鈴木おさむ「この映画を観てつらくなるのは、男のほうだと思う(笑)」

あの人と本の話 and more

2018/4/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『ラブ×ドック』の監督・脚本を手掛けた、鈴木おさむさん。『かくかくしかじか』を読んだ鈴木さんの胸をよぎった思いとは?

鈴木おさむさん
鈴木おさむ
すずき・おさむ●1972年、千葉県出身。放送作家としてバラエティ番組の構成を手掛けるほか、映画、ドラマの脚本、舞台の作・演出、小説の執筆など幅広く活躍。妻・大島美幸との結婚生活をつづる「ブスの瞳に恋してる」シリーズ、『新企画〜渾身の企画と発想の手の内すべて見せます〜』など著書多数。

鈴木さんの初監督映画となる『ラブ×ドック』。脚本の執筆スタイルは、これまで手掛けてきたものとは違っていたのだという。

「1日1時間と決めて、毎日書き進めていきました。だいたい1時間でワンシーン書けるので、恋愛をスケッチ的に描いていったんですが、その執筆スタイルはこの物語にすごく合っていましたね」

恋に仕事に友情に惑うアラフォー女性・飛鳥を演じた吉田羊さんには、監督として「こうしてほしい」と言うことはほとんどなかったという。

「最初の設定を話して、あとは羊さんの思うように演じてもらいました。そこに間違いはないと思っていたし、実際すばらしい演技をしてくださいました」

大きな見どころになるのが、飛鳥と3人の男性とのキスシーン。年上のズルい既婚者(吉田鋼太郎)、同世代のオレ様(玉木宏)、ピュアな年下男子(野村周平)……それぞれとの、全く異なるタイプのキスが描かれる。

「なんだったら、ツッコミを入れながら観てもらえれば(笑)。傍で見ていたら爆笑してしまうような行為も、当事者にとってはすごくロマンティックだったりする。それをデフォルメして、3者3様のキスを描きました」

アラサー、アラフォー女性の心に刺さるエピソードが満載だが、鈴木さんいわく「胸が痛くなるのは、男の人のほうだと思う」。

「特に不倫のエピソードなんかは、男がしていることの“ネタばらし”でもあるんです(笑)。なので、もし女性と一緒に観たら、超気まずいと思いますよ」

今回鈴木さんが選んだ本、マンガ家・東村アキコの自伝『かくかくしかじか』は、仕事仲間でもある東村さん本人から「大事にしている物語なのでぜひ読んでほしい」と言われて読み、衝撃を受けたのだという。

「普段はどうしても何かを作っている人間として本を読んでしまうところがあるんですよ。でもこの作品を読んでいる間は、こういうものを作りたいとか、何も思わなかった。そんなことを忘れさせてくれるパワーがありました」 

恩師に深い感謝と敬意を抱きつつも、忙しさに紛れて不義理をしてしまう「アキコ」に、自分を重ねながら読んだという。

「僕にも本当は自分からお礼を言いにいかないといけないのに、言えないままの人がいます。人づてに『あの人がお前の話をしてたぞ』なんて聞かされるたびに胸が痛くなる。恩師じゃなくても、忙しくて昔の友だちと連絡をとらなくなってしまったりすることもありますよね。あのくだりは、どんな人も……とくに田舎から出てきた人なら、きっと思い当たることだと思います」

(取材・文:門倉紫麻 写真:干川 修)

 

映画『ラブ×ドック』

映画『ラブ×ドック』

脚本・監督:鈴木おさむ 出演:吉田 羊、野村周平、大久保佳代子、成田 凌/広末涼子、吉田鋼太郎(特別出演)/玉木 宏 配給:アスミック・エース 5月11日(金)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー 
●30代半ばを過ぎて、結婚を意識していた男に振られ、計算通りだった人生が狂い始めたパティシエの飛鳥(吉田羊)。彼女が訪れたのは、遺伝子検査で恋愛を診断すると謳うクリニック「ラブドック」だった――。3つの恋が観る者の恋愛の記憶を刺激する。女友達(大久保佳代子)との関係にも注目。
(c)2018『ラブ×ドック』製作委員会