続・『けいおん!』『きんモザ』きらら編集長に聞く“日常系”の人気の秘密とは?

アニメ部

2014/6/15

 “日常系”作品と呼ばれる、ゆるい日常を描く作品の魅力を伺った前回。ただ美少女が登場するだけのマンガではないことを『まんがタイムきらら』編集長の小林宏之氏にうかがった。

誰にでも描けそうな“日常系”だが、ヒット作は簡単には生まれない。今回、そんなヒット作の秘密を教えてくれた。
 

▲“日常系”作品をリードする『まんがタイムきらら』とそのグループ誌。『まんがタイムきららフォワード』が、現在好評発売中!


■“視点”が面白さの決め手

ただホッコリするストーリーなら、なんでも受け入れられるかというと、そうではない。作家の持つ独自の視点もヒットに不可欠とも。

「“日常系”作品に限りませんが作品とは、作家が社会をどう見ているか、作家の世界観の発露だと思います。
作家さんが持っている独自の視点が、日常を面白く見せるのです」(小林氏、以下同)

例えば、『きんいろモザイク』。普通の女子高生ではなく、アリスという違う文化で育った女の子から見た日本が描かれているのだ。

「これは『きんモザ』のアニメプロデューサーが言っていたことです。『この作品を知って、もう一度自分の国を見直したいと思いました。自分の属するコミュニティーやその土地を』と。
知らない人が見ればただの、美少女マンガ。でも美少女マンガでも、社会とつながりを持つ媒体となり得えるのです。これは、原悠衣先生独自の視点がなければありえないことでした」
 

▲アニメ第二期の放送も待ち遠しい『きんいろモザイク』


■ いまある世界がどう見える?

小林氏いわく、10人中9人は同じように社会を見ているという。だが優れた作家とは、人が見えない「何か」が見えるという。

「マンガは、ゼロからイチを作ることではありません。世界はすでにあるものです。『ある』ものをどう見るかが、面白味となります。
これは持ち込みをする新人さんたちにもぜひ伝えたいことです。優れた先生のフォロワーでいるだけでは、採用できません。自分らしさや、新しい視点を作品に出して欲しいですね」

世界を斬新な視点で見るとは、ちょっと難しい言い方だ。そこで、具体的作品をあげていただいた。

「中村光先生の『聖☆おにいさん』のような作品は、顕著ですよね。ブッダとイエスが、立川で日常生活を送っているなんて、だれも思いつかないアイディアですよ。
あと、僕が最近注目している作品が九井諒子先生の『ダンジョン飯』。これは、ゲームのRPG的ファンタジーの設定です。RPGといえば、普通は勇者の冒険ですよね。
でもこの作品では、各ダンジョンにいる、モンスターをどうやって料理しようか悩み、食べるストーリーなんです。
いままでだれもファンタジー世界をそんな風に見ていた人はいませんよ!」

優れた作家とは、同じ日常を見ていても、別な価値を提示できる人なのかもしれない。
う〜ん、ありきたりの日々を、4コマに仕立てるだけではダメなのか! さらに深くなってきたぞ、“日常系”!
 

▲アニメ化によってより厚みが増した『けいおん!』


■ 恋愛できるキャラが必須!

続いて、もうひとつの重要な要素も解説してくれた。それは、魅力的な女の子。ファンを惹きつける鍵だそうだ。

「魅力的な女の子を嫌いな男性はいませんよね。僕は今年42歳になるのですが、それでもカワイイ女の子が大好きです(キリッ)!
そのためカワイイ女の子は、読者と作品をつなぐ重要なファクターなのです。キャラクターに恋をしてしまったら、その作品から目が離せませんよね」

なるほどファンの心をつかむには、キャラに恋をさせることも必要なのか! だが、魅力的なキャラとひと言でいうが、実際はどんなものだろう。

「ひとつには、絵の力も大きいと思います。『けいおん!』の第一話、第二話は、扉絵にそれぞれ唯、澪が描かれていました。その原稿を見て、『この人はいい人物を描く』と直感しました。その後、高い支持を得たのはご存知のとおりです。
理屈ではなく、絵にはなにか説得力を感じるときがあります。新人さんは絵が未熟なことが多いのですが、そのなかにもキラメクものがあるんです。
人との出会いと同じでしょうか。初対面では、相手のすべてはわかりませんよね。でも、なにかフィーリングを感じることはあります。絵も同じで何かを『内包している』と感じさせる力があれば、人は引き惹きつけられます」

しかし、ただ絵が魅力的なだけのキャラが人気を得るのではないという。

「これは、前編で語った作風にも通じることですが、やっぱり接点を作れるかどうかです。読者とキャラクターとの間に接点があれば、人ごととは思えなくなります。そのときに、恋をするのかもしれません(笑)」

二次元相手に「萌える」という言葉をよく使う。だが、「萌え」ているのは、まったく自分にないものにではなく、キャラと共通する要素に、人ごとではない何かを感じ、恋心を抱くのかもしれない。
 
 
▲アニメからマンガに逆輸入。『まんがタイムきらら☆マギカ』vol.14好評発売中


■ アニメありきではない

近年、毎クールごとにアニメ化されている“日常系”作品だが、初めからアニメありきではないという。

 「マンガはアニメの材料ではありません。小手先のアニメ化を狙うような作品は面白くないと思います。
でも『けいおん!』は、京アニさんの力で作品の魅力が膨らみました。かきふらい先生の作風が京アニさんの作風にマッチしたうえに、丁寧に描いていただいたため、キャラの魅力が更に広がりました。
いいマンガは、いいアニメになってほしいと心から願っています」

一方で、アニメから影響を受けることもあるという。

「『魔法少女まどか☆マギカ』のアンソロジーコミックを、『まんがタイムきらら☆マギカ』として発行しています。
アニメのコミカライズは、初めての試みでしたが、女性や小学生など、普段あまりきらら作品を読んで頂けていない層からの反応を受けるなど、いい反応を得られました。
中でもアニメ本編とは、まったく違うあらたまい先生の『巴マミの平凡な日常』という作品が人気です」
 

▲当媒体でも何度かご紹介した『巴マミの平凡な日常』。アンソロジーの面白さを最大限にいかした傑作。

ドラマチックな作品も「きらら」の手にかかれば、クスリと笑える作品に。そして作品の世界観はさらに広がる。好循環が生まれている。
 『きらら』読者は、アニメとの親和性は高い。これからもアニメ化、またアニメのコミカライズ化が期待される。


恥ずかしながら、どれも同じように見えていた“日常系”作品。今回、話しをきいて記者は目からウロコが落ちる思いであった。
平穏な日々のなかにも独自の視点があり、そして恋するキャラには自分とのコネクションがあること。これからアニメの見方も変わりそうだ!


■ アニメ化など最新情報は公式HPへ
 

・「まんがタイムきららweb」
http://www.dokidokivisual.com/

取材・文=武藤徉子