公開直前! みんなで語ろう、映画『このすば』⑤――カズマ役・福島潤編

マンガ・アニメ

2019/8/29

『映画 この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説』 8月30日(金)公開 (C)2019 暁なつめ・三嶋くろね/KADOKAWA/映画このすば製作委員会

『この素晴らしい世界に祝福を!』(以下『このすば』)が、映画になって帰ってきた! 8月30日(金)の公開に先駆けて、ダ・ヴィンチニュースではメインキャスト5名に登場してもらい、それぞれの視点で『このすば』への愛をディープに、熱く語り倒すインタビューを敢行! 原作小説は累計発行部数が850万部を突破し、アニメも絶好調。キャスト・スタッフが一丸となって生み出す、最高に笑えて、観ていていつの間にか元気が出てしまう『このすば』はなぜ素晴らしいのか、徹底的に迫ってみたい。

 特集のトリを飾るのは、主人公・カズマ役の福島潤にご登場いただいた。福島が演じるカズマの鋭いツッコミと巧みな掛け合いは本作の最大の魅力となっている。今や「劇団」というくらいの結束を見せているキャスト陣をまとめる座長として活躍する彼に、TVアニメ1期のオーディションから、2期を迎えたときの心情、そして今回の映画初主演を務めるプレッシャーについてじっくりと伺った。

僕はカズマなのか(笑)? 僕は知らないうちに転生していたのかもしれません

――今回は『このすば』のメインキャストの皆さんに映画『この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説』のお話をじっくりと伺っています。

福島:みんなたくさん話しているみたいですね。でも、『このすば』でそんなに話すことあるかなあ(笑)。僕はもう『このすば』は当たり前になりつつあって、日常なんですよね。

――そんな日常になりつつある『このすば』が、映画版として制作が決まったときは、どんな気持ちでしたか?

福島:暁(なつめ)先生やKADOKAWAさんには申し訳ないのですが「『このすば』が? 『このすば』が映画になっていいんですか?」と思いましたね(笑)。僕は、『このすば』のことを日常がメインの作品だと思っていたので、大きな作品になったなと。最初は楽しい作品にするために「みんなで好きなこと、面白いことをどんどんやっていこう」という想いで臨んでいた作品が、いつの間にか多くの人を巻き込んで、笑いを共有できて。映画までたどり着けたことは「奇跡」だと思っています。このメンバーで「奇跡」を起こしたぞ、と。その瞬間に立ち会えたことが嬉しかったですね。

――TVアニメ1期のときは、ここまで長く続くシリーズになるイメージをお持ちでしたか。

福島:TVアニメ1期は全10話ですが「やりたいことを全部やりきろう」という思いでやっていたんです。オンエア前の評判もおとなしかったですし……。

――『このすば』のアニメは、オンエア前はそれほど大きな話題にはなっていなかったそうですね。

福島:そうなんです。でも全10話と短い中ではありますが、キャスト陣が仲間として、家族として、いまでは「劇団」と呼んでいますが、それぞれが信頼できる関係になれたのは嬉しいことでした。しかも、まさか2期があるなんて……。2期が決まったときには、これほどびっくりすることはないだろうと思うくらい驚きました。

――今回は、それが映画にまでつながったわけですね。

福島:僕にとっては生まれて初めての映画主演になるので……、そういう意味でも感慨が深いですし、初めての主演が『このすば』でよかったな、と。このキャスト陣といっしょにやれてよかった、という喜びもありますね。

――そもそもTVアニメ1期のときに「やりたいことを全部やりきろう」と思ったのは、何がきっかけだったんですか?

福島:そう思ったのは、オーディションのセリフとか、キャラ設定を見たときですね。「ああ、これはぜひともやりたい作品」と。それでオーディションのときから全部をぶつけていたんです。だから、収録が始まってもカズマに対するイメージがブレることはなかったですし、初めて出会ったときの印象のまま、今日まで来ることができました。よほどシンクロ率が高かったのか、よほどカズマの言葉を自分の身近に感じているのか。もしくは……僕はカズマなのか(笑)?

――福島さんはカズマだった!?

福島:僕はいつの間にか転生してしまったのかもしれない(笑)。……と、思うときがありますね。今回の収録は、カズマと同じジャージ姿で臨ませていただきました。

――カズマは劇中ではクズマ、ゲスマ、カスマといろいろ言われているわけですが、福島さんはそこについてどう思いますか?

福島:僕としてはそう思われるのは心外なんですよ(笑)。僕はクズをやっているわけでも、ゲスをやっているわけでも、カスをやっているわけでもないですから。ああいう人たちと出会ったら、そりゃこうなるだろ、と。きっと、みんなが感じるだろう言葉を、僕(カズマ)が代弁しているっていう。ごく当たり前のことです。一片の曇りもなく、フザケンナヨ! と思ってます(笑)。

――ははは。カズマの言動が生っぽいのは、みんなの気持ちを代弁しているからなんですね。

福島:クズとかカスとかゲスとか言われてますけど、むしろ「よく言った!」と称えてもらいたいくらいです。みんなの心の中の言葉をセリフにしているんだよ、と。

――そんな生々しい気持ちをセリフにぶつける『このすば』の収録現場は、福島さんからご覧になるとどんな場所ですか?

福島:収録前にセリフの言い回しを何パターンも考えて収録現場に行くわけですが、キャストのみんなと掛け合いをしているうちに、想定とはほぼ違う、新しい言い回しになってしまうんですよね。収録前は、どんな芝居になるのか予想ができないので、まずは現場に行こう、と。みんなで掛け合いしているうちに、新しいものが生まれる現場です。

――今回の映画のアフレコにあたって、事前にどんなご準備をされましたか。

福島:収録前にリハーサルの映像をいただきまして。その映像をコマ送りで観たり、一時停止を何度も繰り返して、細かい表情や動きの回数を確認しました。全部の動きに音をつけられるように、セリフがないところはアドリブで足して。ひとつのセリフも何パターンも言い回しを考えて。そのすべてを台本に書き込んで準備しました。それだけで、ものすごく時間がかかりましたね。

――かなり綿密なご準備をされているんですね。

福島:僕は不器用なので、そこまで準備をしておかないと、ほかのキャストの芝居に対して瞬時に合わせられないんです。ほかのキャストの芝居にあわせて、結果的に全然違うものになっていく、ということだと思います。

――綿密な準備をしたうえで、アフレコでセリフの言い回しを変えていくというわけなんですね。

福島:どんな役を担当するときも、「役の魅力をどこまで引き出せるだろうか」「どこまで実際に存在できる人にしてあげられるだろうか」と考えていて。作中に描かれているリアルな「息」や「リアクション」は極力(芝居で)拾おうと考えているんです。そこからさらに踏み込んで、自分にしか入れられない「息遣い」や「リアクション」はないだろうかと探っています。『このすば』では監督(金崎貴臣)が「会話劇にしたい」「掛け合いをメインにしたい」という熱い思いを教えてくださったので、そこに力を入れていました。

――会話劇を面白くするために、細部を作り込んでいたと。

福島:アニメの会話に、ずっと違和感があったんです。「カズマ、〇〇ですね」と言われたときに「そうだな」って返事をするのは、会話としてはちょっと変だなと。名前を呼ばれたら、その名前にすぐ返事をするほうが自然ですよね。だから、「カズマ、〇〇ですね」と言われたら、カズマの呼びかけのあとに息を吸う間に「あ、なに?」と入れるようにしたんです。そのほうがよりリアルになるだろうし、より会話になるだろうと。そうすることで相手の「カズマ、〇〇ですね」という言い方も変わるかもしれない。そうやって、どんどん変化していく、より面白くなっていくんじゃないかと思ったんです。ちょっとずつ色をつけていったことで、ふくらんでいったのが『このすば』の現場なんです。

――それが会話の中に細かく差し込まれる「はい、カズマです」という、面白いリアクションにつながったわけですね。

福島:そうですねえ。「はい、カズマです」というアドリブは本編で使われると思っていなかったんです。僕は今回は座長(主演)ということもあって、テスト収録のときに現場をなごませるつもりで「はい、カズマです」と言い始めたんですね。そうすると稲田(徹)さん(冒険者ギルドの荒くれ者役)がすごく笑ってくださって。現場が明るくなって、本番収録に向かうエネルギーにつながるな、と感じていたんです。そういうこともあるから、率先してテスト収録のときはどんどんアドリブを入れていたら、いつの間にか、そのアドリブが本編の映像で使われてるぞ、と(笑)。テスト収録だけのアドリブのつもりだったのに……と。でも、こういう遊び心が『このすば』を作っていったんだな、と思いました。

――今回の映画の収録はいかがでしたか?

福島:ゲストとして今回初めて参加してくださったキャストの方々がものすごいエネルギーで、僕が本番用にとっておいたエネルギーじゃ足りなくなってしまいました。たとえば、あるモンスターに襲われるシーンは本当に怖くて(笑)、本気で逃げましたよ。そうやってマシマシでやっていたら、全然最後までエネルギーが持ちませんでした。楽しかったですし、作品にとっては素晴らしいことだなと思ったんですけど、あまりにも疲れ果てて。アフレコは2日間にわたって行ったんですけど、僕は1日目のアフレコの記憶があまりないんですよ。記憶が飛んじゃうくらい大変でした。

――映画ということで、TVアニメの収録との違いを感じるところはありましたか?

福島:実は、収録の2日間はずっと眠れなかったんですよ。1日目の収録が終わった夜は「明日、あのシーンはどうやってやろう」「もう一歩踏み込んだことはできないかな」とか、そういうことを考えちゃって。疲れ果てていたから、何も考えずに寝てしまおうと思っても、気がついたらそれを考えている。そうしているうちに朝になっていましたね。普段と変わらない『このすば』をやろう、と考えていたんだけど。やっぱり緊張していたし、映画を特別な日に感じていたんでしょうね。そういう気負いはあったんですが、作品としては長いTVアニメ、という印象があって。特別なことを、変わったことをやったら『このすば』ではないし、カズマではなくなってしまいますからね。

「『このすば』はこんなに面白い作品だったんだよ」と伝えたい

――今回の映画版のお話もお聞きしたいのですが、今回はとうとう「カズマにモテ期到来!」じゃないですか。

福島:「モテ期」って……そう思っていいんですかねえ。僕(カズマ)はヒドい目にしか遭っていないと思うんですけど(笑)。全然喜べないです。

――ドキドキするシーンもあるんじゃないかと。

福島:まあ、一瞬だけありましたね。でも、カズマですし。このメンバーですし。信じることはできなかったですね。どうせオチがあるんでしょって。そもそも「カズマにモテ期」って言葉が、すでに面白い言葉ですからね。

――ヒロインとのやり取りはいかがでしたか。

福島:3人娘(アクア、めぐみん、ダクネス)とのシーンはどれも思い出深いですね。キャストの3人(雨宮天、高橋李依、茅野愛衣)は『このすば』を高めるためのライバルでもあるので、それぞれがそれぞれの芝居に触発されて高め合っている感じがあるんですよね。みんなと年齢が離れていて、先輩と後輩という関係なのかもしれないけど、笑い合いながらも、相手の芝居を受けて、もっと面白いことをしてやる、もっと上に行ってやろうとそれぞれが腹には秘めているので。だからどんどん面白くなっているんだと思います。

――映画で注目のキャラクターはどなたですか。

福島:先ほどもお話した、とあるモンスターからの逃走劇は相当面白くなっていると思いますし、シルビアさん(魔王軍の幹部/渡辺明乃が担当)とのバトルもすごいものになっています。シルビアさんとは収録の合間に「どうする?」と言いながらも、具体的な話は一切せずに「お互いの芝居を聞きながら、やりながら作りましょう」と。セリフはあるけれど、エチュード(アドリブ劇)のような感じで。お互いの演技プランをぶつけ合うような、楽しいかけ合いができましたね。正解がわからないからこそ、決めないでやってみるという。生のコミュニケーションをとることを心がけました。二度とできない芝居になっていると思います。あまりアフレコの記憶がはっきりしていないんですけど、僕の中ではそうやって美化されています(笑)。

――先ほど、福島さんはカズマ本人なんじゃないか、というお話がありましたが、もし福島さんが『このすば』の世界に転生したら、どんなクラスに就いてみたいですか?

福島:あの世界の良いところは、みんなで協力して生活をしている「下町感」なんだと思うんですよね。街を歩いている冒険者に、みんな声を掛けますし。カズマにサキュバスのお店を紹介してくれたりしますからね。「下町」というか「長屋」的なコミュニケーションが豊かな世界なんですよ。だから、冒険なんて出たくない(笑)。とりあえず、あの世界には住んでいたら居心地がいいだろうし、本来の自分でいられそう(笑)。僕自身があの世界に行くとしたら……何かの職人になってお店を開くのも面白いのかな、なんて思います。向こうで芝居をするのも、いいかもしれませんね。芸で生きていくのも楽しそうだなと思います。そのために、良いスキルを身に着けることができるのなら……声を変えるスキルとか手に入れたいですね。いろんな声を出してみたいなあ。綺麗な声で一度しゃべってみたい!

――ははは。魔王は倒さない方向性ですね。

福島:僕はRPGが好きで、いつも魔法使いを選んでいるんです。前衛じゃなくて後衛。強い攻撃魔法をどっかんと放つタイプじゃなくて、支援魔法を仲間にかけたり、敵に弱体魔法を掛けるような、地味な作業を確実にこなすのが好きなんです。だから、冒険者になるなら、そういうクラスに就くのが良いだろうなと思います。でも、冒険すると……死ぬじゃないですか(笑)。死にたくはないなあ。なんでしょうね、『このすば』をやっていると、魔王を倒すということに何の魅力も感じなくなるんです。できるだけ、死なずに長く暮らしたいです!

――さて、映画『このすば』がいよいよ公開になります。改めて、いまはどんなお気持ちですか?

福島:汚い言葉になりますけど「ここまで来たぞ、コノヤロウ」って気持ちですね。「『このすば』のアニメ化が発表されたときに、映画化まで予想した人はいなかっただろう!?」「『このすば』はこんなに面白い作品だったんだよ!」って。ここまで多くの人に知ってもらえて良かったし、観てもらえて良かった。そして、もっと多くの人たちに、この面白さを知ってもらいたいです。

――『このすば』ロスみたいなものを味わうことはありますか?

福島:まだ公開前なんで、そういう気持ちはないですけど、TVアニメ1期のオンエアが終わったあとはロスがすごく大きかったですね。打ち上げの会場で「なんでこんな面白い作品が終わるんだー」って叫んでいたらしいです。酔っぱらっていたので、よく覚えていないんですけど(笑)。でもまあ、今回は映画まで来ましたからね。まさかこのまま終わりってことはないでしょう(笑)。ロスというよりも、期待感しかないですね。原作の小説も続いていますし。

――最後に、映画を心待ちにしている『このすば』ファンのみなさんに、どんなふうにこの作品を楽しんでほしいと思っていますか?

福島:映像的にはバトルも見どころがあります。TVアニメ1期、2期と最終話の戦闘シーンは主題歌が流れて、すごく盛り上がったと思いますが、今回は映画ですからね。今回はどんな盛り上がりになるだろうと。ある意味で、貴重なシリアスシーンになっていると思いますので、そこを楽しんでいただきたいです。

『映画 この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説』公式サイト

取材・文=志田英邦