カップルであり、親友であり。『ホリミヤ』生徒会メンバーの甘くてほろ苦い日常──岡本信彦×M・A・O×近藤玲奈 鼎談

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更新日:2021/1/26

ホリミヤ
TVアニメ『ホリミヤ』 TOKYO MXほかにて毎週土曜24:30より放送中 (C)HERO・萩原ダイスケ/SQUARE ENIX・「ホリミヤ」製作委員会

 現在放送中の、TVアニメ『ホリミヤ』。原作マンガの『ホリミヤ』は、WEBコミック『堀さんと宮村くん』から作画を新たにリメイクされた作品だ。メインキャラクターの堀と宮村を中心に、魅力的な登場人物たちの掛け合いと青春模様が楽しい映像作品に仕上がっている。ぜひ、たくさんの方に、この作品に触れてほしいと思う。ダ・ヴィンチニュースでは、先行して配信したコミック『ホリミヤ』の試し読み&原作者対談に続き、メインキャストたちの対談・座談会や監督の言葉を通して、TVアニメ『ホリミヤ』の楽しさをお届けしていきたい。

 キャスト企画の第3回には、生徒会メンバーを演じる3人が登場。仙石 翔役の岡本信彦、綾崎レミ役のM・A・O、河野桜役の近藤玲奈が、役柄に対する三者三様のアプローチを語ってくれた。さらに、自身の高校時代を振り返るトークでは、大喜利のような迷回答を連発……!?

仙石よりも、レミのほうが大人っぽい。ふたりのシーンでは、いざなわれている感じがありました(岡本)

──原作を読んだ時に感じた『ホリミヤ』の第一印象を教えてください。

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岡本:キャラクター同士のやりとりが、ドラマチックというよりはどこかで実際に起きていそうな空気感だなと思いました。淡い雰囲気なので、この作品がアニメ化されたらどうなるのかな、と。仙石役に決まってからは、あらためて自分がお芝居をする時のイメージをしながら、原作をしっかり読みました。

M・A・O:線が柔らかくて優しいタッチの画柄だと感じました。それでいて、ギャグもふんだんに盛り込まれているので、とても楽しく読ませていただきました。単行本の表紙に描かれたキャラクターの色彩も、意外性があって興味深かったです。

岡本:マンガを読んでいる時と、またイメージが変わるよね。

M・A・O:「あ、こういう髪色なんだ!」という意外な印象を受けたキャラクターもいました。アニメになり、みんながカラフルな学校生活を送っている姿を見るのはとても楽しみでしたね。

近藤:私が初めて『ホリミヤ』を読んだのは、高校生のときなんです。友達とマンガの貸し借りをしていたところ、友達が貸してくれたのが『ホリミヤ』でした。その時からすごくハマり、大好きな作品でした。「ザ・恋愛マンガ!」というよりは、ギャグも交えてあるので親しみやすいんですよね。キャラクターひとりひとりの個性が深いところまで掘り下げられていて、キャラクターに愛着を持ちやすい作品だなと思いました。普通にいちファンとして「アニメ化しないかな」と思っていたので、自分が出演させていただけるなんてびっくりしましたし、すごくうれしかったです。

──ご自身が演じる役柄に対する印象は?

岡本:僕が演じる仙石は、最初は「あれ? 悪いヤツなのかな」っていう登場の仕方なんです。初登場の時はクールぶっていますし、堀さんと宮村くんの敵対勢力みたいな雰囲気で出てくるので。最終的には宮村くんたちの仲間として溶け込んでいきますし、クールじゃないこともすぐわかるんですけど(笑)。仙石は男としての理想像を抱いているけど、その目標になかなか近づけない。そこがかわいいキャラなのかなと思います。

M・A・O:レミちゃんも、第一印象では「自分のことをかわいいとわかっていて、それを武器にしている女の子かもしれない」と疑いましたが、すぐに「違うぞ、これは。本当にかわいいだけだ」と思い直しました(笑)。アニメで演じさせていただく時は、あざとくならないように気を付けています。「私、かわいいでしょ?」ではなく、普通に振る舞っているけれどまわりからは「かわいいよね」と言われるのがレミちゃんで、天然ものなんですよね(笑)。

──確かに生徒会メンバーの中でも、仙石会長とレミは悪役のような登場の仕方をしますよね。

岡本:レミに関しては、わざと堀さんに意地悪を仕掛けたようにも見えますよね。実際のところは、普通にレミが勘違いしただけなんですけど。

──そんなふたりのストッパーとも言えるのが桜です。

近藤:生徒会メンバーの中では、落ち着いていますよね。大人っぽくてクールで淡々とした雰囲気に見える女の子です。でも、石川と出会ってから、自分の中に新しい気持ちが芽生えはじめて。それまでは感情をあまり出していませんでしたが、思いがあふれて抑えきれなくなって、レミと少し衝突することも。それでも、自分の気持ちに正直になろうとする姿が、健気で純粋な少女だなと思いました。少しずつ笑顔を見せるようになるところが、かわいいんですよね。

──3人の中で、一番変化が大きいのが桜なのかなという印象を受けました。

近藤:『ホリミヤ』の中では、王道の恋愛ストーリーを展開する子ですよね。そこまで大きく変わるわけではありませんが、ストーリーが進んでいき、ふと振り返ると「あ、変わったな」という印象を受けます。

──役柄を演じるにあたって大切にしたポイントは?

岡本:仙石は、男らしさやクールさです。大人びた印象を与えようと、背伸びをしている感じ。でも、たいていはすぐにメッキがはがれるんですけど(笑)。もっとも重視したのは、レミとのシーンの空気感。原作の空気感がとても淡くて素晴らしかったですし、アニメもけっこう長めに間(ま)が作られていたので、それをどう活かそうかな、と。次の言葉を考えているような言い淀みの間、どう言おうか考えている間にしようと考えました。

──間って難しそうですね。仙石だけでなく、レミの間もありそうですし。

岡本:仙石と比べると、レミのほうが大人っぽいんです。

M・A・O:そうですね。

岡本:仙石の言葉を待っていてくれる、みたいな。レミにいざなわれている感じはありました。

──レミの役作りはいかがでしたか? 先ほど「あざとくならないように」というお話もありましたが。

M・A・O:レミちゃんはしっかりと人を見て、考えて話す女の子です。特に一対一で話すシーンでは、考えたうえで言葉を選んでいる気がしました。例えば、吉川(由紀)ちゃんとのやりとりがそうです。吉川ちゃんの性格、彼女との距離感、話題に上がっている第三者など、いろいろな関係性を踏まえて話しているんだろうなと感じました。みんなではしゃいでいる時は元気で明るい女の子ですが、一対一のシーンでは相手のことを考えて言葉を選ぶ。その違いを意識しました。

──桜はいかがでしょう。

近藤:『ホリミヤ』はひとりひとりキャラクターが立っているので、桜ちゃんはどこを魅力にするとキャラが立つかなと考えました。私は素直さや純粋さが桜ちゃんの魅力だと感じたので、そこは意識して演じました。それに、桜ちゃんってモノローグが多いんです。あまり自己主張するタイプではなく、みんなと話している時も意見を表に出さないので。その分、心の中ではいろんなことを考えていて、感情も豊かです。モノローグとセリフで差をつけることで、表には出さない一面を意識しました。だけど、だんだん隠せなくなって、気持ちがあふれだしてしまう。ボルテージを上げていき、思いがこぼれきったなという感じを作っていきました。

──ピークはどこでしたか?

近藤:レミと少し衝突するところです。モノローグで気持ちが上がってきて、「やっぱりレミは親友だ」と思い、走っていって自分の思いを素直に伝える。その場面を起点にして桜が変わっていくので、大きなポイントになるのかなと思いました。

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「酸いも甘いも」の“酸い”を一手に引き受けてくれたのが桜ちゃんでした(M・A・O)

──生徒会3人の関係性も面白いですよね。仙石とレミはカップルであり、レミと桜は親友であり。みなさんは、この3人の関係性をどう捉えていますか?

岡本:ファミリー感があります。仲間意識はかなり強いのかなという印象を受けました。桜に関しては、波乱の展開が待っていますけど。

近藤:そうなんですよね……。

M・A・O:「酸いも甘いも」の“酸い”を一手に引き受けてくれましたよね(笑)。

岡本:だからこそ、3人で支え合っている感じが出たのかも。

──仙石会長としては、桜をどのように支えたのでしょう。

岡本:普段、桜に支えてもらっているからこそ、仙石から出てきた言葉もあると思います。その場限りの慰めというよりは、心の底から桜をいいヤツだと思っているからこそ出てくるワードが。その重みを後半で感じていただけるのかなと思います。

──レミから見た桜はどんな存在ですか?

M・A・O:ずっと一緒にいる、姉妹のような感覚です。もともと仙石くんのことを好きでしたが、「やっぱりこの人好き!」ともう一段階感情が高まったのも、仙石くんが桜ちゃんを仲間として受け入れてくれたからでした。それくらい、レミちゃんにとって桜ちゃんは心の距離が近い存在なのだろうと思います。

近藤:あらためて生徒会を俯瞰すると、仙石とレミはカップルで、桜はひとり。かわいそうな感じもしますが、演じている時は疎外感もなく、3人でいるのが自然でした。それくらい、仙石とレミの心の許容範囲が大きいということなんでしょうね。ふたりが支えてくれるから、桜は生徒会にいるべきだと思えましたし、レミが親友で良かったなと思います。桜は大人っぽいようでまだ幼い部分もあるのですが、レミは大人なので何があっても恐れない精神を持っているんですよね。桜が不安定な時はそばで見守ってくれますし、心から信頼できる存在です。

 レミだけでなく、仙石にも支えられていると思います。岡本さんがおっしゃっていたように、仙石が日頃から桜に支えられていたからこそ、桜が大変な時にかけてほしい言葉をかけてあげられた。桜にも、その言葉が本当に刺さるんですよね。ふたりに支えられているんだなと思いました。

──仙石とレミがふたりでいる時、生徒会の3人でいる時、さらにみんなと一緒にいる時の空気感、距離感の違いはどう演じ分けていますか?

岡本:男友達といる時は、たわいのない会話でバカみたいに盛り上がっています。そのリアルさは意識します。僕も学生の頃は、中身のある会話なんてひとつもしませんでしたし(笑)。逆に言えば、内容がない会話なのに楽しいのが青春、みたいなイメージです。一方、生徒会室に入ったら職務をまっとうする。成績も気にするタイプなので、きっちりするところはきっちりしています。レミと一緒のシーンは、レミにコントロールしてもらってる気がします。

M・A・O:レミちゃんの手のひらで、コロコロと転がされていますよね(笑)。

岡本:姉か妹かで言えば、レミは妹タイプだと思うんです。お姉ちゃんタイプだったら、もっと仙石を引っ張っていきそうですが、レミはそうではなくつついてわからせるという手法。言葉でつついてハッと気づかせるんです。うまくコントロールしているなと思います(笑)。

M・A・O:レミちゃんは、仙石くんや桜ちゃんと接する時と、堀さんや宮村くんを含めた時にあまり差が出ないタイプです。一対一で話す時は向き合い方が違いますが、それ以外の時はメンバーが変わっても態度が変わらないですね。

近藤:桜の場合、みんなといる時は端のほうで微笑んで、母のようにみんなの話を聞いています(笑)。生徒会のメンバーといる時は、仕事のできるしっかり者ですね。ただ、由紀との関係性は複雑なところがあります。石川をめぐって三角関係のようになった時の気まずさ、つらさがあるものの、お互いに譲れないものを持っている。この関係がどうなっていくのか、この先の展開が気になるところではないかなと思います。

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私の高校時代は“氷が溶けて水と化したジンジャーエール”。作品を通して、自分も眩しい青春を体験できました(近藤)

──メインの堀さんと宮村くんの関係についてはいかがでしょう。

岡本:これが超微炭酸系なんだなって思いました。

M・A・O:もはや、長年連れ添った夫婦のようです。

近藤:すでに甘々な関係を通り過ぎてますよね。

M・A・O:このまま「結婚します」と言われても、良い意味で驚きませんよね。

岡本:逆に「まだしてなかったの?」ぐらいの感じ(笑)。

──今、岡本さんから「超微炭酸系」という言葉が出ましたが、みなさんの高校時代はいかがでしたか?

岡本:“炭酸の抜けたコーラ”みたいな感じでしたね……。

一同:(笑)。

M・A・O:私は“お水が多めのカルピス”でした……。

岡本:薄いなー(笑)。

M・A・O:女の子同士で漫画やアニメの話をして盛り上がるという楽しい青春を過ごしてきたので、ちゃんと味はついているんです(笑)。でも、甘酸っぱさはありませんでした……。

近藤:私は例えるなら、“氷が溶けて水と化したジンジャーエール”。女子校だったので、友達と授業中にひっそりマンガを読む、何気ない日常が楽しかったです。

──みなさん、素晴らしいたとえをありがとうございます。誰ひとりとして『ホリミヤ』のような超微炭酸系でなかったこともわかりました(笑)。そんなみなさんが高校生役を演じるにあたり、当時の気持ちを思い出すために心がけたことはありますか? どのようにして超微炭酸感を出していったのでしょう。

岡本:完全に脳内で作り上げました(笑)。甘酸っぱい青春を疑似体験できるなんて、声優って本当にいい職業だなと思います。想像力で「こんな青春を送りたかった」ができる職業ですから。その一方で、学生生活って輝いて見えがちなのかなとも思いました。何でもない日々すらも、切り取れば物語になる。青春時代の眩しさをあらためて実感しました。

M・A・O:「こういう青春をアニメの中で送ることができるのはうれしいな、ありがたいな」と思いながら演じさせていただきました。キャラクターの制服姿を見たり、教室内でのたわいのない会話を聞いたり、それこそ“生徒会”というワードに触れたりするうち、懐かしく思い出されることもたくさんありました。そこで蘇った学生時代の思いも、多少は込められたかもしれません。

近藤:私も『ホリミヤ』みたいな青春とはほど遠い日々を過ごしましたけど(笑)、作品を通して自分も眩しい青春を体験したような気持ちになれました。大人から見ると「もっとラクに肩の力を抜いていいんだよ」と語りかけたくなりますが、学生の時は「やばい、課題やってない!」と何気ないことで一喜一憂していたのも事実。そういった高校生の気持ちを取り戻しながら演じました。

──では最後に、作品全体の見どころについてお聞かせください。

岡本:最初は「少女マンガなのかな?」と思っていましたが、そうひとくくりにもできない奥深い作品です。桜に関するあれこれはあっても、全体的には柔らかくて平和。学生生活を追体験したい人におすすめの作品になっています。

M・A・O:ぽかぽかと温かい気持ちにしてくれる作品だと思います。疲れている時も、悩んでいる時も、いつでも楽しめるのが『ホリミヤ』の魅力です。どのキャラクターに関してもじっくり掘り下げられているので、みんなのことを好きになっていただけたらうれしいです。

近藤:恋愛がベースになっているストーリーではありますが、クスッと笑える場面のほうが多くて癒されます。キャラクターひとりひとりのストーリーにスポットが当たっているので、それぞれの物語を楽しんでいただけたらうれしいです。後半に進むにつれて、キャラクターたちの意外な一面も見えてくるので、それも含めて超微炭酸感を味わっていただけると思います。優しい世界を、どうぞ最後まで見守ってください。

TVアニメ『ホリミヤ』公式サイト

取材・文=野本由起