Cover Model 綾野 剛 2012年10月号

Cover Model 紹介

更新日:2013/8/19

Cover Model綾野 剛

役者じゃなきゃだめなんです


 ここ数年、映画やドラマへの出演が切れ目なく続く。
10月には『新しい靴を買わなくちゃ』、11月には『その夜の侍』と
出演映画の公開が連続して控えている。
パリを舞台に3日間の恋が描かれる『新しい靴を買わなくちゃ』では、
恋人を日本に残してきたパリ在住の画家・カンゴを演じ、
妻を殺した轢き逃げ犯に復讐を誓う男を描く『その夜の侍』では、
轢き逃げ犯の友人・小林を演じている。
どちらの映画でも、画面に綾野が登場すると、
「この男」がどんな人物なのかが瞬間的に伝わってくる。
「この空間の中で、この役としてどう生きるかを大事にしたい。
だからセリフに対して『俺だったらこうは思わないな』
なんて感情は全く持たない。セリフが、絶対的な正解なんですよ。
まず受け入れて、自分の中にそのセリフを言うために必要な感情を探します」
役者という仕事に、貪欲だ。

今号の特集「いまこそ、村上春樹」にも、
『1Q84』の天吾としてグラビアに登場。
セットに入ると、ぐるぐると歩き、何かをつぶやいている。
カメラを向けられると、綾野剛はもう、天吾だった。
「今日、村上春樹さんの世界観を演じてみて思ったんですけど……
明日って、自分で作り出していくものなんですね。
明日は、向かってくるものではない。
先の見えない明日を、一秒一秒僕たちが作っていく。
前から、瞬間を生きることが大切だと思っていたんですよ。
未来のことを聞かれても、いつも何も答えられなかった。
今を生きて、明日を作ることに没頭しないと、未来は作れない。
今、今、今です。
今日の撮影でそのことがより明確になった気がします」
そんな綾野剛さんが選んだ本は——
『銃』
『銃』
中村文則 河出文庫 567円  

大学生の西川は、ある雨の日、河原で男の死体と、一丁の銃と出合う。その黒く美しい物体に魅せられ、撃ちたいという衝動にとらわれる西川だが……。新潮新人賞受賞作。「映画化されるとしたら、西川は絶対に僕が演じます」と綾野自身が強く言うように、そのたたずまいはまさに西川とぴたりと重なる。
著者・中村文則とも親交がある綾野。「この世界を、この感情を僕は知っていると思いました。おこがましい言い方ですが、自分の中にある感覚が描かれていると感じられました。中村さんと初めてお会いした時の中村さんの第一声が、『うわ……いる!』だったんです。主人公の西川が本当にいると思った、と。嬉しかったです」」(綾野剛 談)

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