厳選10作! 絶望感にうちのめされるダーク系アニメを一気見して、独特の世界観に浸ろう

マンガ

更新日:2020/3/2

「あなたは善人ですか?」と質問された時、「私は善人だ」と胸を張って言える人が果たしてどのくらいいるだろうか。紹介する10本のアニメには、こうした善性とは程遠い人間の悪性が描かれている。憎悪、嫉妬、暴力、欲望、衝動など、社会によって隠されている人の本性を垣間見ることになるだろう。「明るい作品はどこか物足りない」と感じているなら、鬱展開がふんだんに盛り込まれたダーク系作品がおすすめ。上滑りな社会常識ではどうにもならない、残酷な人間の本性をのぞいてみてはいかがだろうか?

※この作品レビューには該当アニメのネタバレを含みます。

14人の少年少女が地球のために戦い、そして、死ぬ。『ぼくらの』

総話数:24話

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『ぼくらの』(鬼頭莫宏/小学館)

『ぼくらの』は、14人の少年少女が地球の存亡をかけて戦うロボットアニメ。「なんだ、ただのロボットアニメか~」と思った人がいるかもしれないが、侮ってはいけない…。『ぼくらの』は、日本を代表する鬱アニメの1つと言っても過言ではないくらい、トラウマ必至の作品となっているのだ。

 ある夏休み、自然学校で出会った15人の少年少女たちは、浜辺の洞窟でココペリと名乗る謎の男に遭遇する。宇白可奈(うしろかな)以外の14人は、ココペリに言われるがまま、不可思議な契約を結ばされ、あるゲームに参加させられることになった。はじめのうちは、ロボットを操縦するリアルな対戦ゲームだと思っていた少年少女たち。だが、ロボット「ジアース」の操縦者として選ばれた和久隆(わくたかし)は、敵を倒した直後、謎の死を遂げる。彼らはそこで初めて、ロボットの操縦者は代償として命を奪われること、そして、自分たちが地球の存亡をかけて戦わなければならない事実を知ることになる。

 上記のあらすじから分かると思うが、『ぼくらの』に登場するメインキャラクターは、ほぼ全員が死ぬ。未来ある中学生たちが、全24話の中で、おおよそ2話に1回ほどの頻度で次々に命を落としていく様子は、見ていてかなり苦しいものがある。未来には楽しいこともたくさんあっただろうに…。

 しかし、ただ死ぬという事実だけでは語れない。この作品の肝は、操縦者として選ばれてから、敵と戦うまでの時間に猶予が設けられているところ。次の操縦者はランダムで選定され、選ばれると体のどこかに印が浮かび上がる。こうして選ばれた彼らが、戦うまでの残された時間をどう過ごすのかに注目してほしい。死を目前にして、自分の欲望を果たそうとする者もいれば、家族と向き合おうとする者もいる。死を意識するからこそ現れる人間の本性がそこには描かれているのだ。

 自分だったら、親しい者だったら、最期をどう迎えるだろうか。もし死ななければ、この子たちにはどんな人生が待っていただろうか…。登場人物一人一人のバックグラウンドや感情の機微を丁寧に表現しているからこそ、最後の死を迎える場面では毎回、涙を流さずにはいられなくなるだろう。

次々と起こる連続怪死事件。絶望のループから脱出する手立てはあるのか?『ひぐらしのなく頃に』

総話数:26話

『ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編』(竜騎士07:原作・監修、鈴羅木かりん:作画/スクウェア・エニックス)

『ひぐらしのなく頃に』は、ある村で起こる連続怪死事件と、その謎に立ち向かう少年少女の姿を描いたミステリーホラー作品だ。原作は同人サークル「07th Expansion」のサウンドノベルゲーム。アニメ、漫画、小説、パチンコなど、幅広いジャンルでメディアミックスされていることもあり、名前だけは知っている人も多い本作。その特徴は、バットで人を殴り殺す、少女に対する激しいDV、はりつけにしたうえでの拷問など、うわぁ…と目を背けたくなるような残酷描写、そして、緻密に張り巡らされた伏線の数々である。

 作品の舞台は昭和58年の夏。都会から遠く離れた山奥にある雛見沢村に、前原圭一(まえばらけいいち)という少年が引っ越してくるところから始まる。圭一はクラスメイトの、竜宮(りゅうぐう)レナ、園崎魅音(そのざきみおん)、北条沙都子(ほうじょうさとこ)、古手梨花(ふるでりか)と仲良くなり、毎日楽しい学校生活を送っていた。だが、雛見沢村で毎年行われる「綿流し」と呼ばれる祭りの日から事態は一変した。過去4年間「綿流し」の日には、一人が死に、一人が行方不明になるという不可解な事件が起きていた。そして、その年も同様に事件が発生。連続怪死事件を追う刑事・大石から、次に狙われるのは圭一かもしれないと告げられ、それまで信頼していた仲間に対して、少しずつ疑念を抱いていくようになる。

『ひぐらしのなく頃に』は、「鬼隠し編」「綿流し編」「祟殺し編」「暇潰し編」「目明し編」「罪滅し編」と、それぞれ物語のブロックが用意されており、そのブロックごとに話が完結し、時間が巻き戻るという方式をとっている。いわゆる、ループものだ。「鬼隠し編」では、圭一を軸に話が進むが、綿流し編では話の軸が魅音に移る。同じ時間をループしながら、別視点で雛見沢連続怪死事件が描かれることによって、多角的に謎が明らかにされていくストーリー展開だ。ミステリーとして興味深い構造を持つ作品と言えよう。

 また、『ひぐらしのなく頃に』で注目したいのは、仲のいいキャラクター同士が疑心暗鬼に陥っていくところ。上記のように「鬼隠し編」で、圭一は徐々に仲間を信頼できなくなっていく。この疑心暗鬼に陥る様子は、ほかのエピソードでも執拗に描かれている。その一方、「疑い」が破滅を招くことを理解し始めた登場人物たちが、物語の後半から、「信頼・協力」することの大切さに気づいていく展開も設けられている。『ひぐらしのなく頃に』は、人を信じることの尊さと、人を疑うことの愚かさの両方に向き合っている作品なのだ。

 ちなみに、事件の真相を知りたい場合は、続編の『ひぐらしのなく頃に解』まで観ることを強くおすすめする。「解」まで一気見すれば、伏線が綺麗に回収される気持ちよさを感じてもらえるだろう。

主人公はアニメ史に残るクズ男!『School Days』

総話数:12話

『School Days』(オーバーフロー:原作、酒月ほまれ:漫画/角川書店)

『School Days』というタイトルを見ると、一見、普通の学園ものという印象を持つかもしれないが、その予想はすさまじい勢いで裏切られることになる。『School Days』は、2007年7月から放送された、ゲームを原作とするテレビアニメ。あまりにも衝撃的な展開に、その当時からアニメファンの間で大きな話題となった1作だ。

「好きな人を待ち受けにして3週間誰にもバレなかったら、恋が成就する」という噂をあてにして、高校1年生・伊藤誠(いとうまこと)は、ずっと気になっていた同学年の女子生徒・桂言葉(かつらことのは)の姿を待ち受けに設定していた。しかし、同級生の西園寺世界(さいおんじせかい)に、その待ち受け画面を見られてしまう。おまじないをダメにしてしまったお詫びに、世界は誠と言葉の間を取り持つことになる。世界の助けもあり、無事に誠と言葉の2人は付き合うことになるのだが……。

『School Days』を鑑賞してしばらくすると、ほとんどの人が主人公・伊藤誠のクズっぷりに呆れることになるだろう。言葉も世界も、ヒロインはみんな魅力的なのだが、主人公がアニメ史に残るクズ男なのだ!

 まず、上記のように、言葉と誠は付き合うことになる。しかし、途中から、誠は世界とも同時に付き合い始める。つまりは、二股である。その後、世界からの「ある告白」に対し、誠はさらに「人でなし」としか言いようがない態度を見せ…。その告白の中身については、作中で確認してもらいたい。

 序盤は普通の学園ものとして展開する『School Days』だが、中盤から終盤にかけて、どんどん話は重くなっていき、最終的に死人が出るバッドエンドへ突き進むことになる。誰がどんな理由で死に至るのか、気になる人は一度鑑賞してみることをおすすめする。ラストの展開に、あなたは間違いなく衝撃を受けるだろう。そして、トラウマになるだろう。

50億年後の未来で描かれる少年兵のリアル『今、そこにいる僕』

総話数:13話

『今、そこにいる僕 サントラ』(ビクターエンタテインメント)

『今、そこにいる僕』は、50億年後の未来にタイムスリップした少年が、戦争の絶えない世界で奮闘する物語だ。『おじゃる丸』でおなじみの大地丙太郎監督が監督を務めた『今、そこにいる僕』だが、その内容は非常にシリアスな戦争ものだ。『おじゃる丸』で見られるようなギャグシーンは、ほとんど描かれていない。

 剣道が得意な少年・シュウは、ある日、廃工場の煙突の上に佇んでいる少女・ララ・ルゥと出会う。不思議に思って言葉を投げかけるシュウだが、その時、空間が割れて謎の女が現れた。奇妙なロボットを連れて現れたその女はララ・ルゥを捕まえようとする。ララ・ルゥを助けようと奮闘するシュウだが、光に包まれるようにして、50億年後の未来へ飛ばされてしまう。平凡な少年・シュウは、見知らぬ未来の世界で囚われたララ・ルゥを救出するため、残酷すぎる世界に立ち向かっていく。

『今、そこにいる僕』で、シュウが飛ばされた世界は、極度の水不足を原因に、紛争が絶えない未来。ヘリウッドという動く要塞に転送されたシュウは、ヘリウッドの少年兵として働かされることになる。この少年兵の目線から描かれる世界が、非常にリアルだ。親を失い行き場のない子供たちを兵力として使う。そして、その少年兵に村を襲わせ、さらにその村の子供を誘拐させる。『今、そこにいる僕』は、こうした戦場で繰り返される悲劇の連鎖を、子供の視点から描いた衝撃作だ。全編を通じて胸を締め付けられるシーンが多い本作。しかし、だからこそ、最後まで鑑賞し終えた時には、心に沁みるような深い感動を覚えるはずだ。

ホラー×ミステリーの傑作アニメ『Another』

総話数:12話

『Another(上)』(綾辻 行人/角川書店)

『Another』は、ミステリー作家・綾辻行人の小説を原作にして制作されたミステリーホラーである。どんよりした曇り空が作り出す陰鬱とした空気。随所で登場する不気味な人形。こうしたホラー演出と緻密なミステリーが相まって、恐怖に胸をドキドキさせながらも、謎が解かれていく快感を同時に味わうことができる作品だ。

 物語は、1998年の春、主人公・榊原恒一(さかきばらこういち)が、夜見山北中学校に転校してくるところから始まる。恒一が転入した3年3組は、何かに怯えているような暗い空気に支配されていた。クラスの空気に違和感を覚えつつ、左目に眼帯をした不思議な少女・見崎鳴(みさきめい)の存在が気になり、恒一は事あるごとに声をかけるようになる。だが、ほかのクラスメイトはどういうわけか、鳴を認識していないようだった。ますます違和感を募らせていった恒一は、鳴との接触を試みるが、そんな時、ある生徒の理不尽な事故死が発生。「3組の呪い」の存在が明らかになり、クラス内の空気がさらに重苦しくなっていき…。

『Another』の見どころは、何といっても「死に方」。ある呪いによって、どんどんクラスメイトや関係者が死んでいくことになるのだが、その死に方がとにかくバラエティーに富んでいる。傘で喉を貫かれる、エレベーターが落下する、窓ガラスが刺さるなど、毎回、キャラクターごとに全く異なる死に方をする。今回はこう死んだか…! と途中からは感心してしまうほど。猟奇さも際立つため、あまりこの部分を楽しむ人はいないと願うものの、作り手の熱意を感じる部分ではあるので、ぜひ注目してみてほしい。また、オープニングを飾るALI PROJECTの楽曲「凶夢伝染」は、作品世界のおどろおどろしさを見事に表現しており、グッとくる魅力の1つとなっている。

愚かな人間は地獄へ流される『地獄少女』

総話数:26話

『地獄少女イラストレーションズ 鏡花水月』(ポストメディア編集部/一迅社)

「晴らせぬ怨み、晴らします」や「いっぺん死んでみる?」など、数々の名台詞を残してきた『地獄少女』。2019年11月15日(金)からは、玉城ティナ主演の実写映画も公開され、最近になって再び注目を浴びている作品だ。

『地獄少女』は、毎回、地獄少女によって悪人が裁きを受けるという勧善懲悪のスタイルで話が進んでいく。午前0時にだけ出現するサイト・「地獄通信」。そのサイトに書かれた人物を地獄送りにしてくれるのが、主役・閻魔(えんま)あい(通称:地獄少女)だ。ただし、地獄送りには条件がある。それは「相手を地獄へ送る代わりに、依頼主の魂も死後、地獄行きになる」というもの。そうそう都合のいい復讐はできないわけだ。この条件を理解したうえで、それでも、相手を地獄へ流したいと思った時、地獄少女から渡される藁人形の紐を解くと、相手の魂は地獄へ落ちることになる。

『地獄少女』の見どころは、怨まれた相手が地獄へ落ちる前に受けるお仕置きのシーンだ。各回に登場する悪人に対して、その悪人が苦しむような、独自のお仕置きが用意されている。地獄少女と行動を共にしている、一目連(いちもくれん)、骨女(ほねおんな)、輪入道(わにゅうどう)などのキャラクターと協力して行われるキツイお仕置きを見れば、きっとスカッとした気分になれるはず。

『地獄少女』には、第1期から第4期の中で多くのエピソードが存在するが、基本的に1話完結ものなので、どこから入っても問題なく楽しめるだろう。アニメ初心者でも、気軽に観始めることができる作品の1つだ。

「クソムシが!」のセリフが話題を呼んだ問題作『惡の華』

総話数:13話

『惡の華』(押見修造/講談社)

『惡の華』は、思春期特有の性の芽生えと自我の揺れを扱った作品だ。使われた技法が独特だったこともあり、放送当時から物議を醸したアニメとして有名である。一目見た瞬間、この作品が普通のアニメとは全く異なるものであることが分かるだろう。というのも、『惡の華』には、ロトスコープという特殊な技法が用いられているのだ。ロトスコープとは、実際の人物や風景をトレースして絵に起こす技法のこと。『惡の華』の特徴は、このロトスコープによって人物の表情や心の揺れが生々しく表現されているところにある。

 そんな本作『惡の華』の舞台は、原作者・押見修造の故郷である群馬県桐生市。周りを山に囲まれたこの地域で、鬱屈とした青春を送っていた中学生・春日高男(かすがたかお)は、ある時、同級生の女子生徒・佐伯奈々子(さえきななこ)の体操着を盗んでしまう。同じく、同級生の仲村佐和(なかむらさわ)に体操着の盗難現場を見られてしまった春日は、それ以降、秘密をばらされないために、仲村の命令に従うことに。佐伯の体操着を着るよう強要されるなど、無理難題を突き付けられる春日だったが、徐々に仲村の心の闇と、その孤独に共感するようになっていく。

『惡の華』で最も強烈なのは、仲村というキャラクターだ。仲村は教師に向かって「クソムシが!」と言い放つ近寄りがたい存在(この印象的なシーンだけでも、見たことがあるという人も多いのでは?)。周囲に友達がいない彼女だが、体操着を盗んだ春日に対しては、何か共感するものを感じているように見える。そんな春日と仲村の衝動が爆発し、教室中を墨で塗りつぶしていくシーンは圧巻だ。『惡の華』では、誰にも理解されない者同士だからこそ成立する特殊な人間関係を見ることになるだろう。

閉鎖空間に残された少年少女のリアルな欲望が描かれる『無限のリヴァイアス』

総話数:26話

『無限のリヴァイアス』(黒田洋介/メディアワークス)

『無限のリヴァイアス』は、閉鎖空間における人間模様を描いたSFアニメだ。作品の舞台は、2225年の未来。航宙資格取得の目的で、航宙士養成所であるリーベ・デルタを訪れていた相葉昴治(あいばこうじ)、蓬仙(ほうせん)あおい、相葉祐希(あいばゆうき)、尾瀬(おぜ)イクミ、和泉(いずみ)こずえ。仲間たちと研修を受けていた5人だったが、リーベ・デルタは突如、制御不能に陥り沈み始める。

 訓練生は一斉に、外洋型航宙可潜艦リヴァイアスへ避難を開始。こうして、救助が来るまでの時間、大人のいない艦内で共同生活を送ることになった少年少女たち。しかし、物資が限られる状況で、徐々に訓練生たちは統率が取れなくなっていく。

『無限のリヴァイアス』は、『十五少年漂流記』と同じように、大人がいない中、子供たちが協力して危機を乗り越え、キャラクターそれぞれが成長していく物語だ。しかし、『無限のリヴァイアス』の少年少女は、リアルな欲望を持っているという点が特徴的。人間が、また10代の少年少女が抱くさまざまな欲のため、大人という歯止めがなくなったリヴァイアスの中では、自分の欲望を満たすための暴力が横行することになる。もちろん、作中では恋愛模様も描かれるため、嫉妬が生まれ、人間関係が破綻していく姿を見ることにもなる。

 さらに、リヴァイアスを攻撃する謎の艦隊まで出現し、事態は混迷を深める。何が起こっているのか分からないまま、閉鎖空間で蝕まれていく少年少女たちの心を、残酷なまでに描き出した作品が、『無限のリヴァイアス』である。

1000年後の未来で繰り広げられる壮絶な戦い『新世界より』

総話数:25話

『新世界より(上)』(貴志祐介/講談社)

 日本SF大賞を受賞し、その独特な世界観や深いテーマ性から絶賛を浴びた貴志祐介のSF小説『新世界より』。映像化不可能とまで言われていたその世界観を見事なまでに再現したのが、テレビアニメ『新世界より』だ。

 舞台は、1000年後の未来。人類は呪力という念動力を用いて生活していた。渡辺早季(わたなべさき)、朝比奈覚(あさひなさとる)、秋月真理亜(あきづきまりあ)、伊東守(いとうまもる)、青沼瞬(あおぬましゅん)の5人は、全人学級で呪力のコントロールや人類の歴史について学んでいた。しかし、彼らの周辺では、人が消えるなど、不穏な出来事が起こり始める。そして引き起こされる、バケネズミや異形な怪物たち、そして呪力を手にした人類との争い。12歳、14歳、26歳とキャラクターが年齢を重ねていきながら、長いスパンで物語を紡ぎだしていくところが『新世界より』の作品としての特徴だ。

 ネコダマシという妖怪を見る描写から始まり、人がいなくなるなどのシーンを通して、徐々に違和感が現実になる形で、段階的に鬱展開が加速していく。違和感や不安を提示しながら恐怖感を少しずつ盛り上げていくあたりに、ホラーテイストを強く感じることができるだろう。壮大な世界観と重厚なストーリーを楽しみたいなら、『新世界より』は間違いなく必見の1作だ。

ヤンデレの意味はこれを観れば分かる!『未来日記』

総話数:26話(ほかOVA1編)

『未来日記』(えすのサカエ/角川書店)

『未来日記』は、未来日記所有者たちによるサバイバルゲームを描いた作品だ。タイトルの通りだが、作中には、自分がまだ体験していない未来について記された日記が登場する。それが、未来日記だ。

 日記をつけることが趣味だった主人公・天野雪輝(あまのゆきてる)は、未来日記を手に入れて以降、ほかの日記所有者たちとのサバイバルゲームに巻き込まれていく。このサバイバルゲームに生き残った者は、時間と空間を支配する「神の座」につくことができる。『未来日記』は、神の座を狙う日記所有者たちの戦いと騙し合いが見どころの1つとなっている。

 注目なのは、ヒロイン・我妻由乃(がさいゆの)のその強烈なキャラクター性だ。成績優秀・容姿端麗な由乃だが、彼女は恋愛に関してだけ異常な執着を持っている。由乃は、意中の相手である雪輝の行動を常に監視しており、ほとんどストーカーのような存在だ。いわゆるヤンデレのキャラクターとして強烈な個性を持っており、それは彼女が持つ未来日記の特性にも表れている。未来日記は所有者によって、その機能が異なるが、由乃の未来日記はその名も「雪輝日記」。雪輝の行動を10分刻みで知ることができる日記だ。由乃の行き過ぎた愛情が、未来日記の特性にまで反映されているわけだ。とはいえ、単なるヤンデレというだけだったら、可愛い女の子で済ます人もいるだろう。しかし、物語が進むにつれ、このゲームの真相が明らかになった時、由乃の狂気に対して、もはや可愛いなどとは言えなくなってくる。未来日記を用いた心理戦という面でも、由乃が抱える謎を追うという点でも、『未来日記』は、見どころの多い作品となっている。

 ここで紹介した10作品は、どれも回を重ねるごとに鬱展開が加速していくものばかり。「閲覧注意」レベルの作品なので、グロテスクなものが苦手な人は避けたほうがいいかもしれない。その一方で、刺激のある作品や、人間の本性をえぐり出した作品を観たい場合には、確実に満足してもらえるアニメがそろっている。年末年始で世間が浮かれている中、鬱展開満載のアニメでゾクゾクしたスリルや人間の内面を描き出した残酷描写に浸り、悦に入るのも一興だろう。

文=木島祥尭