TVアニメ『ダンまちⅡ』キャストインタビュー④:千菅春香(サンジョウノ・春姫役)編

マンガ・アニメ

2019/8/10

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅡ』 毎週金曜24時30分より、TOKYO MXほかにて放送中 (C)大森藤ノ・SBクリエイティブ/ダンまち2製作委員会

 TVアニメ『ダンまちⅡ』において、サンジョウノ・春姫は物語を大きく動かす存在だ。遊郭に身を置く彼女の運命は、冒険者ベル・クラネルとの出会いにより変化していく。ビジュアルからも伝わる通り、春姫は奥ゆかしく、繊細で、儚さを感じさせるキャラクターだが、内面には自らの運命を切り開きたいと願う情熱を秘めており、その二面性こそが春姫の魅力である。そんな春姫を演じるのは、声優・千菅春香。2期目から『ダンまち』に参加した彼女の目に、春姫のパーソナリティは、『ダンまち』ならではの熱い制作現場の風景は、どのように映っているのだろうか。

春姫は、「未来に行きたい」っていう気持ちがすごく強い

――『ダンまち』に参加することが決まったとき、どんなことを感じましたか。

千菅:皆さんがこれまでに積み上げてきたものがある中に、2期目から入るのは緊張するなって思いました。でも、参加するにあたって、1期目を観たときに、ほんとにワクワクして勇気をもらえる王道の冒険ストーリーだったので、ドキドキとワクワクが両方あった感じです。

――『ダンまち』自体には、もともとどういうイメージを持ってたんですか。

千菅:すごく素敵なキャストさんがたくさん出ていらっしゃって、キャラクターも魅力的なので、キャラクターとキャストさんのバディ感があるなっていうイメージがありました。

――千菅さんが演じる春姫は、『ダンまちⅡ』の物語を大きく動かす存在であって、とても演じ甲斐のあるキャラクターだと思うんですけど、春姫としての最初の収録にはどんな心持ちで臨みましたか。

千菅:自分の中で春姫のイメージは持ちつつも、やっぱりキャラクター同士の関係性がこの作品の見所だし、行ってみないとわからないところもあるので、緊張しながら現場に行きました。実際に、アフレコブースの雰囲気は想像の何倍も熱量が高くて、「これが『ダンまち』を作っているブースの中なんだあ」って思いました(笑)。

――(笑)特に、どういうところで想像を超える熱量を感じたんでしょう。

千菅:やっぱり松岡(禎丞)さんが)座長で、ブースの中でも「ベルくんの物語なんだな」って思って。松岡さんのまっすぐなお芝居を見て、特にそう感じました。

――春姫は、ビジュアルや言葉遣いを見たときに受け取る印象がわりと共通しやすいキャラクターだと思うんですけど、千菅さんは彼女についてどう感じたか、それと春姫を演じているからこそ感じる、表には出ていない春姫のパーソナリティについて教えてもらえますか。

千菅:初めて春姫に出会ったときは、ビジュアルだったり、仕草や話すときの語尾に奥ゆかしさをすごく感じて。麗しい狐人(ルナール)の少女のイメージがあったんですけど、彼女と接していくと、まっすぐなエネルギーというか――ベルくんが持ってる少年性に対する少女性、まっすぐで希望に満ちたものの見方をするところが、強く見えてきました。ただ、その部分は、ベルくんと出会った段階ではしまわれちゃっているので、その扉を開けてもらうのかなって、やりながら思っていました。

――役者の方に話を聞くと、大きく分けてふたつのタイプの方がいるな、と思っていて。ひとつは、役を自分に降ろすタイプ。もう一方は、技術を駆使して、自分の中の引き出しからそのキャラクターに当てはめていくタイプ。千菅さんの春姫へのアプローチは、どういうものなんでしょうか。

千菅:春姫には、ベルくんと通ずるまっすぐで溌剌とした内面があると思います。でも、見た目は奥ゆかしくて繊細なキャラクターなので、いつ、どちらを出すのか。繊細さを出すことと、パッションを出すこと、そのバランスを舵切りしながらやれていたら、理想的だなって思います。

――春姫を演じながら、その舵切りができている感覚はありますか?

千菅:とても難しいですが、試行錯誤していくうちにバランスが掴めてきた気がします。春姫らしさと春姫の心持ち、どちらも観てる方にちゃんと伝わるようにするにはどうしたらいいのか、という目で、春姫のセリフを見るようになりました。わたし自身、等身大みたいな役が多かったんですけど、春姫はそうではないので、やりがいがあります。

――春姫を演じるときに、千菅さんの中で軸に設定していることを言葉にしてもらうと?

千菅:ひとつは品のよさで、もうひとつが「未来を見たい」っていう気持ちです。春姫にも欲があって――「未来に行きたい」っていう気持ちがすごく強い人だなって思います。それは、見た目はふさぎ込んでいても奥にあって、内面の核みたいな感じがします。でも、外から見える春姫には品があるので、叫んだりいろんな言葉で表現するときにも、品がある感じは守りたいなって思います。それと、春姫は未来に期待したいタイプだからこそ、自分から「諦める」っていう言葉をよく口に出すんだろうな、と思っていて。思っていることと逆のことを言う、逆の方向に自分を向かわせて気持ちを収めようとする、みたいなところがあると思います。

――原作を読んでいる方には伝わると思うんですけど、春姫が感情を爆発させるシーンがあるじゃないですか。常に穏やかで、丁寧で、品がある春姫の本質が見えるシーンだと思うんですけど、そのシーンを演じたときにどんなことを感じましたか。

千菅:春姫の本当の姿が表面に出るシーンだなって思ったので、普段は奥ゆかしくしている意識の逆というか、一個タガが外れるというか――彼女が自分で自分に課してる春姫らしさを取るんですけど、「意識していよう」って思ったものが外れる瞬間って、エモーショナルだなあって思いました(笑)。

みんなで作った絆のある空気の中にいるだけで、心がチャージされる

――『ダンまち』はTVアニメに加えて今年は劇場版も公開されている作品で、もうひとつキャストの皆さんがよく口にするのは、ゲーム(『ダンまち~メモリア・フレーゼ~』)のセリフ量がとにかく膨大である、という話で。たくさんの言葉と向き合ってきただけに、それぞれが役に対して哲学を持ってる感じがするんですけど、収録中にそれを感じることはありますか。

千菅:やっぱり、そのキャラクターのポリシーや美学みたいなものが、皆さんのセリフに乗っているところが、『ダンまち』がたくさんの人の心に響く理由なんだろうなって感じます。言葉にするのは難しいですけど、何か問題が起きたり、何かに立ち向かっていくときの皆さんのセリフには、正義感や優しさやリーダーシップが乗っているし、そういうものがキャラクターごとにはっきりとあって。だから、アフレコで皆さんのセリフを聞いていると、「説得力があるな」って思います。

――彼らにとっても、役と向き合っていくうちに、自分の奥底にある何かがキャラクターに引き出されていってる側面があるのかもしれないですね。

千菅:そうかもしれないです。

――春姫を演じていて、そういうことを感じる瞬間はありますか。

千菅:春姫を象徴するキーワードは「希望」だなって感じていて、それを頭でわかったつもりでアフレコに臨んでいるんですけど、取り組んでいく中で、自分にそれがどんどん入っていく感じがあります。

――春姫を演じていて、ポジティブな感情が湧き上がってくる感じはあると思うんですけど、春姫のパーソナリティは、千菅さんが過ごす日常にも影響を与えていたりしますか。

千菅:そうですね。わたし自身も、希望を感じたい、希望に向かっていきたい春姫にはすごく共感できるところがあるので、春姫を演じることで、そういう自分を自覚することはあります。

――「わかるなあ」「こういうところ、自分にもあるなあ」みたいな。

千菅:「わかるなあ」は多いですね。オラリオにはいろんな種族がいますけど、キャラクターの心の機微や葛藤というところで、少年少女の「こういうこと、あるよね」っていう部分が描かれていることが多いので、そこが『ダンまち』を夢中で観ちゃうポイントなんだろうなって思います。

――『ダンまち』はすごくチーム感がある現場だし、いい作品を作るためにみんなで同じ方向に向かっている作品、という印象があるんですけど、『ダンまち』の現場ならではの特別な感覚はありますか。

千菅:そうですね。皆さんの絆がすごく強いんだなって感じます。皆さんが自然体で、空気感がファミリーっぽいというか、それぞれの呼吸感を知ってることを、休憩時間にも感じたりしますね。

――その場所を経験することで、千菅さん自身にはどんな変化が起きていると思いますか。

千菅:『ダンまち』の現場にはすごく素敵な空気感があって、ひとりでは絶対に作り出せない空気の中にいさせてもらってるので、みんなで作った絆のある空気の中にいるだけで、心がチャージされるような作用があるなって思います。

――だとすると、『Ⅱ』の収録が終わってしまったら、ものすごく寂しいでしょうね。

千菅:寂しくなると思います。物語的にはすごく濃密なんですけど、始まってしまえばほんとにあっという間で。いつか、皆さんとまた掛け合える機会があったらいいなあ、と思います。

――ちなみに、千菅さん自身がオラリオにいるとしたら、どんな冒険者になりたいですか。

千菅:わたしはほんとに小心者なので、せっせと素材クエストばかりやってそうです。モンスターはちょっと怖いけど、ちっこいラビットとかをどれだけ素早くやれるか、みたいな(笑)。下層は怖いので、確実に行ける階層で、その中でのパフォーマンスをどれだけ上げられるか――テトリスのやり込みみたいな感じになると思います。って、冒険者向きではないですね(笑)。

――(笑)『ダンまちⅡ』で春姫を担当したことで、ひとりの演じ手として発見できたこと、成長できたことは何だと思いますか。

千菅:『ダンまちⅡ』のアフレコに参加して強く感じたのは、キャストの皆さんがご自身の役に対して、本当に責任を持ってキャラクターを演じている、ということでした。その中に入らせてもらって、本番のアフレコで盛り上がっていくもの、出てくるものもいっぱいあるんですけど、その前段階で、「ひとりでやれることはもっとたくさんあるな」っていう気づきもあって。結束力があって、チームとしてのエネルギーもあるからこそ、そこに入ってみたことで、準備できることもいっぱいあるんだって気づきになったのは、自分の中で大きな収穫でした。作品を作っていく楽しさが、自分の中で広がった気がします。

取材・文=清水大輔

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