テクノロジーとパフォーマンスで「学芸大青春はすげーんだよ」と常に伝え続けたい──学芸大青春ライブプロデューサー・渡辺大聖インタビュー【前編】

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更新日:2021/11/30

学芸大青春

今年8月から9月にかけて、全国4都市をめぐるツアー「Hit your City!!」を成功させたダンス&ボーカルグループ「学芸大青春」(ガクゲイダイジュネス)。念願の有観客ライブとなった同ツアーでは、「2次元と3次元を行き来する」というコンセプトどおり、CGキャラクターと生身の姿を行き来し、時には両者を融合させる演出で観客を魅了した。12月1日には2nd Album『PUMP YOU UP!!』のリリースが、2022年3月から5月にかけては4thツアーも控え、彼らの勢いはますます加速しそうだ。

ダ・ヴィンチニュースでは、そんな学芸大青春の魅力を深掘りするインタビュー特集をお届けする。トップバッターとして登場してもらったのは、学芸大青春のライブプロデュースやMV制作に携わる渡辺大聖さん。「あんさんぶるスターズ!!Starry Stage 4th」「Nulbarich ONE MAN LIVE -IN THE GRAVITY」の総合演出などを手掛けてきた彼は、学芸大青春の「テクい」ライブをどのような思いで制作しているのか。2本立てのインタビューで、ガッツリと迫ってみる。前編では、渡辺さんが感じる学芸大青春ならではのライブのあり方について、話を聞いた。

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学芸大青春と一緒に、この世界で暴れてやろうと思いました(笑)

──ライブプロデューサーとして学芸大青春のクリエイティブに関わっている渡辺さんですが、そもそも学芸大青春と出会ったきっかけを教えてください。

渡辺:当時、僕は池袋の未来型ライブ劇場 “harevutai(ハレブタイ)”の立ち上げに関わっていたんです。「未来型って何だろう」と考える中で、フォーカスを当てたのが映像技術でした。かつては事前に映像を書き出しておく「プリレンダリング」という手法が主流でしたが、今の時代はその場で映像を描画する「リアルタイムレンダリング」が当たり前になっていて。リアルタイムに描き出した映像が、音楽や照明、AR、モーションキャプチャーなどの技術と密接にひもづいた演出が次世代的ではないかと思い、そういった演出ができる劇場を作りました。

 こうした舞台でもっとも映えるのは、CGキャラクターです。そこで、劇場がオープンした時に業界関係者を招いてキャラクターもののステージを行ったんですね。以前からお付き合いのあった杉沢さん(学芸大青春プロデューサー)、村沢さん(同マネージャー)をご招待したところ、「実はこういうグループをプロデュースしていて……」と学芸大青春についてご相談いただきました。

──「CGを使ったキャラクター」と聞くとVTuberのようなキャラを思い浮かべますが、学芸大青春は2次元だけでなく3次元の姿でも活躍しています。「2次元と3次元を行き来する」というコンセプトを知った時にどう思いましたか?

渡辺:学芸大青春は、リアルとバーチャル両方の姿があるからこそ新しい時代を突き進めるだろうし、新しい表現ができると思いました。当時は今ほどVTuberが台頭していなくて、言い方は悪いですが、ほとんどが趣味レベル。学芸大青春と一緒に、この世界で暴れてやろうと最初に思いました(笑)。なにより、学芸大青春は曲が素晴らしいんですよ。曲を聴いて「あ、これは本気だ」と思った瞬間からスイッチが入りました。

──渡辺さんはライブプロデューサーという肩書きですが、新曲“Sugar”をはじめMV制作にも関わっていますよね。現在、学芸大青春のクリエイティブにおいて、どのような部分を担っているのでしょうか。

渡辺:もともと学芸大青春は、どちらかというと2次元の姿での活動が多かったので、まずは2次元の彼らをいかに魅力的に世の中に届けるかが僕の役割でした。配信ライブを始め、CGのMVを作っていた裏ではモーションキャプチャー技術や声と口の動きを合わせる技術など、ライブでもMVでも使えるような仕組みづくりをコツコツとやっていました。今年からはリアルな姿でのツアーも開催できるようになったので、本業のライブ演出をメインに担当させていただいております。MVに関しては、これまで別の制作会社が実写パートを担当していて、僕はCGパートのプロデュースをしていましたが、今回からは実写も含めて演出を担当することに。その1作目が“Sugar”です。

──そもそもライブプロデューサーとは、どんなお仕事なのでしょうか。

渡辺:友達からもよく聞かれます(笑)。わかりやすく言うと、みんなが感動できる、キラキラした場所を作るのが自分の仕事だと思っています。アーティストがライブに込めた想いを汲み取った上でこういう場を作ることで、アーティストとお客さんの間に身体的・心的なコミュニケーションが生まれて、たくさんのラブに溢れたらいいなって思います。だから最近は「キラキラした場所を作る仕事」と説明しています。

──となると、メンバーやプロデューサーから思いを聞き取るところからライブ演出が始まるのでしょうか。

渡辺:そうですね。学芸大青春に限らず、ライブにはいろいろな背景があります。例えばニューリリースのプロモーションだったり、アーティスト自身が何かを伝えるために行ったり。いずれにしても重要なのは、なぜライブを行うのか。そこにある思い、何を届けたいかは、ライブのプランを考えるうえで一番知りたいところです。それがないと、演出を膨らませることもできませんから。そこは杉沢さんと密に話しますし、最近はメンバーからも意見を聞いています。

──前回の3rdツアーでは、どのようにライブ演出を考えていったのでしょう。

渡辺:3rdツアーは言わば初めての有観客ライブだったので、語弊があるかもしれないけれど、最初からすごすぎるのは嫌だな、と思っていました。一発目からやりすぎてしまうと、お客さんが思いを入れ込む余地がないなと思ったんです。それでは「なんだかよくわからないけどすごかった」と受け切って終わりになってしまいます。そうではなく、「この演出ってこういうことなのかな」「このパフォーマンスってこういう意味があったのかな」と妄想できる余地があったほうがいいかなと思って。「また行きたい」と思ってもらえるような隙間を残しておきたいと考えながら作っていきました。

──テクノロジーばかりが前面に出るのは避けたかった?

渡辺:そうなるにはまだ早いかなと思って。今活躍しているトップアイドルだって、最初からすごいライブをしているわけではありませんよね。最初は距離の近さを感じるところから始まって、記念となるライブから派手になっていく。学芸大青春でも同じような切り口でやったほうがいいかなと思ったんです。今後大きなライブが開催されるのであれば、「すごいだろ!」というショーケースみたいなライブをドーンとやりたいという思いはあるんですけど。そこまでは、お客さんと学芸大青春の関係値を作りあげていく時間を大事にしたいなと思っています。

学芸大青春

学芸大青春

みんなでひとつの思いを共有しながら素敵な空間を作ろうとする。それがライブ

──学芸大青春のライブは、たとえ2次元の姿であってもリアルな実在感があります。2次元の演出で特に大切にされていることはありますか?

渡辺:2次元の演出では、リアリティがすごく重要だと思っています。当たり前ですけど、バーチャルって制限がないんですね。CGキャラクターなので、何でもできてしまうんです。極論を言うと、キャラクターが空を飛んだり、海の中にいたり、手からビームを出したりもできちゃう。でも、自分としては学芸大青春をファンタジーにはしたくないんです。リアリティをなくしてファンタジーにしてしまうと、映像作品を観ているような感覚になってしまい、彼らが「そこにいる感」を作るのが難しいかなって。そこでできる限りリアリティを追求しながら、ちょっとだけファンタジーの調味料を入れて「なんだ、この隠し味は」と思っていただけるようにCGパートを作っています。

──1stライブに比べると、3次元の姿がよりはっきりと見えるようになってきました。3次元に寄ってきたことで、ライブ演出に変化はありますか?

渡辺:3次元の姿をどこまで見せるかは、杉沢さんの采配なので自分はあまり考えていない領域です。最初にプランを出してもらい、各曲の衣装も決めていただいて。ただ、今後初めて顔をお披露目する機会があれば、そこは大事にしたいと思っています。というか、3年くらい温めてきた素顔なので、大事にせずにはいられないです…!サラッと終わらせるか、こってりさせるかで、お客さんの受け取り方も変わると思うので、慎重に考えたいです。

──3rdツアーは有観客ではありましたが、お客さんが声を上げることはできませんでした。その分、歓声アプリやスティックバルーンが活躍していましたよね。

渡辺:アプリやバルーンに関しては、自分が考えたわけではないんです。ただ、どのライブでもファンとのコミュニケーションを取るために、みなさんいろいろな形を模索していますよね。正直、歓声アプリとスティックバルーンとペンライトをその都度使い分けるのはお客さんも大変だと思うんですよ(笑)。でも、僕は会場の後ろから見ていたんですけど、みなさん器用に持ち替えていらっしゃってて。声は出せなくてもみなさんの気持ちが可視化・可聴化されたことによって会場に一体感が生まれていて「これがファンとアーティストの関係性なんだな、美しいな」と思いました。

──学芸大青春のファンは、みなさんあったかいですよね。

渡辺:ライブに行くといつも思うんですよ、あったかいなって。生きていると、けっこうつらいこともあるじゃないですか(笑)。外に出るとイラっとしたり悲しくなったりすることがありますけど、見知らぬ誰かが隣にいるにもかかわらず、みんなでひとつの思い、ひとつの空気を共有しながら素敵な空間を作っていこうとする。それがライブの良さですよね。

──ツアー最終日は配信も行われましたが、会場と配信で演出が違う曲もありましたよね。例えば1曲目の“HOLD US DOWN”は、配信では2次元と3次元が融合した面白い演出でしたが、会場のお客さんは見え方が違ったのでしょうか。

渡辺:違います。僕は、配信と会場での楽しみはまったく別モノだと思っています。配信のメリットは、演出テーマをダイレクトに伝えやすいところと、アーカイブとしても観られるところ。配信で参加されてるお客さんはもちろん、会場に行かれた方がもう一度ライブを観たいなと思った時に「え、ここはこんな演出になっているんだ」と驚くポイントをいくつ仕込めるか、を考えて作っています。配信はカメラワークにもこだわっていて、なるべく会場とは違う楽しみ方ができるような画づくりを意識しています。2次元パートも、「学芸大青春はすげーんだよ」と常に伝え続けなければ、という意気込みで作っています。配信も現地のお客さんも、どちらも楽しめるようにしたいという思いが強いですね。

──3rdツアーで、渡辺さんの演出と学芸大青春のパフォーマンスが一番バチッと決まった楽曲は?

渡辺:正直に言うと、これまで何度も新型コロナウイルスの情勢に阻まれてきたので、会場にお客さんがいること自体が最高だったんですよね。なので、お客さんが楽しそうにしてくれて、メンバーがステージ上で楽しそうにしているのが、言ってしまえば最高のパフォーマンスでした。

 そんな中でも、あえて自分の好きな演出を3曲挙げさせてもらいます。ひとつは“Race!”。最初のライブから3rdツアーまで皆勤賞の楽曲で、これまではゴリゴリにカッコいい演出を作ってきました。でも3rdツアーではかわいい雰囲気の衣装に着替えたあとでしたし、スティックバルーンを使ってお客さんと楽しむ時間でもありました。そこで、「バキバキにカッコよくする」という鉄則を崩し、みんなでわいわいできる空間にしようと思いました。照明も、これまでは赤と白、青と白とか激しく見える色にしていましたが、今回は衣装にも目が行くように黄色やピンク、スカイブルーのような明るめのパステル調にして明るい雰囲気にしました。今までとは違う“Race!”を楽しんでいただけてたら嬉しいです。

 2次元の姿での楽曲を挙げるなら“JUST”。“JUST”は浸れる楽曲なので、毎回没入できる演出を作っています。今回は、使用しているゲームエンジン(※キャラクターを描画するアプリケーション)が進化してリッチな表現ができるようになったので、アイコニックな見せ場を作りたいなと思って。そこで「空と海が交わる美しい場所」をテーマに、動物や鳥、魚が登場したり、海中のような揺らめきを表現したりしながら、美しく特別な空間を目指して作っていきました。正直言ってこの演出は、自分の趣味がかなり入ってます(笑)。先ほど「ちょっとだけファンタジーの調味料を入れる」と言いましたが、“JUST”はその枠になることが多いです。1stライブでは、透明な箱の中で彼らが踊るんですけど、その箱が海底から宇宙まで続く現実ではありえない宇宙エレベーターで上昇していく設定です。海底から始まって海面に出て、そのまま空に向かい、大気圏に突入して宇宙に行く。『漂流兄弟』のテーマ曲でもあったので、そういう演出にしました。なので今回も、空と海がつながっている、ここではないどこか唯一無二の場所に彼らが存在している、その場所とファンはつながっているという心象世界を表現してみました。ディテールにこだわったのはこの曲ですね。

 最後に挙げるのは“IF…”です。ライブで初披露の曲だったので、元々今回の目玉にしたかったのですが、仕上がりが良すぎたので、杉沢さんに「“IF…”の演出はヤバいのでライブMVを出しましょう」とお願いしました(笑)。最近は「ボリュメトリックキャプチャ」という生身の人間の動きを丸ごと3DスキャンしてCG化する、1回の撮影で数百万飛ぶような高価な技術があるんですけど、これを使ってみようと。でも、学芸大青春はすでに2次元(CG)の姿がありますよね。つまり、2次元の姿を使えばボリュメトリックキャプチャを使ったみたいな表現ができちゃうじゃんって。そういうリアルの演出手法をバーチャルでも取り入れてみたかったんです。ただ、「この最新技術を使ったからすごい」ではなく、その表現方法をうまく活用してアイキャッチにしようというのが“IF…”の裏テーマになりました。最終的には表のテーマとして、片思いをする男の子が、好きな女の子と過ごした時間や場所を追体験するようなステージだったので、それに絡めることにしました。まず思い出の写真を背後に配置したセットでメンバーがパフォーマンスをして、ラスサビで男の子がフラれた桟橋に移動する時にこの手法を使いました。….切なすぎますね(涙)。こういう背景的にも、この曲はバチッと決まったかなと思います。

渡辺大聖

後編は11月30日公開予定です

学芸大青春『PUMP YOU UP!!』特集ページはこちら

取材・文=野本由起

学芸大青春4th LIVE TOUR「PUMP ME UP!!」開催
2022年3月から5月にかけて、全国7都市で4th LIVE TOUR「PUMP ME UP!!」が開催。

2022年3月19日(土) 宮城県・Sendai Rensa
2022年3月26日(土) 広島県・HIROSHIMA CLUB QUATTRO
2022年4月9日(土) 北海道・Zepp Sapporo
2022年4月24日(日) 福岡県・Zepp Fukuoka
2022年5月8日(日) 大阪府・Zepp Osaka Bayside
2022年5月15日(日) 愛知県・Zepp Nagoya
2022年5月27日(金) 東京都・Zepp Haneda

詳細は、学芸大青春 公式ホームページまで。

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