込まれそうな吸引力がある。バラードの『クラッシュ』とは違った意味での問題作。

2016/08/28

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