そして世界はここにある。『じっとみるの』【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/22

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2023年11月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

「じっとみれば、やがて世界がみえてくる。そして世界はここにある。」毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、美しきイマーシブ(没入型)絵本『じっとみるの』。いったいどんな内容なのでしょう?

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

advertisement

そして世界はここにある。『じっとみるの』

じっとみるの

作:たちばなはるか

みどころ

静かにじっと見る。そうすれば、わたしは中にはいれるの。ビー玉の中にも、ソーダすいの中にも、しゃぼんだまの中にだって。ころんころんと転がる感覚だって、小さなあわが足のうらをくすぐる感触だって、ふわふわと雲の上にとんでいく浮遊感だって、わたしにはわかる。

「じっとみるの」

タイトルのとおり、絵本の舞台となっているのは少女の強い視線の先。そこにあるのは、誰もが一度は憧れたことがあるだろう「なか」の世界。ゼリーのプールに入ってみたら、どんな景色が広がっているだろう。パンの上に寝てみたら、どんな夢をみるのだろう。あるいは……。

少女がじっと見ているのは……

グラスに入ったソーダすいの中。見えてくるのは、小さなあわが足の裏をくすぐってくる、氷やさくらんぼが浮かんだ緑色の水辺。

消え入りそうなほど繊細な線と、キラキラと透明感あふれる色彩で描くのは、幻想的でありながらも不思議と実感をともなう美しい光景。その冷たさも、重みも、静けさも、知っていたような、体験したことがあるような。絵本『こどももちゃん』(偕成社)でも独特な世界観が話題になった、絵本作家たちばなはるかさんが描く【イマーシブ(没入型)絵本】。

じっと見つめていれば、私たちにも行くことができるかもしれない。その入口は日常のどこにでもあるかもしれない。そんなひっそりとした高揚感を味わえる絵本です。

本作品を「絵本ナビ」で購入 >

編集長のおすすめポイントは……

新しい感覚との出会いは

どこか一点が気になると、そこばかりを見てしまう。見ているうちに、何を見ているかわからなくなってくる。いつの間にか自分が小さくなって、そこで自由に遊べるようになる。そんな経験があれば、この絵本の世界を一瞬で理解できてしまうかもしれません。想像力というのは、なにも外へ向けられた広い視野ばかりから生まれるものではなく、こんな風に凝縮した視点からも生まれることもあるのです。新しい感覚との出会いは、意外ともっともっと身近に隠れているものなのかもしれませんね。

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。

あわせて読みたい