りんごは、どこからきたの? 『トラタのりんご』【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

公開日:2023/6/28

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2023年5月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

ベランダで大好きなりんごの木を育てるトラタ。ある日、やってきた小さな鳥を追いかけていき、迷い込んだ不思議な庭で出会ったのは……? 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『トラタのりんご』。食べものの過去・今・未来をもっと知りたくなる絵本、どんな内容なのでしょう。

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

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りんごは、どこからきたの? 『トラタのりんご』

トラタのりんご

作:nakaban

みどころ

絵本を開き、見返しに並んでいるのは、見たことのない、でもとても魅力的なりんごの絵。いったいどんなお話が始まるのでしょう。

トラタのもとにおじさんから届いたのは、りんごの苗と図鑑です。りんごが大好きなトラタは、ベランダで苗を育て始めます。

「はやく、おおきくなあれ」

夏になった頃、小さな赤い実をくわえた鳥がベランダにやってきて、トラタをじーっと見つめると、そのまま飛んで行ってしまいました。気になったトラタは、その後を追いかけます。町はずれまで来て、さらにしばらく行くと、そこにあったのはたくさんのりんごの木! トラタは草の上に落ちたりんごを拾い、かじってみます。

「わ、すっぱい」

それは、お店で売っているりんごとは全くちがう味がして……。

迷い込んだのは、画家nakabanさんが色鮮やかに描き出す、不思議な庭。そこにあったのは、かつてはあった、古くてめずらしい種類のりんご。まっ黒りんごに細長りんご、しましまりんごにバラの花のような香りがするりんご。甘くも食べやすくもない、その味はトラタが知らないものばかり。けれどとても心惹かれるのです。それは本物だったのか、幻だったのか。

おいしいってなんだろう、良いりんごってあるのかな。これからりんごはどうなっていくのだろう。絵本の中で体験をしながら、りんごの過去や未来について、思いを馳せてみたくなるのです。

京都大学iPS 細胞研究所で倫理研究に携わる三成寿作さんの構想をもとに、nakabanさんが「食べもの」について考え、創作されたというこの絵本。品種改良の歴史や人々の栽培や試行錯誤がつまっていることをそっとほのめかすストーリーにもなっています。

 

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編集長のおすすめポイントは……

時を越えて魅了するりんごの味は…

トラタが小さな鳥に誘われるようにして出会うのは、見たことのない原っぱ、古そうな門、光がふりそそぐ庭、かがやくりんご……。nakabanさんが絵本の中で描くのは、いつも知らない場所のようでいて、どこか懐かしい光に包まれた幻想的な景色。その中で出会うからこそ、忘れられない出来事になるのでしょうか。時を越えてトラタを魅了するりんごはどんな味がするのでしょう。知らず知らずのうちに、私たち読者も興味を持って考えだしてしまうのです。

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。

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