みんなのために、未来のために……『いつかきっと』【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/30

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2023年11月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

「やってもむだだね」みんなは言う。でも、やってみなくちゃわからないし、できることだってあるはずだ。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『いつかきっと』。世界中で注目されている詩人アマンダ・ゴーマンによる絵本、いったいどんな内容なのでしょう?

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

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みんなのために、未来のために……『いつかきっと』

いつかきっと

作:アマンダ・ゴーマン 絵:クリスチャン・ロビンソン 訳:さくまゆみこ

みどころ

「どうってことないから、気にしないで」
「どうしようもないことさ」
「やってもむだだね」

みんなは言う。でも、やってみなくちゃわからないし、できることだってあるはずだ。とっても小さいものが大きいものを動かすことだって、あるんだよ。

「ほんとにかなしいね」

怖いし、どうしていいかわらないし、腹も立つ。でも、ほんの少しの希望があったとしたら、持ち続けた方がいい。友だちだって助けてくれる。うまくいかなかったとしても、またやり直すんだ。なんどでも、なんどでも。やがて……。

小さな男の子の視点で語られていくこの絵本。存在は小さくても、彼は目の前で起きていることを自分の目で見て、自分で考えて、行動を起こしていきます。

大人たちがすぐに口にしてしまう「どうしようもないことだから」とか、「あいてが大きすぎるから」とか「やってもむだだね」という言葉にたいして、男の子は「ほんとうにそうかな」と投げかけるのです。

ジョー・バイデン大統領の就任式で自作の詩「わたしたちの登る丘」を朗読した詩人アマンダ・ゴーマンと、コルデコット賞を受賞したイラストレーターのクリスチャン・ロビンソンが生み出した絵本に込められているのは、時代を超えた希望のメッセージ。

小さな男の子の信念が、まわりを少しずつ変えていく力となっていく。私たちが今感じている嘆きやあきらめ、孤独や無力感。そういうものに、ゆっくりとじわじわ、でもしっかりと言葉が響いてくるのです。そのささやかで揺るぎない行動に、心を動かされるのです。どうかこの絵本が、子どもたちの、そして多くの大人たちの「勇気」となっていきますように。

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編集長のおすすめポイントは……

自分の気持ちにもう一歩踏み込んでみると

世の中はもっと複雑なんだ……なんて思っていた自分にこそ、男の子の言葉はまっすぐに刺さってきます。「かなしいね」という言葉で片付けようとしていたけれど、そこには悲しいだけじゃなく、不安だったり、怒りだったり、様々な感情が色々と含まれているはず。自分の気持ちにもう一歩踏み込んで考えてみると、やるべきことが少しずつ見えてくるのかもしれません。年齢にかかわらず、絡まっていた気持ちを整理してくれる。絵本にはそんな力あるのだということを改めて感じさせてくれる一冊です。

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。

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