死が迫りくるなか灰色の世界を生きる青年が選んだ道とは? デビュー5周年を迎えた純愛小説の仕掛け人・優衣羽の最新作『君が残した365日』

文芸・カルチャー

公開日:2024/3/13

君が残した365日
君が残した365日』(優衣羽/ポプラ社)

 2024年3月5日(火)、新進気鋭の純愛小説作家・優衣羽(ゆいは)の新作『君が残した365日』が発売された。儚くも美しく色鮮やかな青春の物語に、読者から感動の声が殺到している。

 著者・優衣羽は2018年の「ピュアフル小説大賞」で最終候補に選ばれ、翌2019年に『僕と君の365日』でデビュー。色彩が徐々に失われ、やがて死に至る病「無彩病」に罹患した主人公・新藤蒼也と立波緋奈が紡ぐ1年間のラブストーリーに、心を打たれる読者が続出していた。

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 そんな同作の世界観を引き継いでいるのが、今回刊行された『君が残した365日』。主人公・大野夕吾は、幼馴染だった2歳上の少女・和泉楓との死別を経験して無気力な日々を送っていた。そんなあるとき、自身が「無彩病」であることを知らされる。

 しかし夕吾の「無彩病」は、通常の症例とは異なる様子。実を言うと彼は生まれつき色彩を感じられず、灰色の世界を過ごしてきた。そのせいなのか、死に至るまでのあいだ徐々に色を取り戻していくという。

 突如として、約1年という余命を突きつけられてしまった夕吾。その矢先に楓の母から遺品として“元気になったらやりたいことリスト”と題されたノートを預かることに。そして楓が書き連ねた願望を手にした夕吾は、ひとつの決意を固める。残された時間をリストの達成に費やそうと――。

 楓がノートに書いた願望は「ソファに寝転がってポテトチップスを食べ切る」や「登校前にコンビニに寄り、コーヒー片手に颯爽と登校」など、どれも「くだらない」内容ばかり。それらを最初はひとりでこなしていた夕吾だったが、途中からリストの存在を知った友人・小内新やクラス委員長・三上萌枝、ひょんなことから知り合った同級生のギャル・矢沢茉怜もリスト達成に協力してくれることに。

 4人でクリスマスパーティーを開いたり、四つ葉のクローバーを探したり…。物語を通して描かれる青春は、眩しいようでどこか切なさも感じられる。そして夕吾の視界のすべてが色づいたとき、驚きの真実も明らかに。そんな淡く彩られていく同作の物語に、ネット上では「頭の中に様々な色が浮かんできて、そのシーンを想像すると共に涙が溢れ出た」「色彩が戻るのと主人公の気持ちが紐解かれていく様がリンクしていてページをめくる手が止まらなかった」「終盤の展開でボロボロと泣いちゃった」などの声が集まっていた。

 灰色の世界を生きてきた青年が色彩を手に入れたとき、一体何が待っているのか。ぜひ同作を手にとって確かめてみてほしい。

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