6年ぶり帰国のピース綾部「ハリウッドスターになるのと同じぐらい、英語が上手くなりたい気持ちが強い」ロサンゼルスに拠点を変えてから帰国まで、現在の心境を語る【綾部祐二インタビュー】

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更新日:2023/10/27

綾部祐二さん

 2017年、ハリウッドスターを目指してアメリカに渡った、お笑いコンビ・ピースの綾部祐二さん。6年ぶりに帰国し、10月15日に「ピーストークライブ~本とアメリカ~」を開催した。

 本記事では、帰国してから数日後、トークライブを直前に控えた綾部さんにインタビューを実施。ニューヨークでの5年間を綴ったエッセイ『HI, HOW ARE YOU?』刊行後、ロサンゼルスに生活の拠点を移し、6年ぶりの帰国となった現在の心境を聞いた。

「過去最高の月収だった」という日本での芸能活動をすべて休止しての渡米。ハリウッドを目指す綾部祐二の現在地とは。

(取材・文=金沢俊吾 撮影=三宅勝士)

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渡米して6年、まだアメリカに入っていない

――1年ほど前にニューヨークからロサンゼルスに引っ越されたそうですが「ハリウッドスターになる」という目標を見据えてのことだったのですか?

綾部:いえ、LAでいい物件をたまたま見つけたからなんですよ。ニューヨークでは、ワイフと別々の家にずっと住んでいて、そろそろ家賃がもったいないから一緒に住むための物件をニューヨークで探し始めたんですよ。なかなか決まらないなか、ワイフが「LAだといくらぐらいなんだろう?」ってなんとなく検索して、その2日後には現地に飛んでました。

――『HI, HOW ARE YOU?』ではニューヨークで出会った人々との交流がたくさん書かれていました。友人たちと離れることにさびしさはなかったですか?

綾部:それはまったくなかったです。だって、日本からニューヨークに来てるんですもん。それに比べたら。変わったのは気候ぐらいじゃないですかね。

――住む場所こそ2都市目ですが、この6年間でアメリカ中を旅されたそうですね。

綾部:はい。アラスカにはまだ行けていないのですが、西海岸、東海岸、中央部…6年間でかなりたくさんのエリアを見たんじゃないかと思います。

――「見た」といえば、2020年の「オードリーのオールナイトニッポン」にゲスト出演した際「2年間アメリカで何してたの?」という質問に対して「アメリカを見ている」と仰っていたのが印象的でした。あれから3年経ちましたが、まだ「見ている」という感覚ですか?

綾部:そうですね。ずっとアメリカを見ています。「住んでいる」っていうより「見ている」。そのうち、時がきたらアメリカに入っていくんだと思います。

――まだアメリカに入っていない?

綾部:入ってないです。ハリウッドから「ユウジ、おまえのスキルとセンス、エンターテイナーとしてのパワーが必要なんだよ」と言われて仕事がたくさん入ってくるようになったら、やっと「扉が開いた」と言えるんじゃないかなと思います。

――いつかハリウッドの門が開くはずだ、という感覚は持たれているのでしょうか?

綾部:「きっとハリウッドスターになれるんだろうな」と漠然と考えながら、ふらついているという感じです。絶対になれないと肌で感じた瞬間に諦めて、次の夢というか、また新しいことを始めます。

――ハリウッドスターになるために、綾部さん自身がいま取り組んでいることはあるのでしょうか?

綾部:英語です。とにかく英語をやらないと。一に英語、二に英語。三に英語、四に英語。もう十まで英語です。

綾部祐二さん

アメリカが楽しすぎて、英語の勉強ができない

――『HI, HOW ARE YOU?』では勉強の方法をがらっと変えて「ぼくは5年かけてようやく、英語を習得するために何をすべきかわかりました。あとはサボらずに、本気で勉強するだけ」と書かれていました。あれから1年ほど経ち、上達具合はいかがでしょうか?

綾部:それが、まったく順調じゃないです。もちろんレベルは上がってますが、6年アメリカに住んでいる人間としては、かなり出遅れていると思います。

――綾部さんのYouTubeチャンネルでは英語でインタビューに応えていて、かなり流暢に話されていると思いましたが。

綾部:英語力って、どのレベルで自分が納得するかという話なんです。お金にたとえたら、1,000万円でお金持ちだと思う人もいれば、1億円がお金持ちだと思う人もいる。僕はエンターテインメントの世界で演者として英語を使いたいので、1億円が必要なんです。

――目標が1億円として、いま何千万円ぐらいですか?

綾部:800~900万ぐらいかな。

――え、まだ10分の1未満ですか?

綾部:そうです。これは先が長いですよ。

――なるほど…。でも、ハリウッドの門を開くためにも、生活の多くの時間を英語に割いているんですよね?

綾部:いや、割けないんですよ。割けていたら「8,000万ぐらいですね」と言ってるはずです。

――(笑)。でも、今後もLAで生活して、どこかのタイミングでコツを掴んで急成長される可能性もありますよね?

綾部:いや、やっぱり勉強しないとダメじゃないですかね。山頂に辿り着くためには、自分の足でコツコツと登らないといけないんです。英語の勉強にヘリコプターはないんです。

――そこまでわかっていて、ハリウッドスターになるために英語が必要だとも思っていて、あまり勉強しないのはなぜでしょうか?

綾部:アメリカが楽しすぎるからじゃないですかね。英語という山を登っているんだけど、まわりに楽しいことがありすぎて、ずっとテント張って座っている状態です。登りたくても「かわいいクマがいるじゃん」ってクマとじゃれ合ったり。

――(笑)。進まないことに焦りはないですか?

綾部:それは焦りますよ。英語力でいうと山頂に辿り着いたワイフが隣にいますから。ワイフから「いつまでクマと遊んでるの? 早く登ってきなよ」と言われます。でも僕は「あ、この蝶々もかわいいなあ」って。それぐらい、アメリカという山が魅力的なんですよね。

ハリウッドスターになるのと同じぐらい、英語が上手くなりたい

――でも、もしかしたら、英語が上達する前に、ハリウッドの門が開くかもしれないですよね?

綾部:そうですね、英語にヘリコプターはないけど、ハリウッドにはありますから。でも、6年前はハリウッドスターになりたくてこっちに来ましたけど、いまは、ハリウッドスターになるのと同じぐらい、英語が話せるようになりたい気持ちが強いです。

――それ程までに英語が上達したいと思ったのはなぜですか?

綾部:もっと世界中の人たちと深いコミュニケーションを取りたいんですよ。僕、こっちで50以上の様々な国籍を持つ知り合いができたんですが、みんなが共通して話せるのが英語なわけですから。どんなふうに生きてきて、いまどんな気持ちでいるのかを話し合えるわけです。

――アメリカという山をもっと楽しむためには、やっぱり英語が必要だということですね。

綾部:そうですね。先日、テキサスで開催された世界中からSNSのインフルエンサーが集まるイベントに行ったんです。そこで知り合ったイタリア人とフランス人と、3人でピザを食べながら一晩語り合って。あんなすてきな夜はなかったです。もっと上手く英語が話せたら、もっと深い話ができるはずなんです。

綾部祐二さん

相方・又吉と「次に会うときはライブで」

――昨年、ニューヨークでの5年間を『HI, HOW ARE YOU?』という書籍にまとめて、ピース結成20周年となる今年、6年ぶりの帰国となりました。こうした展開はいつ頃から計画されていたのでしょうか?

綾部:もともと5年ぐらいでペラペラの英語をバーンと披露しようと考えていました。それが見事に不発になってしまい、不発したことも含めて報告しようと思ったのが『HI, HOW ARE YOU?』です。

――日本では、本のなかでご結婚されたことを明かしたのがニュースになっていましたが、読者からの反響はいかがでしたか?

綾部:Instagramに尋常じゃない数のメッセージが毎日届いたんですよ。 日本にいた頃から応援してくださっているファンの方が読んでくれたのもすごくうれしかったですし、印象的だったのが「あなたのこと嫌いでしたが、本を読んでイメージが変わりました」という人がすごく多かったんです。「家族みんなあなたのことが嫌いでした」「お調子者キャラが鼻につきます」みたいな。僕にネガティブな印象を持っている人がいることは理解していたつもりですが、こんなにいたんだって(笑)。

綾部祐二さん

――(笑)

綾部:そういったマイナスの気持ちを持っていた方々が、本を読むことでプラスに転じてくれて。「お調子者」みたいなキャラクターは自分で作ったものだし、それを覆したくて本を作ったわけではないのですが、結果としてそうなったのが衝撃的でもありうれしかったですね。

――今回の帰国は、ピースのトークライブのためですか?

綾部:いえ、そういう感じではないですね。実家に帰ったり色々やることがあって、相方とは「次に会うときはライブで」と話していたので、じゃあ、言ってたとおりライブやろうかなって。

――ネタをやる、という話は又吉さんとは出なかったのでしょうか。

綾部:ネタはもういいです(笑)。もう一生やらなくてもいいって思ってるぐらい。僕は芸能界に入るためにこの世界に入ったので、別に漫才師の称号、コント師の称号を得ることにはもともと興味がなくて。見るのは大好きなんですけどね。

――M-1とキングオブコントで決勝にいったことがブレイクしたきっかけのひとつだったと思いますが、綾部さんはその先にある芸能活動を見据えていたということですよね。

綾部:そうです。事務所がエントリーしただけで、僕らはM-1もキングオブコントも出なくていいと言ってましたから。だから今回のライブも、相方とネタをやるかって話は出なかったですし、6年ぶりに近況報告してるだけで2時間半ぐらい経っちゃうと思います。

――帰国後もまだ又吉さんとは会っておらず舞台上で再会するそうですが、そのときにどんな気持ちになるか、綾部さんのなかで想像はついていますか?

綾部:わからないですけど、でも6年前に別れたときとあんまり変わらないんじゃないですかね? 帰国してからいろんな人に会ってますけど「うわー久しぶり!」みたいなことにはお互いならないんですよね。たぶん、あいつも普段通りだと思います。

――今後、ピースとして、綾部さん個人としての日本での芸能活動について考えていることがあれば教えてください。

綾部:いまはまだ全然わからないですね。僕がどれくらいの頻度で帰国するかもわからないですし。でも、帰ってくるたびにライブをやるとしても、今回と次回以降では意味合いが違うと思うんです。やっぱり6年間を一発でどーんと出すわけなので、とにかくいまは今度のライブが楽しみですね。

――あくまで、芸能活動というか、綾部さんの人生の主軸はハリウッドスターを目指すことだと。

綾部:もちろんです。アメリカを見て楽しんで、そしてハリウッドの門が開き次第、中に入っていくということです。

綾部祐二さん

■著者プロフィール
綾部祐二(アヤベユウジ):
2000年デビュー、03年、又吉直樹とお笑いコンビ「ピース」を結成。10年にブレイクを果たし、一躍人気タレントに。人気絶頂の16年、アメリカに拠点を移すことを発表。9本あったレギュラー番組すべてを降板し、17年10月にニューヨークへ移住。
22年5月には渡米5周年を機にロサンゼルスへ移動し、YouTubeチャンネル『YUJI AYABE from AMERICA』を立ち上げるなど、夢の実現に向け精力的に活動している。

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