糖質制限しながら“かさまし”する「ボリュメトリクス食」とは? 『Tarzan』編集長に聞いた!【後編】

暮らし

更新日:2017/12/6

大田原透編集長(銀座にあるマガジンハウス編集部にて)

――2017年10月26日発売の『Tarzan』はボリュメトリクスを特集するそうですが、今なぜボリュメトリクスを?

大田原編集長(以下、大田原) 「ボリュメトリクス」はペンシルベニア大学の先生が考案したダイエット法で、お腹いっぱい食べながら痩せる効果が出るところが特徴です。特集号では、日本人向けにアレンジした導入方法として、一日一食は500kcal以下の「ボリュメトリクス」でコントロールしたメニューにして、あとの2食も「ボリュメトリクス」を意識したメニューに変えるだけで効果が期待できる内容を提案しました。日本では、徳島大学の奥村仙示先生が日本版の「ボリュメトリクス」についてエビデンスをとっていてランチメニューなども考案しているので、奥村先生にも話を伺っています。

「ボリュメトリクス」というと難しく聞こえますが、ひとことで言うと“かさまし食”です。専門家が考案した、出汁やスープなども上手に組み合わせた栄養バランスのいい食事ですね。人間は年齢によって味覚が変わるらしいので、それに合わせた調味法も取り入れ、運動している人のメニューはたんぱく質を多めにするなど、タイプや年齢に合わせた導入方法も紹介しています。「ボリュメトリクス」には糖質制限を含むことも不可能ではないと思います。なので、『Tarzan』の読者のように運動もしている人は、お腹いっぱい食べたい人が多いのでオススメですよ。

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■筋肉の“インスタ映え”が筋トレブームに火をつけた?

――グッチやヴィトンが痩せすぎのモデルを起用しないと宣言したように、近年はただ痩せるだけのダイエットではなく、筋肉もしっかりついた健康的なボディラインへの関心が高まっています。

大田原 他誌の話になりますけど、12月号の『美ST』の特集は「美人は、筋肉」ですからね。女性も、ただ痩せるだけでなく適度に筋肉がついている健康的な美しさに対する関心が高まっているのは事実です。トレーナーのAYAさんもすごく人気ですしね。

 あと、インスタ映えするのも筋トレがブームになっている理由のひとつだと思います。海外旅行や特別なパーティや料理は、誰でもすぐに真似できないからインスタ映えするのと同じで、体を鍛えている自分をインスタ映えさせる人が増えたこともブームを後押ししているんでしょうね。

 理由はともあれ、男性も女性も運動や健康への関心が高まっているのは素晴らしいことです。運動を生活習慣として続けているかいないかで、5年後、10年後に大きな差が出てきますから、勉強と同じで運動も、いつはじめても遅いということはないですからね。それに体のことって、最初からすべて理解していなくても、やっているうちに必ず気づきがありますから。そういう風に自分の体のことを意識しながら生活することが、実はとても大切なんですよね。

■「あ、ブラジャーつけてる!」って指をさされることも…!?

――ランニングも自転車もブームを超えて定着しました。日本人の健康志向がかなり高まってきていることは、実感としてありますか?

大田原 それはすごく感じますね。健康に配慮した食事や運動を日常習慣として身につけている人が増えているのは実感としてあります。素晴らしいことですよね。休日ランニングしている人もすごく増えましたし。20年前は休日に走ってると、近所から奇異な目で見られましたし、自転車に乗ってると「競輪やる人なんですか?」って言われてましたけど、今はもう珍しくもなんともないですから。昔は、胸にハートレートモニターのトランスミッターベルトつけて走ってると、「あ、ブラジャーつけてる!」って言われて指さされましたからね(笑)。

 フィットネスが確実に市民権を得てレベルもあがってきていますし、競技としてのスポーツではなく、人生を豊かにするためのフィットネスが定着してきているというのは確かにあります。『Tarzan』が創刊したのは31年前ですけど、フィットネスなんていう言葉はまだ全然浸透していませんでしたからね。ティップネスができたのが30年前ぐらいで、ほぼ同じ時期ですから、この30年間で日本人の多くが健康の価値を見直すようになり、平均寿命が延びて健康に投資することが特別ではなくなってきた。日本には皆保険としての国民健康保険があるために、制度に甘んじてそこに対する意識が低かったわけですけど、健康寿命の延伸も叫ばれており、自分の健康は自分で守らないといけない時代になっているのもあります。

■100キロマラソンにも挑戦する編集長は、何に気をつけているのか?

――大田原編集長の食生活や運動の習慣について教えてください。

大田原 僕自身は、運動するために必要な食事に気を使っています。失敗もたくさんしてきましたよ。食事の調整不足でパフォーマンスが落ちたりすることはよくあります。私の場合、体重は68キロが、フルマラソンを走るときのパフォーマンスは高まりますね。68キロ下になると痩せすぎで、100キロマラソンを走るともたないので。自分の筋肉量とか脂肪率のベストコンディションはある程度、把握していますけど、いろんなスポーツをやっているので、レースに出るときはそれぞれに合ったコンディションを保つようにはしています。

――たとえば、どんなスポーツを?

大田原 ランニングは、フルマラソン、トレイルランニング、ウルトラマラソンと、毎年それぞれ大会やイベントには数本ずつ出ています。仕事絡みで出場することもあって、たとえば今年11月は大阪マラソン、ニューヨークシティマラソンにも出ます。自転車はロードバイクもマウンテンバイクも年に1回は出るようにしています。あとは趣味的にスノーボードもやりますしキャンプも好きですし、山登りもやります。この前、南アルプスに登りましたけど、2日で1万キロカロリーぐらい消費するほど体力使いますから、ダイエットどころかしっかり食べないと持ちません。加えて、体幹を固めて、体も心も負けないように折れないように準備してから臨みます。

――レースで何位以内に入るとか目標もあるんですか?

大田原 いやいや、若くもないただの会社員ですからそこまでないですし、できないですよ。レースに出られただけで号泣してますもん。全然タイムは出なくても、「ここまで来て走れたことがよかった。忙しいなかでも準備してきてよかったな」って思うと泣けてきて。

――スポーツ好きの大田原編集長にとって、これ以上の仕事はないですよね。趣味と実益を兼ねていて。

大田原 僕は今年で『Tarzan』に25年、編集長は10年目で、この仕事は本当に楽しくやらせていただいています。でなければ、バチがあたりますよ(笑)。でも編集者って、趣味となる対象を仕事とする職業でもありますよね。だからこそ、やっているうちに取材対象にハマるじゃないですか。好きになっていく才能も問われるから、たまたま長くこの編集部にいてものすごく好きになってしまっただけではありますが、今から別の雑誌の編集長をやれと言われても頑張りますよ。「本当に僕でいいんですか?」と確認はしますけどね(笑)。

取材・文=樺山美夏

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