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オリンピア

オリンピア

オリンピア

作家
デニス ボック
越前敏弥
出版社
北烏山編集室
発売日
2023-12-05
ISBN
9784911068007
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オリンピア / 感想・レビュー

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buchipanda3

人は流れていくものに無力だ。水、風、そして時間。それでも生きている実感を得るためか、それらに触れようとする。抗うのではなく、ただ感じるために。端然としながらも素の情愛の籠もった語りが紡ぐ家族の年譜に感じ入った。それは特別な家族の姿ではない。フィルムは唐突の深い悲しみや離れた大地と新たな故郷の姿を映す。併走するように理念と対極の出来事と共に祭典がTVから垣間見える。無力な姿だろうか。でも時に思わぬ光景が心を支えることもある。流れには抗えない。でも思慕を胸に抱き続けることは出来る。ハートに矢が刺さったように。

2024/02/17

ヘラジカ

なんて美しい小説だろう。この魂を揺さぶられるような作品が20年以上も翻訳されず、それどころか七社からも断られただなんて到底信じられない。長い年月を経ても邦訳出版を諦めなかった訳者の強い思いは訳文に確かに表れていて、一文一文が素通り出来ないほどに磨き上げられているとすら感じる。あとがきでも書かれていた、オリンピックを核とした舞台背景、水を中心としたエレメンタルの存在感など、作品を支える骨子や印象的な描写を語ればキリがないので、深く考えずとも読んでいて圧倒されるような傑作だったとだけ書き残しておきたい。

2023/12/11

まこ

ピーターはドイツ系のカナダ人で、両親と祖父母は二つの世界大戦を体験した世代。父方、母方置かれた状況が正反対で序盤から溝が入ってた。それを埋めようとするまで約30年。作中の水の役割も大きく、ピーターに流れる血、出来事を水の集まりで、流れる水はそれを押し流す。オリンピックに突き動かされるのは父方、難民に寄り添うのは母方の生き方を継いでる。

2024/01/28

kankoto

第一話で文章の美しさに惹かれた。しかし衝撃の展開に驚かされる。母のルーツを知る二話、三話、見つめる少年の眼。瑞々しさと痛み。 そしてこの短編集の中でもクライマックスと言える四話「ルビー」 不思議な身体感覚を同時に感じたり、水や風の動き、只中に自分も巻き込まれていたり。 最終話「マドリード上水道」 悲劇は繰り返されるのかとドキドキして読んだが、とても良い結末だった。幻想的なシーンが印象的。 訳者の越前敏弥氏のこの作品を世に出したいと言う思い、北烏山編集室と言う二人出版社から出版されてそして読めた事に感謝。

2024/04/28

フランソワーズ

ドイツ系カナダ人の三代にわたる連作短編集。明るくなりきれない一家の日々が描かれるが、やはり第二次世界大戦のドイツの影響が影を落としている。それも、”自分たちも代償を払った”という、当事者の思考が印象的でした。→

2024/02/28

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