小坂井祐莉絵「みんな元気でいてほしくて、笑顔でいようと決めました」【声優図鑑】

アニメ

公開日:2022/8/2

小坂井祐莉絵

 キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチWebの恒例企画『声優図鑑』。第292回に登場するのは、『終末のハーレム』の黒田マリア役、『邪神ちゃんドロップキック』のぺこら役、『阿波連さんははかれない』の宮平先生役などを演じ、声優アイドルユニット・ギルドロップスとしても活動する小坂井祐莉絵さん。

16歳で声優のお仕事を始めてから、ちょうど10年。「25歳までにアニメの主人公を演じる」という目標を叶え、今は次の夢に向かって突き進んでいる様子。順風満帆に思える今に至るまでの紆余曲折や、意外に“やらかし”が多い一面など、本音たっぷりのインタビューに注目です!

10代の頃はキラキラしたものに惹かれて…

——小坂井さんは高校生の頃に声優活動を始めたそうですね。それまではどんな10代を送っていたんですか?

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小坂井:好奇心が旺盛なタイプで、いろいろ目移りするほうでした。部活も小学校から大学まで全然違ったりして…。

——どんな部活を?

小坂井:小学校ではマーチング部でフルートを担当して、部長もしていました。並行して、年に一回か2回ある陸上大会のための陸上部にも入っていましたね。中学校になってからフルートを続けるかどうか迷いましたけど、テニス部に憧れがあって、母もテニス部だったこともあって入部しました。

——高校では?

小坂井:形から入ることが多いんですが、高校にギターを背負って行きたくて、軽音部に。偶然にも、学校の制服が当時流行っていた『けいおん!』の制服にめちゃくちゃ似ていて(笑)。途中から声優活動を始めたので、ギターはさわる程度でしたけど。

——大学でもまた部活が変わったと。

小坂井:はい。大学ではチアダンス部でした。その頃、声優活動で歌やダンスがあったんですけど、「動きがヘン」と言われることが多くて。みんなの足を引っ張っちゃいけない! と思ってダンスをがんばろうと思いまして…。

——がんばった成果は…?

小坂井:ダンスの覚えがよくなったし、周りから浮くことが少なくなった気がします。今は恥ずかしくて昔の映像が見れないくらい(笑)。でも大学の途中で上京することになり、その費用を稼ぐためにバイトを増やしたので、続けられなくなって。結局、活動したのは2年くらいでした。

——マーチング部、テニス部、軽音部、チアダンス部と見ていくと、どれもキラキラした部活で、目立っていたんだろうなという気がします。

小坂井:私自身はそうではなくて、カッコいいものやキラキラしたものに惹かれる習性があるんだと思います(笑)。部活はバラバラでしたけど、今好きなものは昔から好きなものが多いですね。食べ物とか自然とか。歌や音楽も好きですし。あと、小学校の職場体験で保育園に行ったくらい子どもが好きで、保育資格も持っています。

お風呂で大声で歌っていたら…

——音楽や歌も、もともと好きだったと。

小坂井:3〜4歳からピアノを習っていたし、母がピアノ好きだったので、地元でクラシックのコンサートがある時は一緒に行ったり、お出かけする時は車の中でJ-POPを聴いたり、いつも音楽はそばにある環境でしたね。歌は習ってなかったんですがお風呂でいつも大声で歌っていて、近所の人から「祐莉絵ちゃん、昨日も歌ってたね」と言われて、恥ずかしくてやめるような子どもでした(笑)。

——(笑)。J-POPで好きだったのはどんな音楽ですか?

小坂井:声優になるきっかけになったのがアニメ『BLEACH』で、その頃に主題歌を歌っていたYUIさんとか…。YUIさんに憧れた影響でギターを始めたというのもあります。いきものがかりさんも好きで、『BLEACH』の主題歌になった「HANABI」を聴いたり。いきものがかりさんは歌詞が好きで、高校の頃にいちばん好きだったのは「笑顔」という曲でした。

——子どもの頃から食べ物や自然が好きだったというのは?

小坂井:昔から食べるのが好きで。私が好きな地元の「しるこサンド」っていうお菓子があるんですが、母が仕事の時に食べる母専用のお菓子だったから、オーブントースターの中に隠してあったんです。それを、一個くらい食べてもバレないかな〜って思ったら全部食べちゃってて。めちゃくちゃ怒られました(笑)。

——食欲旺盛だったんですね(笑)。自然は、子どもの頃から触れることが多かったんですか?

小坂井:はい。家の前が畑、横が田んぼ、裏が竹やぶ…みたいな環境で育ったので、竹やぶの中に秘密基地を作ったり、タケノコを掘ったりして。今もアトラクションのあるような場所より温泉や神社に出かけるのが好きで、定期的にマイナスイオンを浴びてます。この前もお仕事で島根に行った時、次の日にお休みをもらって出雲大社に行ってきました。

声優って、誠実であれば成功するわけじゃない

——『BLEACH』で声優に憧れたのはいつ頃ですか?

小坂井:小学校の頃です。近所の子たちの影響でアニメにハマったのがきっかけで。お仕事を始めたのは16歳で、その時はボランティアでした。

——保育士になる夢もあったそうですが、声優への道を選ぶ決め手になったことは?

小坂井:保育士の実習に行った時、自分が出演した作品の靴下を履いている子がいるのを見たら、画面を通していろんな子とつながっていることを実感して。最初は、大学を卒業して保育士の資格を取ることが、声優を続けるために約束した親の条件だったんです。でも今は、保育を勉強したからこそ、その資格を生かせる声優になろうと思っています。

——声優を始めてから10年、影響を受けたお仕事は?

小坂井:2つあって、1つは最初に出させていただいたアニメです。まだ名古屋に住んでいたので、夜行バスに乗って現場に行ったんですけど、一言しかセリフがなかったのに、次の日に知恵熱を出したんですよ! 生真面目ってタイプでもないんですけど、台本の読み方もわからないし、知っている声優さんばかりで嬉しくて、でも緊張して。アフレコの最終日で打ち上げにも参加したので、舞いあがっちゃったんだと思います。

——それは熱も出ますね(笑)。もう1つのお仕事は何でしょう。

小坂井:プロレスのリングアナウンサーです。声優の現場とは空気感も上下関係も違うし、一人でプロレスラーさんの名前やルールを覚えるところから入って…。最初は元から詳しかったわけではないので苦労しましたが、今4年目くらいになって、みなさんとディズニーランドに行けるくらいの関係になれました。やってて良かったな、と思えるお仕事のひとつです。

——いろいろありましたね。10年経って、成長できたと思えることは?

小坂井:最初の頃はがむしゃらで、絶対に失敗しちゃいけないって思っていましたけど、声優の仕事は技術職でもあるから、失敗した時に謝ればいいわけでもないし、誠実でいれば成功するわけでもないんですよね。そう考えたら肩の荷が下りて、自分らしく演じればいいんだなと思えるようになりました。今はお仕事とプライベートの境界線がないというか、いつもこのまんまです(笑)。

——そう気づけるほど前のめりに頑張っていたことが伝わってきます。人前に出るようなお仕事でも、素が出ていることが多いんですか?

小坂井:そうですね。役では違いますけど、私自身で出る時は、自分を作っちゃうことのほうが違和感を感じます。よく覚えていないんですけど、ある監督さんと初めてお会いした時、監督が好きなキャラを質問したらしいんですよ。監督が、私とタッグを組んでいる、私じゃないほうのキャラクターをあげた時、私の顔が急にショーンとなったらしくて(笑)。思ったことが全部顔に現れるタイプだと言われて、自分でもその通りだなと思いました。

リアルな世界史も学べる『Fate』はおすすめ

——好きな漫画や影響を受けた本はありますか?

小坂井:父が昔、小説家を目指していたこともあって、自粛期間は本を読んで過ごしたんですが、影響を受けたってことなら、高校の時に読んだ『Fate』シリーズ。世界史の偉人がたくさん出てくる作品だから、高校の社会で授業を選択する時、日本史じゃなくて世界史を選びました。もともとはゲームですけど、私はアニメを観てから漫画を読んで。

——漫画版のおもしろいところって?

小坂井:ゲームでは選択によってルートがわかれますけど、アニメや漫画だと物語として偉人たちの歴史や国同士の関連性をまとめて理解できるんです。漫画を楽しみながらリアルな世界史を学べるのはいいなと。私も偉人が出てくるたびに、本物の人物のことを調べたりしていました。

——推しだったキャラクターは?

小坂井:偉人ではないんですけど、『Fate/Zero』の間桐雁夜。報われない役で、流動食しか食べられなくなるんですけど、友だちと流動食のゼリーを飲みながら「固形物は食べない…」とか言ってました(笑)。

——こじらせちゃった感じで(笑)。

小坂井:ほかにも、間桐桜ちゃんって子が好きでしたね。この子も報われない子で。なぜか『Fate』では、そういう可哀想なキャラクターに惹かれて…。ふだんは、天真爛漫だったり癒されたりするキャラクターに惹かれることが多いんですけどね。

高校の時、「ずっと笑顔でいたい」と決めた

——小坂井さんがいつもしているような、3つのマイルールを教えてもらえませんか?

小坂井:ついやっちゃうことは…やらかしが多くて。おうちの鍵を差したまま出かけるとか、ボーッとしているというより急に別のことを考えちゃうので、高校生の時に学校に着いてカバンをあけたらテレビのリモコンが入っていたり…。だから最近は、大事なものは玄関にかけています。あと、LINEの「リマインくん」でお仕事の時間を教えてくれるんですよ! 最近はそれをセットすることがマイルールです。

——2つ目はありますか?

小坂井:2つ目と3つ目が一緒になっちゃいますが、よく食べ、よく笑うこと。高校でステージに立つようになった時、歌とダンスが得意じゃないから、ずっと笑顔でいようと心の中で決めたんです。光と闇だったら、光のタイプというか。一緒にいる人が元気になってくれるような人になりたくて、プラスの感情はすぐに言葉や表情で出すように心がけています。そのためにもよく食べています!

私にとって仕事は生きる目的そのもの

——この10年で作品の幅がどんどん増えていますね。声優になれて良かったと思うことは何でしょうか。

小坂井:好奇心の赴くままにここまできましたが、目標に向かって努力すれば報われることを実感できたことです。私にとって仕事は夢であり憧れであり、仕事そのものが人生の目標だったので。

中学校の頃はメガネをかけていて、キラキラしたことに憧れて挑戦もしましたけど、自分に自信があったわけではなかったから、声優になりたいことも周りに言えなくて。でも、この前、母校で講演をさせていただいたんですが、「言葉に出して、ちゃんと頑張れば、できるようになる」と身をもって伝えることができて。自分でも嬉しかったです。

一言でいえば、人生の夢が叶った、それが声優になって良かったことです。

——人生の目標だった声優になる夢を叶えて、これから挑戦したいことはありますか?

小坂井:ひとつずつ叶っているんです。今26歳ですけど、去年は『恋と呼ぶには気持ち悪い』で、25歳までにアニメの主人公を演じる夢が叶ったし、電音部では大きなステージに立つ願いも叶って。子どもたちがいっぱいいる光景を目にしたい、っていう目標も、いつか叶えたいです。

——ここまで読んでくれた読者にメッセージをお願いします。

小坂井:私にとっての仕事は、生きる手段ではなく生きる目的で、生きがいといってもいいくらい。この記事を読んでくださって嬉しいし、人と関わるのが好きなので、これからどんな時代になっても直接声を届けられる場を作りたいと思っています。みなさん、ぜひ会いに来てもらえたら嬉しいです!

——小坂井さん、ありがとうございました!

【声優図鑑】小坂井祐莉絵さんのコメント動画【ダ・ヴィンチWeb】

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

小坂井祐莉絵

小坂井祐莉絵(こざかい・ゆりえ)クロコダイル所属

小坂井祐莉絵(こざかい・ゆりえ)Twitter

◆撮影協力

撮影=山本哲也、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト