こんな暑い日には、坂道も空へと続くのかもしれない……『そらうみ』 【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

公開日:2023/9/27

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2023年8月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

待っていたのは白い雲の浜辺と真っ青な空の海だった! 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『そらうみ』。児童文学作家・富安陽子さんとイラストレーター・はぎのたえこさんによって生まれた、新たな「夏の絵本」の傑作。どんな内容なのでしょう?

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

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こんな暑い日には、坂道も空へと続くのかもしれない……『そらうみ』

そらうみ

作:富安陽子 絵:はぎのたえこ

みどころ

あつい、あつい夏の日。市民プールに行くために、ぼくはてくてく坂をのぼる。けれどその道は入道雲の中に続いていて、待っていたのは……白い雲の浜辺と真っ青な空の海だった!

「ザブーン」

ああ、いい気持ち。スイスイと向こうの島まで泳いでいくと、誰かがぼくを呼んでいる。

「いっしょに、およごうよ」

そこにいたのは、空のまちの子どもたち。みんなで海に飛びこんで、もぐっていくと、見えてきたのはぼくのまち!?

まっしろい日差しの中、歩いているのはぼくだけ。ついてくるのは、ちっちゃなぼくのかげぼうし。あんまり暑い夏の日は、どこか現実感がなくなってくるから不思議です。

こんな日は、入道雲へと続く道から空の世界につながることだって、本当にあるかもしれない。ザブーンと飛びこむことだって、自分の住む町をはるか下に見ながら泳ぐことだって、できるかもしれない。目の前であばれるりゅうの姿だって、見ることができるかもしれない。印象に残るのは、何もかもすいこんでしまいそうな空の青い色と、ふわふわと心まで浮足だってくるような白い雲の色。なんて気持ちのいい景色でしょう。

児童文学作家・富安陽子さんとイラストレーター・はぎのたえこさんによって生まれたのは、「あったらいいな」「できたらいいな」にあふれた夏の絵本。帰り道の美しい夕焼けの景色を眺めながら、なんだか私たちも満足した気持ちになるのです。雲のアイスクリーム、どんな味がするのかな……。

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編集長のおすすめポイントは……

大人になって思い出す記憶の中に

絵本の中に広がっているのは、見たことがあるはずもないのに、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる景色。子どもたちは絵本を読んでいる間じゅうずっと、空の海を気持ちよく泳ぎまわるのでしょう。そして、いつか大きくなった時。白い日差しの中で坂をのぼりながら、この空の世界での出来事のことをふと思い出すのかもしれません。本当の記憶なのかどうかって? そんなの、どちらでもいいですよね。

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。

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