元漫画家志望・呂布カルマが「読み返したらしんどかった」と語るオールタイムベストと“次にくるマンガ”は?

マンガ

公開日:2023/7/7

呂布カルマさん

 マンガ好きによる投票で、その年に“くる”であろう作品を選出する「次にくるマンガ大賞」。9回目となる今年もいよいよノミネート100作が発表され、2023年7月10日(月)11:00まで投票を受付中だ。

 過去には『チェンソーマン』『ぼっち・ざ・ろっく』『【推しの子】』など、アニメ化も果たした話題作がランキング上位に輝いてきたが、今年はどんな作品が選ばれるのだろうか…?

 今回は「次にくるマンガ大賞」開催を記念して、大のマンガ好きにして、実はマンガ家を目指していた過去をもつ、大人気ラッパー・呂布カルマさんにインタビューを敢行。マンガの探し方から、人生のベストマンガ、そして“次にくるマンガ”について教えてもらった。

取材・文=ちゃんめい

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新しいマンガと出会うのは難しい?最近の推しは『だれでも抱けるキミが好き』

呂布カルマ(以下、呂布) 昔は、書店に足を運んで新しいマンガとの出会いを楽しんでいましたが、今はそういったことを全くしなくなりました。最近だと、単行本の表紙デザインに惹かれて買ったものの、中見が全然違う! なんてことも多いじゃないですか。装丁デザイナーさんの腕が上がりすぎていて信用できない部分があるんですよね。だから、書店へ行って“表紙買い”することもすっかり減ってしまいました。

 唯一、毎週欠かさずにチェックしているのは『ヤングマガジン』(講談社)。編集部の方が送ってくださるんですが、最近の連載陣だと『だれでも抱けるキミが好き』(武田スーパー)が面白いです。童貞の男子高校生が、クラスメイトのヤリマンが教室でセックスしているところをたまたま見てしまって、それがきっかけでだんだんと好きになってしまう…という話なんですけど。ヒロインが本当に気持ち良いくらいヤリマンなんですよ。

 実はこういう描かれ方って青年誌ではあまりなかったと思っていて、例えば今までだと男性が主導権を握って女性に何かする…という性的描写が多かったんじゃないかなと。だけど、『だれでも抱けるキミが好き』はその真逆で、童貞の男子高校生がヤリマンのヒロインにガッツリ食われてしまう。この描き方が新しくて面白いなと思いました。あと、内容に反して「エロマンガ読んでる」という後ろめたさを感じさせない、この絵柄とのバランスも良いですよね。

「子供の頃に読んだマンガを超えることはない」呂布カルマのオールタイムベスト

呂布 オールタイムベストを選ぶとしたら…。一時期は『ザ・ワールド・イズ・マイン』(新井英樹/小学館)をあげていましたが、先日仕事で全巻読み直す機会があったので、改めて読んでみたらもうめちゃくちゃしんどくて。何回も読み直す作品じゃないなって思ったんですよね。そう考えたら、何度でも読み返したいオールタイムベストは『銃夢』(木城ゆきと/集英社)かなぁ。

 選定軸として“子供の頃に読んだマンガ”という点は結構大事かもしれません。今、マンガを読む時って、だいたい一気にまとめて1~2日で済ませてしまうんですよ。1~2日で終わってしまうものと、子供の頃に連載を追っていたものや古本屋で一冊ずつ集めたもの…どちらも面白かったとしても、やっぱり全然違うと思うんです。

 例えば、『グラップラー刃牙』(板垣恵介/秋田書店)の最大トーナメント編は、僕の中学校3年間とぴったり重なる。だから、僕の中学3年間の思い出と最大トーナメント編が完璧にリンクしていたりして。やっぱり特別な作品になるんですよ。だから、大人になってから読んだ作品がどんなに面白くても、子供の頃に読んだマンガを超えることはないと思っています。

『日本三國』『SPUNK -スパンク!-』…“次にくる”を語る

呂布 「次にくるマンガ大賞」は知っていましたが、こうしてノミネート作品を見ていると初めて見るものばかりです。Webマンガ部門にノミネートされている『日本三國』(松木いっか/小学館)は単行本2巻が発売された際、帯に推薦コメントを書かせていただいて。それがきっかけで読み始めましたが、すごく好きなタイプの作品でした。

『日本三國』は近未来の日本が舞台ですが、文明が一度崩壊して戦国時代レベルにまで後退している世界。近未来の日本で、時代を少し昔に戻して、「三国志」みたいな国盗り合戦をする…もう、設定が面白いしめちゃくちゃ考えているんだろうなって。しかも、武将側ではなく軍師にスポットをあてて描いている点も新しいですよね。あと、絵の雰囲気もちょっと古い感じに寄せている。おそらく意図的だと思いますが、作品の内容とすごく合っていて良いなと思います。

 今回ノミネートはされていませんが、僕にとっての“次にくる”はやっぱり『SPUNK -スパンク!- 』(新井英樹/KADOKAWA)なんですよね。先ほどあげた『ザ・ワールド・イズ・マイン』もそうですが、新井英樹先生って残酷なものを描くじゃないですか? だから、『SPUNK -スパンク!- 』の題材がSMだと知った時は、さぞ残酷なんだろうと…正直、覚悟していたけど、全くそんなことなくて描かれているのは“青春”なんです。

 本作では、マイノリティであるサディストやマゾヒストの人たちが差別偏見なく描かれていて、むしろこんなに開かれている作品はないぞってくらい。SMが題材と聞いて躊躇う方もいるかもしれませんが、数ある新井英樹作品の中でも屈指の読みやすさだと思うので、ぜひ読んでみてほしいです。でも、今後どんな展開になるかわからないですよね…。ここから裏切ってくるのが新井英樹先生! という感じもしますし。僕はまだ全然油断はしていないですけどね。

呂布カルマさん

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