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ぼくの鎌倉散歩

ぼくの鎌倉散歩

ぼくの鎌倉散歩

作家
田村隆一
出版社
港のの人
発売日
2020-11-27
ISBN
9784896293838
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ぼくの鎌倉散歩 / 感想・レビュー

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アナーキー靴下

詩人田村隆一が愛し、1970年から終生過ごした鎌倉。田村が残した作品の中から、鎌倉を感じさせる詩やエッセイをまとめた、という一冊である。鎌倉という土地、自然、季節の移り変わり、住まう人々の躍動…。そうしたものに目を向けているからか、詩とエッセイの境界線も曖昧に感じる。タイトル通り、田村隆一の鎌倉散歩をそばで見ているような、言葉たちは、詩人のつぶやきであるような、そんな味わいである。いくつかの詩は他書で読んだ気がするが、この本のまとめ方は素敵だと思う。このあとがきでもエリオットと荒地について書いてあった…。

2021/03/04

たま

田村隆一が鎌倉について書いた文章や詩を集めた本(2020年刊)。田村は1970年から98年に亡くなるまで鎌倉に住み、山、海、路地を歩き、江ノ電に乗り、四季の花や酒や人々を楽しんだ。「実生の椿の老樹が好きだ。/野の小さな花が好きだ。…海に出れば、春の潮。」「そんな路地が、ぼくは大好きだ。」この明るさ、肯定感、機嫌の良さ。山と海と両方ある街は良いなあと素直に羨ましくなる。表紙は笑顔の詩人の全身像で、他にも写真が3枚。この気さくで都会的な雰囲気が今なお詩文集が出版されている秘密なのだろうか。

2022/02/08

かふ

作家の地元案内的な文学に最近惹かれている。わかりやすいのは永井荷風の江戸情緒残る下町散策の文学だが、田村隆一も鎌倉に中世の面影と近代化されていく成金(バブル時代)の観光地・造成地としての二面を見ている。消えゆく鎌倉の街は、その名前に中世の面影を残す。大通りの渋滞を避けて細い路地に入るとまだまだそうした鎌倉を感じさせる場所があるという。鎌倉には様々な山があり(丘という感じなのだが)、そこをてくてくとどこまでも上がっていく田村隆一を想像すると、やっぱこの人はダンディーなのかもしれないと思ってしまう。

2022/11/03

ryohjin

書店をぶらつきながら、折に触れて訪れた「鎌倉」の題名に惹かれて購入しました。鎌倉に在住した詩人が、鎌倉散歩に導く詩とエッセイです。季節のうつろいや鳥や花を描きながら、小路の飲み屋も現れるのは住んだ人の特権と思い羨ましく感じました。鎌倉は武家政権が滅びると一漁村に戻ったようで、中世以来近世、近代を飛び越して、横須賀線の開通でいきなり現代にスリップしたという指摘から、鎌倉の風景を思い浮かべると、この土地の一面が理解できたように思います。

2021/12/04

Inzaghico

本書はさまざまな媒体に寄稿した、鎌倉についての詩と散文を集めたものだ。「牡蠣」という詩で「この世界に抵抗しようとするなら/インタネットのハッカーになるよりほかにない/むろん/ハッカーは地動説の人でなければならない」という文章が出てきて驚いた。インターネットと一番遠い人物だと思っていたから。そもそも、インターネットが人口に膾炙したときに田村はまだ生きていただろうか、と思って調べたら、この詩が書かれたのが1998年、亡くなった年の詩だった。

2021/06/17

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