神楽坂と落語の深~い関係と、『散歩の達人』が今「うどん」を特集するワケ

エンタメ

公開日:2021/11/23

散歩の達人 2021年 12月号 [雑誌]

著:
出版社:
交通新聞社
発売日:
散歩の達人
『散歩の達人』12月号(交通新聞社)

 こんにちは。散歩の達人編集長の土屋です。

 早いものでもう2021年が終わろうとしています。昨年に引き続き、今年も緊急事態宣言が相次ぎ、なかなか普段通りの散歩ができない一年でした。特に旅好きな方は、どこかへ出かけたくても行けなかった、もどかしい一年だったのではないでしょうか? 今月号の散歩の達人では、そんな皆さんを気軽に都内で非日常に誘う特集をお届けしましょう。都内でも独特の風情があり、散歩が楽しい街「神楽坂・飯田橋」と「あったかうどんで旅気分」という2大特集です。

「神楽坂・飯田橋」は、和と洋、老舗と新店といった表裏一体の顔をあわせもつ街。表通りも華やかだけど、さらにその裏に続く小路が魅力的。黒塀が続く石畳の敷かれた横丁があれば、先の見通せないクランクのある路地もあり、迷い込みたくなるようなわくわくする道ばかり。そんな道をそぞろ歩けば、肩肘はらずに楽しめる隠れ家グルメに、店主のセンス光る雑貨店など、個人店のひしめく楽しい街なのです。

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 ページを開いていただければ、トビラ写真から神楽坂らしくも大人が満足できる渋めな隠れ家が満載。散歩コースとしては、神楽坂駅・江戸川橋駅周辺を巡る「神楽坂上さんぽ」と、飯田橋駅・牛込神楽坂駅周辺を巡る「神楽坂下さんぽ」に大きく分けてご案内。それぞれのコースをたどるだけでもこの街の魅力が十分味わえるはずなので、ぜひ本誌を持ってお出かけあれ。

 特集内には様々な企画が目白押しですが、その中でも「神楽坂と落語」について少しご紹介しましょう。まず、「神楽坂と落語」といえば、古今亭志ん朝さんを思い浮かべられる人が多いかもしれません。新宿区矢来町に長く住み、通称でも「矢来町の師匠」と呼ばれた名人ですが、実は志ん朝さんが住む前からこの街と落語の関係は深かったようです。本特集では神楽坂で17年落語会を続けている古今亭菊之丞さんにお話を伺いましたが、師匠によると、昭和初期にはやはり矢来町に住んでいた柳家金語楼のホームグラウンドだったという「神楽坂演芸場(後に神楽坂演舞場)」という寄席もあったほか、その後も三遊亭金馬(現金翁師匠)、先代林家三平、春風亭柳昇という落語界の錚々たる面々が若いころに新作の会を行っていたとのこと。

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古今亭菊之丞師匠を兵庫横丁で撮影。風情ある路地と菊之丞師匠がよく似合います。(撮影:三浦孝明)

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毘沙門様(善國寺)で、毎年行われていた毘沙門寄席。2022年こそ楽しみにしたい。(撮影:三浦孝明)

 そして落語家の衣装でもある着物。誌面でも紹介している『きもの英(はなぶさ)』は菊之丞さんの師匠、二代目古今亭圓菊さんも着物を誂えてきた店だそうで、ほかにも多くの落語家さんが利用されてきたようです。寄席や落語会がなかった頃でも、実利的な面で落語と神楽坂の関係が続いていたことがわかります。今回、菊之丞師匠のメインカットの撮影は兵庫横丁でさせていただきましたが、着物が落語がなどと言う前に、菊之丞さん自身が神楽坂の横丁に似合うこと……。あまりにいい感じなので、師匠の許可を得て書店用ポスターやPOPにも使用させていただきました。ぜひその素敵な姿を、神楽坂・飯田橋界隈の書店でご覧ください。

 そしてもうひとつの特集「あったかうどんで旅気分」も力が入っています。何しろ2特なのに表紙にしてしまったくらいですから。私、土屋がうどん好きだということもあるのですが、今回は昨年まで編集部にいた、同じくうどん好きのS藤さんにも手伝っていただき、特集を構成しています。東京では、一時期の讃岐うどんブームを超えて、日本各地のご当地うどんが食べられるようになってきました。特に今は博多うどんをはじめとする「柔らかい麺」が再注目されています。そして冬にはそんな個性的な麺を、出汁の効いた温かいつゆで食べるうどんが恋しくなりますよね。今回の特集では、東京で食べられるあったかうどんをさまざまな切り口で紹介しています。

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今回のうどん特集の扉で使用した、日の出町の『母家』さん。都心からは少し遠いが、外観を見ただけで来てよかったと思うはず。

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『母家』ではずりだしうどんが名物だが、肉汁うどんもあり、どちらも食べたくなる。ずりだしうどんには卵をつけるのもおすすめ。

 それぞれのご当地うどんは、その麺や食べられ方が生まれた郷土色が感じられて、どれも素晴らしいのですが、やはり東京といえば、武蔵野うどん。武蔵野うどんの名店は北多摩地域を中心にたくさんあるものの、今回は武蔵野うどんの名店密集地帯として小平市を紹介しています。小麦農家の畑の取材から『小平ふるさと村』でうどんを手打ちする様子まで、武蔵野うどんらしい風景をしっかり取材させていただきました。小平のうどんには茹で野菜の「糧(かて)」が添えられていて(個人的には、糧付きは武蔵野うどんのデフォルトと言いたいです)、この糧をうどんと一緒につけ汁につけて食べるのがいいのです。今回は小平以外でも23区内で武蔵野うどんが食べられる店もピックアップしていますので、ぜひ小麦の風味を感じる、東京のご当地うどんを楽しんでみてください。

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笹塚『みらい家』の豚汁もりうどん。少し灰色がかった麺の色がまた個性的。糧も付いていてうれしい。
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新御茶ノ水『アツマル』のカレーうどん。濃厚なスープに細麺がよく絡む。特集内ではカレーうどんも6店紹介。

 さて、今号の2大特集にはほかにも様々な企画がずらり。「神楽坂・飯田橋」特集では「神楽坂スイーツ、第2次黄金期到来!」「ひそみの街角ベーカリー6選」「これぞ、神楽坂の冬カフェスタイル」「ギンレイホールにともるキネマの灯」「飯田橋駅前に残る あの長屋ビルへ」などなど盛りだくさんにご紹介。

「あったかうどんで旅気分」特集では「いま、食べたいトーキョーうどん」「全国うどんラリーに挑戦!」「必殺、冷凍うどんレシピ」などのラインナップ。とくに「冷凍うどんレシピ」は弊誌ライターであり粉もののプロ、たこ焼きさんによる独特な8品。どれも自分で作りたくなる品ぞろいです。

 肌寒くなってきましたが、散歩にはぴったりな時期。ぜひ本誌を持って、あったかうどんのお店へ。そして神楽坂・飯田橋散歩を楽しんでいただけるとうれしいです。

土屋広道(つちやひろみち)
1972年埼玉県生まれ。関西学院大学社会学部卒業後の1996年に株式会社弘済出版社に入社(合併を経て2001年に株式会社交通新聞社)。『鉄道ダイヤ情報』『旅の手帖』編集部を経て、2008年より『散歩の達人』編集部所属。2017年11月号より同誌編集長。

『散歩の達人』最新号は11月20日(土)発売!

この記事で紹介した書籍ほか

散歩の達人 2021年 12月号 [雑誌]

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