累計48万部突破の『52ヘルツのクジラたち』が待望の文庫化。“その後の物語”もカバー裏に収録! 2024年春には映画化も決定

文芸・カルチャー

更新日:2023/7/7

52ヘルツのクジラたち
52ヘルツのクジラたち(中公文庫)』(町田そのこ/中央公論新社)

 累計発行部数48万部を突破する大人気小説『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ/中央公論新社)。児童虐待というテーマを真正面から取り上げた同作の文庫版が、2023年5月25日(木)に発売される。

 同作を生み出した作家・町田そのこ氏は、2016年に第15回「女による女のためのR-18文学賞」で大賞を受賞。その後初めての長編小説として書き上げた『52ヘルツのクジラたち』は「読書メーター オブ・ザ・イヤー2020」で1位を獲得し、さらには「全国書店員が選んだ いちばん!売りたい本 2021年本屋大賞」「『王様のブランチ』BOOK大賞2020」「第4回未来屋小説大賞」に輝くなど、読書好きの間でも一目置かれている話題作だ。

 物語は家族に人生を搾取されてきた女性・三島貴瑚と、母親に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年を中心に展開されていく。決して明るくない過去を背負った貴瑚は、引っ越した先の大分の田舎町で自分と同じ“孤独のにおい”をまとわりつかせたひとりの少年と出会う。

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 喋ることができない彼は、鳴き声を上げる動物の動画が好きなようで、貴瑚からタブレットを借りると繰り返し見ていた。その流れから彼女が聞かせた話が、52ヘルツのクジラ。他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラのことで、たくさんの仲間がいても何も届かないし何も届けられない。ゆえに世界で一番孤独だと言われている。

わたしは、あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ。

 ここから貴瑚と少年の新たな魂の物語が紡がれていくのだ。

 著者の町田氏は、過去に『ダ・ヴィンチWeb』のインタビューで「自分が子どもを産んでから、虐待問題にも関心を持っていました」と語ったことがある。ハッと手を止めて見るテレビのニュースを“自分にとって気になる問題”と捉え、「私だったらどう助けるだろう」「自分ならこういうときどう動くだろう」と考え抜いた問題を物語に落とし込んでいくという。

 虐待問題について彼女なりの解答を出し、読者に考えるきっかけを与えた同作は、口コミサイトを中心に反響が続出。「今まで読んできた本の中で最も価値のある本だった」「切なくもあたたかい物語。自分には52ヘルツの声が聞けている時があるのかな…」「声は届かなくても生きていけば何かが起こる。マシな何かが起こる。そんな思いで読み終えました」などのコメントが寄せられている。

 ちなみに文庫のカバー裏には、特典のスペシャルショートストーリー『ケンタの憂い』を収録。単行本帯に収録された特典小説『ケンタの祈り』の“その後”の物語が書き下ろされており、文庫特典は電子版でも読めるそうだ。

 今なお読者の心に刺さる一冊として愛されている『52ヘルツのクジラたち』は、2024年春に映画化も決定している。この機会に文庫版を手に入れ、一緒に楽しんでみてはいかがだろうか。

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