高杉真宙「好きという感情を高めていけるかが大事だと思った」初の恋愛映画『いつか、いつも……いつまでも。』

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更新日:2022/10/19

 高杉真宙さんにとって、初めてのラブストーリー主演作となる映画『いつか、いつも……いつまでも。』が、10月14日(金)に公開される。タイトルとポスターのイメージから、ほっこり心のあたたまる物語かと思いきや、初対面の印象が最悪だった2人が一つ屋根の下で口喧嘩を重ねながら惹かれあっていくという、これぞ大人のラブコメ! と太鼓判を押せる物語である。

 高杉さんが演じる俊英は、祖父が院長を務める診療所で働く医師。いついかなるときも表情を変えることなく、看護師からも感情がないんじゃないかと思われるほど、クールな彼だが、実は2年前からひそかに想い続けている女性がいた。従兄が仕事仲間と一緒に撮った写真に写る女性に一目ぼれ。こっそり拝借した写真を眺めるばかりだった俊英なのだが、ある日、その彼女にそっくりな女性――亜子(関水渚)が叔母に連れられ、俊英の暮らす家にやってくる。聞けば、ひと月前に結婚したばかりにもかかわらず、夫は海外へ長期出張中。自分を見つめなおすためにその町にやってきたというのだが……。

高杉「写真を見ただけで好きになった、というその想いをどれくらい積みあげることができるのかが俊英を演じるうえでいちばん意識していたことでした。見た目だけで憧れていた人とそっくりな亜子ちゃんは、まあまあ自分勝手なところもあって、俊英をふりまわす。そのギャップに戸惑いながらも、どれくらい、好きという感情を高めていけるのかというのが、この映画の大事なところだと思ったので」

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 初対面の俊英に酔っ払って悪態をつくだけでなく、俊英と同居する祖父(石橋蓮司)にも出会って早々「くそじじい」と言い放つ亜子。思い描いていた女性とはかけ離れた姿に、俊英は衝撃を受ける。けれど、彼女が何かを抱えているらしいこと、怒ったり泣いたり、心を許せば笑ったり、まっすぐに感情をあらわにする彼女自身に、少しずつ惹かれていく。一方的な憧れや恋慕ではなく、相手の弱さもだめなところも全部知ったうえで、慈しみの感情がどんどん育っていく過程に、胸をつかまれずにはいられない。

高杉「ラブストーリーでもあるんですけど、一緒に暮らすおじいさんや、家政婦のきよさんもひっくるめた家族の物語でもあって。4人が一緒に食卓をかこむ風景が、僕はとても好きでした。誰かと食事をしながら何気ない会話をするのって、こんなにも幸せなことなんだと感じられて……。ふだんはなかなか気づくことのできない日々の小さな幸せを、一緒に重ねていくことで、亜子は俊英だけでなく、おじいさんやきよさんとも“家族”になっていく。自分を温かく迎え入れてくれる存在として関係が育っていく過程も、素敵だなあと思いました」

 野菜を差し入れに来た叔母が豪快に包丁でまっぷたつにした瑞々しい大根。迷惑をかけてばかりの自分に優しくしてくれるみんなのために、亜子がつくった甘いお芋のきんつば。ろくに食事をとらない俊英を案じて用意した、ふわふわ卵のサンドイッチに焼売。見ているだけでおなかがすくし、好きな人に会いたくもなってくる。

高杉「そう言っていただけるとありがたいですが、僕自身は、ナチュラルに恰好をつけることの難しさを感じています。なんていうのか……特別カッコいい人を演じる必要はないと思うんですけれど、恋愛モノならではの“恰好の付け方”ってあるよなあ、って。上手な人のお芝居を観て、これからも勉強しないと」

 と謙遜する高杉さんだが、ふだんは子どもじみた掛け合いばかりしている2人が、急接近するシーンの色気ときたら! ファンならずとも悶絶必至である。

 亜子に夫がいる、というだけでなく、それなりに背負ってきたもののある大人だからこそ、「好き」という感情だけで物事は解決しないし、突っ走ることもできない2人。そんな2人を見守る、おとぼけながらも温かい家族たち。その姿に笑って、ちょっと切なくなって、キュンとできる。隅々まで心を満たしてくれる作品だ。

(取材・文=立花もも 撮影=干川修)

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