アートな絵本(2023年10月 新刊&おすすめ絵本)

文芸・カルチャー

公開日:2023/10/21

木々が色づき、心地よい風が吹く秋は、お子さまの感性を育むのにもぴったりの季節。読むだけで想像力や創作意欲を刺激するアートな絵本をご紹介します。

『おすしが ふくを かいにきた』や『けしごむぽん いぬがわん』は、見慣れたものに新しい視点を与える“見立て”を取り入れた絵本。「黄色い服はタマゴだね」「丸いはんこが集まると何に見える?」なんて会話をしながら、どんどん発想を膨らませてみてください。 お絵描き絵本の定番『くれよんのくろくん』や、世界に一冊の自分だけの本を作れる『えのほん』で、色を使って描く楽しさを一緒に味わうのもいいですね。

また、おしゃれでポップなイラストの『ZOOM』や、独特の気配を纏った『移動するものたち』に、詩吟の節をつけた『シカものがたり』など、いつもと違うタッチの絵や読み方の絵本に触れてみるのもおすすめです。

日常風景に新しいアイディアを加えて新鮮な驚きや面白さを発見すること。自由な発想と想像で、ちょっと楽しい気分になれること。「自分も描いてみたい、読んでみたい」と表現したい気持ちを高めてくれること。たくさんの魅力が詰まった絵本が、お子さまの世界をぐんぐん広げてくれるはずです。

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消しゴムやキャップをはんこにすれば、身近なものが即アートに。想像力を育み、かたちの学びにも『けしごむぽん いぬがわん』

けしごむぽん いぬがわん

作:ほりかわりまこ

みどころ

「けしごむぽん、いぬがわん」

どういうことかと言うと、けしごむに色をつけて、はんこみたいにぽんっと押して、鉛筆で描き足してあげると……わん、わん。あっという間に犬の絵が完成しちゃった、ということ!

これって楽しい。ペンのキャップでぽんぽんぽん、フォークでペタペタ、かなづち、ものさし、積み木にねじ……身の回りのものを使って、どんどん絵が生まれていくのです。ひつじにおおかみ、汽車に草原、やがてやって来たのは大きな街。ストーリーだって進んでいきます。

さて、到着したのはレストラン。ここでご馳走してくれるのは、やっぱりはんこ遊びでつくったピザにおすしにアイスクリーム。

「ぽんぽんぽん。さあ、めしあがれ」

創作絵本から図鑑までとても幅広く活動をされている画家・絵本作家のほりかわりまこさん。今度の新作は、すぐにでも真似したくなる可愛らしさ。はんこが大好きな彼女のアイデアがつまっているのだそう。

読めば不思議、お部屋の中のあれもこれもが「はんこ」に見えてくる!? 日常がアートに変わる瞬間、その楽しさを子どもたちにも存分に味わってもらいたいですよね。

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読めばお絵描きしたくなる! 色の名前や友だちとの関わりに触れながら、色を重ねる楽しみを教えてくれる『くれよんのくろくん』

くれよんのくろくん

作・絵:なかやみわ

みどころ

天晴れなラストシーンに、子どもの頃の懐かしい気持ちがよみがえります。

くれよんのなかまたちは、次々と箱を飛び出して、真っ白な画用紙に絵を描き始めます。きいろくんはちょうちょを、あかさんとピンクちゃんは花を・・・。だけどくろくんだけは、きれいに描いた絵を黒くされてはたまらないと、なかまにいれてもらえません。くろくんがさみしそうにしていると、シャープペンのお兄さんがやってきて、くろくんに秘策を授けます。

子どもにとってクレヨンは特別な存在。仲間はずれになってしまったくろくんのせつない気持ちに共感し、そして迎えるハッピーエンドに安堵することでしょう。
大人は子どもの頃の気持ちをちょっぴり思い出すことが出来る、そんな素敵な作品です。

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今日は何の服(ネタ)にしようかな? すしネタは服、鉛筆は散髪に。遊び心満載で空想も広がる“見立て”絵本『おすしが ふくを かいにきた』

おすしが ふくを かいにきた

作:田中達也

みどころ

おすしが買い物にやってきた。ずらりと並んだ華やかなネタ……いえ、服を見ながら迷います。

「サーモンにします?」
「おもいきって、トロにしようかな?」

続いてアイスは帽子を買いに、箱の親子はリボンの着付け、サウナにやってきたのはシュウマイ、ソーセージは車を買いにきます。いちごが自分のベッドに選んだのは……?

ミニチュア写真家・見立て作家として大人気田中達也さんが手がける写真絵本第2弾。「おすしがふくを」という言葉だけで、すでに期待に胸が膨らみます。いったいどんな「みたての世界」が繰り広げられているのでしょう。

お皿のビルにいくらのネックレス、板チョコのカウンター、美味しそうなパンの車にレタスの海、マカロンのソファーに美味しそうなベッド。使われているのは見たことのあるものばかりだけれど、登場するのは最高にワクワクする見たことのない店ばかりの仮想の街。

じっくりゆっくり繰り返し、画面の隅々まで眺めて楽しんでくださいね。買い物を済ませた彼らは、その後どんな一日を過ごすのか。次の日になったらお店にはどんな商品が並ぶのか。あるいは次に登場するとしたらどんなお店がいい? きっと、想像の世界も止まらなくなってしまうはず!

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声優兼絵本作家のおおなり修司さんと股旅姿の絵本作家・飯野和好さんがタッグを組んだら、絵本史上初? 詩吟風絵本『シカものがたり』が誕生!シカのセリフに節をつけて、さあご一緒に!「たのしか~!」

シカものがたり

作:おおなり修司 絵:飯野和好

出版社からの内容紹介

絵本史上初!?
詩吟風絵本の登場です!

ある森に住む、それはそれは立派なツノを持つ誇り高いシカのものがたり。
詩吟なんて聴いたこともないあなたも、ましてや吟じたことのないあなたも、好きなように節を付けて読めば、あら不思議。
たのしか~!って詩吟風絵本の世界が拡がります。

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ウソの情報にだまされ大パニックの魚たちをユーモラスに描く韓国からやってきた絵本『そんなことも しらないの?』子どもとネットリテラシーを考えるきっかけに

そんなことも しらないの?

作:パク・ジョンソプ 訳:なかやまよしゆき

出版社からの内容紹介

あか、き、あおなど色とりどりの小さなサカナたちが群れを作っているところに、「あかいサカナがかぜをひいてるってさ~」という声。それは、はらぺこアンコウが流したウソの情報。そうとはしらず、サカナたちは大パニック。うつったりしたらたいへん! 群れから追いだされたあかいサカナは、アンコウのお腹のなかへ。するとアンコウは、きいろいサカナもかぜをひいているといいだした。サカナたちはなんだか変だと思いつつ、きいろいサカナも群れから追いだして……。

 お話は、ユーモラスなサカナたちの会話のみですすんでいく。なぜサカナたちはだまされてしまったのか? どうすればよかったのか? ソーシャルメディアの普及でだれもが情報を発信できる現代、まちがった情報やフェイクニュースが巷にあふれ、大きな社会問題にもなっている。この絵本を題材にして、ただ情報を鵜呑みにすることの危険性、情報の真偽を確かめることの大切さやその方法などを、子どもたちといっしょに考えてみてはどうだろうか。

原書が出版された韓国では、新型コロナウイルスの感染拡大後、もう一度読んでみる本として公立図書館で図書プログラムが組まれたという。かつてない情報化社会を生きる子どもたちに、ぜひとも読んでほしい一冊だ。

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まるで飛行機に乗っている気分! 仕組みや空港の様子、飛び立つ風景が分かりやすく描かれた『ひこうきにのろう』

ひこうきにのろう

作:バイロン・バートン 訳:なかがわちひろ

出版社からの内容紹介

ひこうきのしくみや、くうこうのようす、とびたつまでの風景が、分かりやすくシンプルに描かれ、まるでいっしょにひこうきにのっている気分!小さいお子様からたのしめるので、ひこうきが大好きな子はもちろん、これからひこうきにのる前に、のった後にもよみたい絵本です。

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移民・難民の現実を擬人化した動物たち。生と死の気配を纏った物悲しく美しい絵が語りかけるサイレント絵本『移動するものたち』

移動するものたち

著:イッサ・ワタナベ

出版社からの内容紹介

「いきものたちはどこへいくのか、バッグがからっぽだとわかったとき、いきるおどろきとよろこびのはながひらいた」
――谷川俊太郎(詩人)
「いろんな報道で「数」としてしか扱われなかった移民・難民の人々が色あざやかな動物に姿を借りて、圧倒的な絶望(黒)のなか、
ささやかな希望を追って歩きだした。こんなにファンタスティックな世界に、こんなに切ないリアリティが感じさせる絵と絵と絵。
ワニやゾウやフラミンゴやウサギの間に身を置くと、世界が裏返ってみえるかもしれない。」
――金原瑞人(翻訳家)
「ページの奥から、まっすぐ語りかけてくる声が聞こえる。言葉がないのに。言葉がないからこそ。」
――岸本佐知子(翻訳家)

仏ソルシエール賞 2021年フィクション部門受賞
カタルーニャ本屋大賞 2021年絵本部門受賞
国際推薦児童図書目録「ホワイト・レイブンズ 2020」選定
全米児童図書評議会「OUTSTANDING INTERNATIONAL BOOKS LIST 2021」選定

木の葉がなくなってしまった黒い夜の森を捨て、旅に出る動物たち。さまざまな脅威に直面しながら国境を越える彼らの旅には、常に死の影がつきまとう――。
世界的な問題となっている「移民」「難民」の現実を、擬人化した動物たちの姿に寄せてイラストのみで描き出したサイレント絵本。

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ニワトリのトサカから、ぐんぐんズームアウトして宇宙へ! 視点の飛躍が快感。ポップでおしゃれなイラスト絵本『ZOOM』

ZOOM

作・絵:イシュトバン・バンニャイ

出版社からの内容紹介

ハンガリーの絵本作家バンニャイがアニメーションのズーム・イン、ズーム・アウトの技法を絵本に持ち込んだ不思議な世界。鶏のトサカを見る視点が家から牧場、牧場からさらに広がり続けて、最後は地球さえ点となってしまうまでズーム・アウトする自由なまなざしの冒険。谷川俊太郎さんが本書のための書き下ろした詩作品・推薦文付き。
――わずか31の画面で捉えられた限りない世界の豊かさの面白さ、詩のようだ、音楽のようだ(谷川俊太郎/推薦文より)。

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子どもが落書きして完成する絵本『えのほん』日比野克彦のカラフルな絵が創造性や独創性を刺激して、世界に一冊しかない本に。

えのほん

作・絵:日比野克彦

出版社からの内容紹介

「『えのほん』に落書きしようとしても止めないでください。」
この文章に込められた日比野氏の想いは、
「無意識のうちに生まれる線の美しさ、おもしろさを引き出すきっかけとなってほしい。そして、子どもたちに絵を描くことの楽しさをもっともっと味わってほしい」
というもの。実際に保育活動の一環として幼稚園でも使用され、独創性や創造性を膨らますことに役立っています。中のページに描かれた日比野氏のカラフルな色使いの絵が創造性をくすぐります。この絵本は、手にしたあなたが作者なのです。

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【動画公開中】感じる 考える わたしの一冊 絵本・児童書22選

文:栗田奈緒子 編集:木村春子

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