ベストセラー作家・小川糸の“おいしい”エッセイ。春の山菜料理に秋のおやつ…四季を味わうレシピをあたたかな文体で追体験

文芸・カルチャー

公開日:2023/4/22

糸暦 いとごよみ
糸暦 いとごよみ』(小川糸/白泉社)

 作家の小川糸氏が12カ月の暮らしぶりを綴ったエッセイ『糸暦 いとごよみ』(白泉社)が、2023年4月3日に発売された。山菜料理にりんごケーキ、栗ごはんに手作り石けん、湯治――。おいしくて心も豊かになる暮らしの知恵が満載の一冊に、感銘を受ける読者が続々増えている。

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 小川氏は『ツバキ文具店』や『ライオンのおやつ』など、数々の話題作を生み出してきた人気作家。デビュー作にして代表作でもある『食堂かたつむり』は、2010年に柴咲コウ主演で映画化されたベストセラーで、イタリアやフランスの文学賞も受賞した。

 また小説だけでなく、『たそがれビール』や『針と糸』などのエッセイや、日々の暮らしに密着した『これだけで、幸せ 小川糸の少なく暮らす29ヵ条』や『育てて、紡ぐ。暮らしの根っこ-日々の習慣と愛用品-』といった本も話題に。

 今回発売された『糸暦 いとごよみ』は、そんな著者が等身大に綴った歳時記エッセイだ。春の山菜料理、秋のごはんに猛暑の夏を乗り越える麻の着物…。自分流の楽しみ方で四季を過ごしていく様子を、あたたかな文体で描いている。

 たとえば「思い出の笹巻き」という章で綴られているのは、山形出身の著者にとってなじみ深い郷土菓子・笹巻きの記憶。梅雨の頃になると、家の近くのお寺に生えた笹の葉を使って、母と祖母が丸一日かけて笹巻きを作ってくれたのだという。

 他にも、ゴールデンウィークの後に保存食として「山椒の実の醬油漬け」を作ったり、立春の朝に大福梅を使って福茶を淹れたりと、四季にまつわる思い出が満載だ。自然のリズムを五感で味わう描写を追体験することで、毎日を心豊かに暮らすための知恵を学べるだろう。

 日常生活が愛おしく思えてくるようなエッセイは、多くの人の心に刺さったよう。SNS上では、「12カ月それぞれの季節を大切にすることの素晴らしさを再確認した」「年中同じような生活をしていると忘れがちだけど、旬を楽しむことが人生を豊かにするんだなと感じました」と感じ入った読者たちの反響が上がっている。

 また、同書には四季を楽しむ料理のレシピが付いてくるのだが、こちらも必見。読者の間でも、「季節感のあるお菓子作りができるようになったら、おもてなしの場でも使えそうです」と好評を呼んでいるようだ。

 忙しい日々を送っていると、心に余裕がなくなり季節の移り変わりも感じられなくなってしまいがち。豊かな生活を取り戻すためのヒントが欲しい人は、ぜひ手に取ってみてほしい。

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