児童文学と侮ることなかれ!キミノベル版『ぼくが消えないうちに』に大人たちも「ハラハラする展開」「大人にこそ読んでほしい」2023年冬には映画化も…

文芸・カルチャー

公開日:2023/7/25

ぼくが消えないうちに
ぼくが消えないうちに』(著者:A.F.ハロルド、絵:エミリー・グラヴェット、訳:こだまともこ/ポプラ社)

 2023年7月19日(水)、人気児童文学『ぼくが消えないうちに』がポプラ社の児童文庫レーベル「キミノベル」から発売された。“想像力”がテーマとなった上質な感動ファンタジーに、早くも多くの反響が寄せられている。

 原作は、イギリスの作家・A.F.ハロルド氏による傑作小説『The Imaginary』。「イギリス文学協会賞」をはじめとする世界の文学賞を席巻し、日本では2016年に邦訳版が発売された。

 物語の主人公は、誰にも見えない少年・ラジャー。彼は想像力豊かな少女・アマンダがつくりだした“イマジナリ”の存在で、もちろんラジャーのことは彼女にしか見えない。2人はいつも一緒で親友だった。自宅や学校で楽しい時間を過ごしていたが、ある日バンティングという怪しげな男に出会ったことで、2人は離ればなれになってしまう。

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 先述した通り、ラジャーはアマンダのイマジナリーフレンドだ。彼女に忘れられると、当然この世からラジャーの存在は消えてなくなる。すでに頭からつま先まで消えかかるなか、ふとどこからともなく「わたしには、お前が見える」という声が聞こえてきて…。これが彼の新たな道を示すきっかけとなり、大切な友達を取り戻す冒険の始まりでもあった――。

 同書はジャンルこそ“児童文学”であるが、子供に限らず大人でも楽しめる内容となっている。むしろ大人だからこそ、子供の頃の思い出が蘇り、物語に没入できるのかもしれない。現にSNS上などでは、「とてもハラハラする展開で大人の私でもすごく楽しめました」「児童文学ではよくある題材…と高をくくっていたらいい意味で裏切られた。児童文学だけど、大人にこそ読んでほしい!」「後半はサスペンスでいっぱいで、作者の、それこそ想像力が生んだディテールがすごく迫真的だった」「予想外に怖くて、大人の私でもドキドキ。しかしグッと来る物語で、子供時代を支えてくれた何かを思うと涙が…」など大人たちからの感想が後を絶たない。

 訳者のこだまともこ氏も「年若い読者のみなさんは、バンティング氏とラジャーのスリル満点の追いかけっこにはらはらすることでしょうし、大人の読者は、アマンダのママが自分の見えないお友だちだった老犬とめぐりあう場面に胸がいっぱいになるのではないでしょうか」とあとがきに綴っていた。

 ちなみに2023年12月15日(金)には、『ぼくが消えないうちに』を原作とした映画「屋根裏のラジャー」が公開される予定だ。監督はスタジオジブリ出身で、「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」にも参加していた百瀬義行氏が務めるという。

 映画に先駆けて、ぜひ『ぼくが消えないうちに』を手にとってみてはいかがだろうか。記憶からこぼれ落ちてしまった大切な友人の存在を思い出すきっかけになるかもしれない…。

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