今、最も熱い注目を浴びる脚本家・岡田麿里の作品を振り返る

アニメ部

2014/6/16

現在好評放送中の『selector infected WIXOSS』と『M3-ソノ黒キ鋼-』。ダークな展開から目が離せないこのオリジナルアニメの脚本を手掛けているのは、脚本家の岡田麿里さん。同時期に二本のオリジナルシリーズを担当しているのは、業界内外から、評価されている証拠かと思われます。

ついに最終回を迎える『selector infected WIXOSS』や、今後の展開が気になる『M3-ソノ黒キ鋼-』をより深く知るために、岡田さんがこれまで関わった作品を振り返ってみましょう。

○true tears
 

造り酒屋のひとり息子で絵本作家志望の仲上眞一郎は、その幼馴染で親を亡くして仲上家に引き取られた湯浅比呂と、突然現れた天使のような少女、石動乃絵との間で揺れ動く。北陸・富山を舞台とした切なくも美しい恋物語です。

アニメファンの間で岡田さんの名前が広く知れ渡るきっかけになったのがこの作品でしょう。岡田さんはシリーズ構成として参加。各話脚本では主に乃絵が活躍する回を担当。そのエキセントリックだけど愛らしくそしてどこか危うい行動に、岡田さんのアイデアの豊富さが見て取れます。
ゲーム原作の作品ですが、共通しているのはタイトルだけで、内容はほぼ完全なオリジナル。これは、カードゲームだけど内容はほぼオリジナルの『selector』のいわば先輩格と言えます。

思春期の少年少女の生々しい感情を描きながら、どこか崇高な雰囲気を湛えたこの作品、岡田さんが最初に参加したP.A.WORKSのアニメでもあります。地元の北陸を舞台に、美麗な背景、ハイレベルな作画の青春アニメを手掛ける……というP.A.WORKSの黄金パターンを確立した作品です。
脚本家とスタジオの出世作になった本作。岡田さんがこの作品に参加するきっかけになった作品があるのです。

○シムーン
 

人がみな少女として生まれ、大人になるときに自ら性別を選ぶ世界、大空陸を舞台に、孤高のエンジン「ヘリカル・モートリス」を持つために侵略を受けるシムラークルム宮国の少女たちの戦時下の青春を描いたオリジナルアニメ。

岡田さんは後半のメインライターとして参加。西村純二監督とのコンビで耽美的なSF世界をきっちり描き切りました。本作での岡田さんの脚本は、どちらかと言えば理知的で構成に注力されています。途中参加なのに複雑な設定と数多くの登場人物、そして深いテーマをしっかり捌いて高い実力を見せたのです。
本作品で西村監督からの信頼を得た岡田さんは、上述の『true tears』でも誘われてコンビを組むことに。

クリエイターから信頼されて同じコンビで複数の作品を手掛けるケースが多いのも岡田さんのすごいところ。西村監督と監督&シリーズ構成としてクレジットされたのは『true tears』だけながら、脚本家の西村ジュンジとして数多くの岡田さんのシリーズ構成作品に参加。息の合った仕事ぶりを見せています。

○とらドラ!
 

 
目つきが悪いために誤解されがちな少年・高須竜児と、手乗りタイガーとあだ名される凶暴な美少女、逢坂大河を中心にそれぞれの“のっぴきならない”事情と切ない思いを抱えた高校生たちを描いた、超弩級のラブコメです。原作は竹宮ゆゆこ氏のライトノベル。

岡田さんとのコンビでヒット作を連発したと言えばなんといっても長井龍雪監督。『true tears』の熱が冷めやらない2008年に放映開始された『とらドラ!』で、岡田さんと長井監督のファンになった方も多いのではないでしょうか。

竹宮ゆゆこ氏の原作を丁寧にアニメ化した本作、『true tears』と並んで思春期の少年少女の生々しい気持ちを描ける脚本家という岡田さんのイメージを決定付けました。

○あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
 

超平和バスターズを名乗って、いつも裏山の小屋で遊んでいた6人の少年少女。しかし、その一人であっためんまの事故死をきっかけに、彼らはなんとなく疎遠になってしまう。そんなある日、高校生になったじんたんの元にめんまの幽霊が現れたことから、超平和バスターズの時間が再び動き出して……。

長井監督と岡田さん、さらにキャラクターデザイナーの田中将賀さんは『とらドラ!』で意気投合。次回作も一緒に……ということで作られたのが本作。ノイタミナ枠発のオリジナルアニメで最初のメガヒットになりました。岡田さんのパブリックイメージに一番近い作品がこの『あの花』でしょう。

性的な話題にも果敢に踏み込むキャラクター描写、大胆なアイデアの盛り込まれた展開、登場人物の心の傷を丁寧に解きほぐし、そして、凝り固まった感情を一気に爆発させる終盤のカタルシス。全話脚本を手がけ、企画の根本を担当しただけに、そういう岡田さんの持ち味がよく発揮されています。

例えば、ヒロインの一人、安城鳴子のあだ名が「あなる」。小学生が意味を知らないまま付けたあだ名とはいえ、人前で口に出すのが憚られる言葉をヒロインの呼び名にしてしまうのが岡田さんのすごいところ。タブーすれすれに踏み込む大胆さも岡田さんの特筆すべき魅力と言えます。

○スケッチブック
 

小箱とたんさんの四コマ漫画を原作とした作品。高校で美術部に入った梶原空。独特のテンポを持った彼女の周りには、個性的なみんなが集まってくる。不思議な少女の感性とゆったりした空気を描いた日常系の傑作です。

『M3-ソノ黒キ鋼-』の佐藤順一監督と岡田さんの関係の中で風変わりなのがこの『スケッチブック~full color's~』でしょう。愛弟子・平池芳正監督(岡田さんと『AKB0048』を作った監督ですね)の監督第二作に、佐藤順一監督は監修という立場で参加。空気感を重視したアニメ化の難しい原作、若いクリエイターにアドバイスをしたのだそうです。

結果として、原作のエピソードを非常に巧みに並び替えて、空気感を壊さないまま、一本筋の通った、アニメならではのストーリーを作り上げることに成功。岡田さんのアレンジ能力が存分に発揮されることになりました。

長い付き合いの名コンビで臨む『M3-ソノ黒キ鋼-』、2クール目へ向けていよいよエンジンが温まってきた感じがあります。果たして、チーム・ガルグイユにはこの先どんな転変が待ち構えているのか…。

一方、怒涛のクライマックスへと突き進む『selector infected WIXOSS』は、佐藤卓哉監督とのフレッシュなコンビで、わずか1クールでありながら、互いの持ち味がぎゅっと詰め込まれた新鮮な魅力に溢れています。るう子や、タマがどんな結末を迎えるのか…、これからも岡田さんの活躍から目が離せません。

文=夏葉薫