最期に食べたい思い出のおやつは…? 文庫版『ライオンのおやつ』に「頭と心に響いた」「ごちそうさまでした」と感動の声続々

文芸・カルチャー

公開日:2022/10/27

ライオンのおやつ
ライオンのおやつ』(小川糸/ポプラ社)

 一日一日をめいっぱい生き切る大切さと、食のありがたみに気づける小説『ライオンのおやつ』。同書の文庫版が、2022年10月6日(木)に発売された。余命を知って生きる日々をあたたかく綴っている物語に、読者からは「頭と心に響いた作品です」などと感動の声が相次いでいる。

 著者は2008年に『食堂かたつむり』でデビューし、『ツバキ文具店』や『つるかめ助産院』などを手掛けてきた小川糸氏。『ライオンのおやつ』は「2020年本屋大賞」で第2位を受賞し、2021年にはドラマ化もされている話題作だ。

 物語の主人公は、離島のホスピスで残りの日々を過ごしたいと願う女性・海野雫。雫は数年前にステージ4のガンが見つかり、33歳にして最期の支度を整え、ホスピス「ライオンの家」へと入居してきた。瀬戸内海に浮かぶ離島で、雫は自分の感情を犠牲にして生きてきたことに気づき、“本当にしたかったこと”だけをして過ごしている。

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 消灯も面会の時間も決められていない「ライオンの家」。人と話すのも、散歩に出かけるのも自由なこの家で、唯一入居者がそろって待ち望んでいるのが毎週日曜日に開催される「おやつの時間」である。「おやつの時間」は、生きている間にもう一度食べたいおやつがリクエストできるのだが、雫は思い出のおやつを一つに絞れずにいた。

 雫は「ライオンの家」で過ごす間、入居者たちの思い出のおやつを通して、さまざまな感情を知ることに。雫が最期に食べたいおやつは何なのか、おやつを食べることはできるのか、ぜひ同書で雫の思いに触れてみてほしい。

 誰しもに平等に訪れる死をテーマにした物語は、10代から90代まで、幅広い世代に受け入れられているよう。手に取りやすい文庫版が発売されたことで多くの人が購入しており、「久しぶりに休憩なしで読み進めてしまった一冊。いろいろと突き刺さり、感じるものがありました」「最期に食べたいおやつにその人が象徴されている気がするなあ。心の持ち方を教えてもらった気がする」「神様に生かされているこの瞬間が、素晴らしいものなのだと認識させてもらいました」「気持ちがよくてちょっぴり切ないけれど、やっぱりこの本に出会えてよかった。ごちそうさまでした!」「死がすぐ傍にあるはずなのに、生々しさや悲壮感はなし。生きることの素晴らしさが感じられました」「最期に食べたいおやつは、今考えているものとその時とでは違うんだろうなあ…」などと、熱のこもった感想がSNS上に溢れかえっている。

『ライオンのおやつ』には、365日日替わりの朝食としてお粥が出てきたり、お弁当としてドライカレーと野菜と小豆が入ったお焼きが登場したりと、食描写がとても豊か。もっと生きよう、もっと食べようと思わせてくれる同書で、雫と同じようにお腹を空かせてみてはいかがだろうか。

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