“AVを見た本数は経験人数に入れていい” バカリズムがリスナーと作り上げた 男のエロ面白さ全開の妄想本

新刊著者インタビュー

更新日:2014/9/29

内容が面白くなかったらゴーサインは出さない

 人気コーナーが早々と本になったという事実、リスナーとの距離感の保ち方や、コーナーを組み立てていく上手さなどは、まるでラジオを知りつくした人物のようだが、升野さん自身はラジオに疎いのだという。

「九州の山奥で育ったので、ラジオを聞こうと思っても、海外の放送と混信してしまって、電波がまともに入らなかったんです。周りの友達も同じような境遇で、誰もラジオを聞いていませんでした。だから、自分の番組をやることになっても、勝手がまったくわからなかった。かといって、他の人の番組を聞いたら自分の下手さにへこむと思ったので、お手本ナシで番組をやっています。当初は、一人でマイクに向かってしゃべることにものすごい違和感がありました。それはいまでも慣れないですね。オールナイトニッポンっていう番組も、過去のパーソナリティの顔ぶれを見ればすごい番組だとわかりますけど、放送を聞いてなかったのでピンとこない。“大手さんから声をかけていただいてありがたい”ぐらいの感覚なんです」

 オールナイトニッポンからは、これまでに数々の番組本が出版されてきた。だが、ラジオ番組のコーナーが本になるということは、升野さんにとっては不思議な感覚なのだそう。

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「デビューしたばかりのころに、事務所の先輩のウッチャンナンチャンさんの本が出たんですよ。それを事務所で見かけて“ラジオが本になるのかぁ〜”って驚いた覚えがありますね。そのときは、番組を聞いていないから読んでもわからないだろうと思って本を開きませんでした。ラジオの冠番組にあこがれる芸人さんが多い中、僕にはラジオに関する思い出が全然ない」

 そんな升野さんだが、ここ数年はラジオをやりたいという思いが膨れ上がっていたようだ。

「ダラダラとしゃべって、ただ面白いっていう場が欲しかったんです。昔は、友達や芸人仲間と一晩中ファミレスでしゃべって、そういう場で新しいアイデアやネタが生まれてきました。でも、友達の結婚や芸人仲間の引退などで、そういう時間が減ってしまいました。それでラジオをやればいいんじゃないかと思ったんです。実際に始まったら、スタジオに行って、思ったことをしゃべって、リスナーからの投稿を読んで、ひたすら笑って……という夢のような時間でした。テレビでのトークは、時間を計算して、オチも用意していますけど、ラジオでは何のオチもなく気がついたら30分しゃべっていたりします。当初思い描いていたファミレスの雰囲気が手に入りました。いまラジオは仕事だとは思ってません。ずっと続けていきたいです」

 今作がヒットし、それに触発されてエロリズム論のコーナー人気がさらに沸騰する可能性は高い。第2弾、第3弾と本がシリーズ化する可能性もある。

「繰り返しになりますが、エロリズム論の運命はリスナーたちに懸かっています。投稿のクオリティが落ちてきたら僕はなんの躊躇もなくコーナーをやめると思うんです。もし仮に出版の話が出ても、集まっているネタに納得できなかったらOKは出しません。面白くないものを世に出すということは、企画にゴーサインを出したバカリズム・升野のセンスが疑われることになるわけですから、そこは厳しくいきます。リスナーにとって、ラジオ番組のコーナーは大喜利だと思うんですね。おかげさまで、僕はテレビの大喜利番組でそれなりに結果を出せているので(笑)、いろんな面で多少は厳しい態度で臨んでいいはず。いまのスタンスでラジオを続けるためには、僕自身がお笑いで結果を出し続けなければいけませんね。でも、何はともあれ、この本が面白いのはリスナーの力。続編が出るかどうかもリスナーのみんな次第です」

取材・文=澤井 一 写真=川口宗道

 

紙『バカリズムのエロリズム論』

バカリズム ポプラ文庫 560円(税別)

ニッポン放送『バカリズムのオールナイトニッポンGOLD』(毎週月曜22時〜)内の、男性が抱くエロに関する実感や妄想を格言風のフレーズで表現していく人気コーナー「エロリズム論」で紹介されたネタを厳選し約200編収載。ネタに添えられたバカリズムのコメントも秀逸で、男性はネタに共感し、女性は男心を知ることができる!?