「こんな喫茶店があれば」お悩みに合わせて絵本をセレクトしてくれるカフェ。絵本×スープの組み合わせが心地良い連作短編集

文芸・カルチャー

公開日:2023/2/10

本のない、絵本屋クッタラ おいしいスープ、置いてます。
本のない、絵本屋クッタラ おいしいスープ、置いてます。』(標野凪/ポプラ社)

『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』の著者・標野凪氏の最新作『本のない、絵本屋クッタラ おいしいスープ、置いてます。』(ポプラ社)が、2023年2月2日に発売された。同作は絵本屋を舞台に繰り広げられる連作短編集。読むと少し心が軽くなる物語ということで、悩みを抱える多くの現代人から注目を集めているようだ。

 著者は、『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』や「終電前のちょいごはん」シリーズなどを手掛けた作家・標野凪氏。著者の作品はどれも温かく、読者に寄り添うような物語ばかりだ。まるでカフェで一息ついたような読後感に定評があり、今回もまたホッと温まる作品に仕上がっている。

 物語の舞台は、札幌にあるインクブルーの三角屋根が目印の「絵本屋クッタラ」。絵本屋といっても、クッタラの店主・奏が客に合わせて絵本をセレクトしてくれるため、本屋のように店頭に本が並んでいるわけではない。

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 そしてクッタラは、共同経営者・八木が経営するカフェでもあり、メニューに載っているのはスープセットとコーヒーだけ。そんな一風変わったお店には、育児に悩んだり、仕事に忙殺されていたりと、自分の今の立ち位置に迷う客が日々足を運んでいた。

 奏の仕事は、まず彼ら、彼女らの話を聞くところからスタート。客の話に耳を傾けた後は、決まって「御本が揃いましたらご連絡いたします」と告げる。そうして客はもう一度店を訪れるのだが、奏のセレクトする絵本こそ物語のキーアイテム。時に意外で、時に温かく、時に一読しただけではわからないしかけがされており、絵本が悩み解決の後押しをしてくれるのだ。

 さらに話が進むにつれて、奏自身の秘密も明らかに。果たして奏がこの店を開いた理由とは…。読めば誰もが奏のセレクトした絵本に心を動かされ、季節のスープのようにほっとひと息つけることだろう。

 ちなみに著者の標野氏は小説家であると同時に、自身が営むカフェの店主でもある。実際にカフェを営んでいるからこそ書ける描写も多々あり、読めばきっとカフェにいるような気分になるはず。同作を読み終えた人からも、「こんな喫茶店があれば、疲れたときとても癒されると思う」「こんなお店に行ってみたいと思える本だった」「実際に自分もカフェに足を運んでいるような気持ちになる 。疲れた時にスッと読めて、休息になる一冊」などのコメントが寄せられていた。

 絵本×スープという不思議な組み合わせでありながらも、体と心にじんわりと染みわたるような読後感を楽しめる『本のない、絵本屋クッタラ おいしいスープ、置いてます。』。気になる人はぜひ手に取り、同作に癒やされてほしい。

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