矢野妃菜喜「苦手なことでもまずやってみる。ダメだったらまた考えます」【声優図鑑】

アニメ

更新日:2022/8/29

矢野妃菜喜

 キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチWebの恒例企画『声優図鑑』。第293回に登場するのは、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の高咲侑役、『ウマ娘プリティーダービーSeason2』のキタサンブラック役などを演じる矢野妃菜喜さん。

周りの人からきっかけをもらいながら芸能界に入って、声優になり……。でも、「今やっていることは全部自分のやりたいこと」。子役から長くエンタメ業界に携わってきたからこそ、これから挑戦したいことも語ってくれました!

くやしい気持ちがやりたい気持ちにつながった

——芸能活動を経て声優になった矢野さんですが、子どもの頃に夢中になっていたことはありますか?

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矢野:小学校1年生から芸能活動を始めたから、いわゆる子どもっぽくない子どもで。でもポケモンは好きでしたね。アニメを観てからゲームを始めて、でも殿堂入りはしませんでした(笑)。昔のゲームのほうが難しかった気がするんですけど、子どもながらに心が折れたんだと思います。

——子どもっぽくない子ども?

矢野:今でもよく落ち着いてるって言われますが、たぶん小さい頃から大人と仕事をしてきたから早く大人になったというか。自分のことを俯瞰で見ているようなところがあったかもしれません。肝が据わってる、みたいなことを今でも言われます。ライブのリハーサルで「火が出ます!」と言われても、みんながワーッとなっている中で「お〜あったかい」みたいに言ってたりとか(笑)。

——たしかに落ち着いてますね(笑)。芸能活動の中でも好きだったものは?

矢野:もともとミュージカルを習っていたので歌が好きだったのかな。周りのみんなは『アニー』のような大きな作品を目指していたけど、私はそんなに意識してなくて、オーディションを頑張る子たちを見て「みんなすごいね〜」と思ってました。

——自分から積極的に受けたオーディションもありましたか?

矢野:ありがたいことに、芸能界に入るきっかけはお母さんでしたし、アイドルになるきっかけもマネージャーさんで、バンドや声優もそうですけど、誰かから声をかけてもらってここまで繋がっているので、意外なほど自分から行動していなかったですね。もちろん、今やっていることは全部自分のやりたいことです。

——勧められたことを素直に受け止めてきたんですね。

矢野:そうですね。とりあえず、やってみてダメだったらまた考えよう、と思うほうなので。芸能活動も始めてみたらやりたい気持ちが強くなって、オーディションを受けられなかった時期もありましたけど、途中でやめるのもなあ……とモヤモヤして、ずっと途切れず続けてきました。

——声優を勧められた時のことを教えていただきたいです。

矢野:声優という職業を意識したことがなかったんですが、高校1年くらいの時、うたたねこ歌劇団で活動していた私をあるマネージャーさんが見つけてくださって。声だけのお芝居は普通のお芝居とは違ってぜんっぜんできなくて、びっくりしたし、くやしかったし、だからこそやりたい気持ちにつながって。すごくいいきっかけでしたね。

——2020年頃から声優としての活動が増えています。

矢野:作品はそんなにすぐは決まらなくて、養成所には行っていませんが、ワークショップには通ってました。声優を始めてから2年くらいで、初めて『キャノン・バスターズ』のオーディションに受かって、本当にうれしかったです。アニメにハマったきっかけが『ソードアート・オンライン』だったので、まさか松岡禎丞さんとご一緒できるとは……。出演者の方々も豪華ですっごく緊張しましたけど、ワークショップの先生から「うまくなったね」と言われたので、この作品で経験を積めたのかなって。

——同時期に決まった『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』は有名な作品で、それこそ決まった時は衝撃が大きかったのではないでしょうか。

矢野:まさか自分が関われるとは思ってなかったので素直にうれしかったし、びっくりしました。ただ、新しい作品ではなく、元からあった作品に飛び込んでいくことへのプレッシャーが大きくて……。

——どうやって乗り越えましたか?

矢野:もっとみんなのことを知ろうと思って。ちょうどコロナ禍だったので、みんなのYouTubeやライブ映像を観させていただきました。そうして、知っている状態でお会いできて良かったなと。

——『ウマ娘プリティーダービー』の活動も増えていますね。

矢野:スポ根の熱い作品で、なんじゃそりゃ! っていうギャグ要素もあって、そこが面白い作品だと思います。もともとのお馬さんの史実に沿ったIFストーリーもあって、競馬ファンの方も楽しめるのがすごいなといつも思います。

——気になるお馬は?

矢野:アニメで史実が気になったのは、サイレンススズカとライスシャワー。ちょっと悲劇じゃないですけど、お馬さんのドラマがあって、YouTubeで実際の映像を観て泣いちゃったりしました。

『シュガシュガルーン』のキラキラした世界に憧れました

——好きな本や影響を受けたマンガがあれば教えてください。

矢野:『シュガシュガルーン』は小学生の頃にすごく好きで、アニメを観てから漫画を全巻買って、今は実家にあります。私、ファンタジーが好きなんですが、この作品が初めてのファンタジーだったので影響を受けているのかなと。子どもの頃だから、魔法使いに憧れたり、キラキラする世界にいきたい、みたいな気持ちがあったんだと思います。

——お気に入りのキャラクターは?

矢野:当時好きだったのは、主人公の親友でライバルのバニラちゃんでした。かわいくて、女の子らしいところが好きでしたね。

——そういうキャラクターが当時は好きだったんですか?

矢野:そうだったと思います。自分と似ているタイプっていうことではなくて。

——その時代を代表する少女漫画でしたよね。

矢野:駅前の本屋さんで『ちゃお』を買って、そこで連載されていたものを読んでましたね。周りも読んでいて、みんなでその話をするっていう流れでした。最近はあんまり漫画を読んでなくて、アニメばっかりですね。

——アニメはどういうジャンルが好きなんですか?

矢野:今は、その時に放送されているものをチェックするようにしてますが、何も考えずに観られる作品が好きで、ゆるい日常系とかギャグ系はよく観ますね。

——出てみたい作品のジャンルや演じてみたい役柄は?

矢野:戦闘系はあまり出たことがないので、戦うようなキャラクターを演じてみたいですね。戦闘系といいつつ、戦いが下手でギャグ担当っていうのも楽しそう(笑)。“人外”も演じていて楽しそうだなって思います。少年役もいいですね。

——そういえば、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の高咲侑役は、ちょっと男の子っぽい役です。

矢野:侑ちゃんを演じていて「こういう役があってる」みたいな意見があるのを知って、「私はこういう声なんだ!」ということに気づいて。じゃあ、少年役も演じられるかもな〜と。周りに言われて自分の声の特徴に気づくことはたまにありますね。

ご飯をしっかり食べるようにしてます

——矢野さんが意識している、3つのルールを教えてください!

矢野:う〜ん、ひとつは、苦手なことでもまずはやってみる。今までいろんな人に縁を繋いでいただいて、それがいい方向に進んでいるので。やってみてダメだったら考えようっていう気持ちが根底にあるかもしれないですね。

——ついつい失敗を恐れてしまいそうですが…。

矢野:もちろん私も失敗は怖いですけど、やってみないと感触がわからないので。とりあえずやってみて「なるほど〜いいかも」って思う時もあれば、「もうちょっと頑張ろう」と思う時もありますね。

——思っていたより相性が良かったものは?

矢野:3年前にやってみたギターですね。楽器って難しいなって思いますけど、ギターは楽しいと思えることが多かったので。ジャカジャカ鳴らしながら弾き語りをして、途中で、弾けないな〜と思いながらも無理矢理進行して歌うのが楽しかったです(笑)。

——2つ目のルールは何でしょう。

矢野:ご飯をちゃんと食べる! たとえばライブの昼公演が終わって、夜公演が始まる前にご飯を食べるんですけど、たくさん歌った後ってあんまり食欲なくて。でも「食べよう」と思って食べたら元気になれたから、栄養大事だな! っていつも感動するんですよ(笑)。

——元気になれる食べ物を教えてほしいです。

矢野:お肉とか……ライブの後も、ご褒美にするなら、甘いものよりご飯を食べることが多いです。お酒は全然飲まないですね、そもそも弱いですし。普段もちゃんと食べるようにしていて、外食やコンビニのご飯に飽きちゃった時は、たまに生姜焼きとか簡単なものをちゃちゃっと作ります。

——3つ目のルールは?

矢野:朝ごはんを食べるようにしてます! 最近ジムに通い始めて、朝ごはんを食べると代謝が上がるし、いいことがいっぱいあると聞いて。プロテインを飲んでから、本当はご飯のほうが好きですけど、時間がない時はパンにします。

——健康的な生活ですね。

矢野:ちょっと時間があいたので、これからのライブとかお仕事のためにも整えようかなと。背中を鍛えたりとか、筋トレがメインですね。まだ始めたばかりですけど、継続できるかな〜。

自分が声をつけたキャラクターを舞台や実写で演じてみたい

——声優になって良かったと感じることは?

矢野:もともと女優さんだったこともあって、150cmしかない身長がコンプレックスだったんです。舞台のオーディションも155cmくらいからなので受けられる役が限られていたし。声だけのお芝居だと選択肢が増えるし、人ではない役まで演じられるのが一番の魅力で、本当に良かったなと思います。

——お芝居以外のお仕事としては、DUSTY FRUITS CLUBでご自分で作詞した曲を歌っていますが、どういう出会いだったんでしょうか。

矢野:多田三洋さんはもともとボイストレーニングの先生で、バンド名もついていない時に「この曲を歌ってほしい」と言われて、「もちろんです!」と。それがどんどん形になって、今はバンドとして活動しています。作詞も、誘っていただいてなんとか頑張って作りました。

——歌っている時の表情がすごく豊かで、歌う時の気持ちも違うのかなと。

矢野:そうですね。自分で作った歌詞だとその時の情景が思い浮かぶので、気持ちを込めやすいっていうのはありますね。

——20年近くエンタメ業界に携わっているからこそ、新しく挑戦したいことはありますか?

矢野:もちろん、いろんな役に出会っていろんな景色が見たいというのはありますが、舞台や女優さんを経験してきたからこそ、自分が声をつけたキャラクターをそのまま舞台や実写で演じられたらおもしろいだろうな〜って勝手に思っています。

——そう思うきっかけになった作品がありそうです。

矢野:『千と千尋の神隠し』の湯婆婆を演じていた夏木マリさんが、そのまま舞台に立っていらっしゃるのを見て、「そのまんまじゃん!」ってすごく思ったし、カッコいいなと。自分にもいつかそんなことができたらいいなと思います。

——矢野さん、ありがとうございました!

【声優図鑑】矢野妃菜喜さんのコメント動画【ダ・ヴィンチWeb】

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

矢野妃菜喜

矢野妃菜喜(やの・ひなき)ソニー・ミュージックアーティスツ所属

矢野妃菜喜(やの・ひなき)Twitter

◆撮影協力

撮影=山本哲也、取材・文=吉田あき、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト