老舗的スペースオペラ『クラッシャージョウ』の新作が8年ぶりに登場!

文芸・カルチャー

2013/3/18

 スペースオペラの老舗的ノベル「クラッシャージョウ」シリーズ(高千穂 遙:著、安彦良和:イラスト/早川書房)の最新作『水の迷宮』が2月に刊行された。SF作家として人気を博している高千穂遙の処女作であり、1983年には『機動戦士ガンダム』の人気が絶頂期を迎えていたサンライズによって長編の劇場用アニメが制作された作品だ。このときは、他にも『幻魔大戦』、『宇宙戦艦ヤマト完結編』がほぼ同時期に劇場公開されたこともあり、かなり話題になった。リアルタイムで体験した人にとっては、懐かしい話ではないだろうか。

 以後、アニメについては、その後オリジナルビデオアニメーション(OVA)として『氷結監獄の罠』、『最終兵器アッシュ』などがリリースされる一方、小説も第1巻の『連帯惑星ピザンの危機』(高千穂 遙:著、安彦良和:イラスト/朝日ソノラマ)が発売された1977年以降、21世紀に入っても続巻(早川書房)が刊行され続けており、長い歴史を誇っている。

 “クラッシャー”というのはひとつの職業だ。「宇宙のなんでも屋」といわれ、当初は惑星開発を主に請け負う荒くれ集団のような体を成していたが、最初にクラッシャーと名乗るようになったクラッシャーダンの出現により、惑星アラミスを拠点とする統制のとれた組織に様変わりした。物語上における“現在”においては、クラッシャーは非合法でなければ、惑星改造以外にもVIPの護衛、危険物の輸送や処理なども引き受け、そのための特別な訓練を受けた4人でひとつのチームを組んでおり、独自の宇宙船や機械、武器を扱う通信、戦闘、その他の知識や能力を備えた宇宙のスペシャリストとなりつつあった。

 そのダンの息子で、若干12歳のときにある事件でダンの窮地を救ったのをきっかけに、若くして一人前のクラッシャーになったのが主人公のジョウである。この事件をきっかけに、ダンは第一線から勇退し、自分のチームをジョウに譲ってメンバーのタロスとガンビーノに彼のサポートを託した。その後、惑星ローデスの浮浪児だったリッキーが密航して加わってしばらく経った状況で、第1巻の『連帯惑星ピザンの危機』はスタートしている。そして、このエピソードで王女として登場したアルフィンが殉職したガンビーノの後任としてチームの一員となってからは、この4人を主要メンバーとするストーリーが展開していく。

 小説版は基本的に1巻完結となっており、仕事の依頼を受けたジョウのチームが事件に巻き込まれ難儀しつつも、クラッシャーの高い能力や技量を駆使し、また、毎回登場する個性的なゲストキャラの協力を得て事件を解決するという、ある種ストーリーの王道が貫かれている。

 ジョウのチームが誇るスペースシャトル型の万能宇宙船「ミネルバ」をはじめとするクラッシャー独自の様々な特殊兵器を駆使した宇宙、空中、地上を問わない派手な戦闘はもちろんのこと、タロスとリッキーによる歳の差を埋めるジャレ合いや、女性が登場すると見境いなく発生するアルフィンのやきもちなど、劇場アニメでも登場したシーンは毎回お約束のごとく出てくるため、読む側にとっては『水戸黄門』的な安心感を得られるだろう。

 その一方で、起こる事件の趣向は各巻異なっており、宇宙海賊から人類以外の知的生命体、エスパー、銀河連合主席の暗殺、人造人間、魔導行者、生物の意識を読み取る陰獣、聖なる力を持つ少女を巡るサイキックな抗争等など…。毎回様々なSF的事物が背景になる。最新刊の『水の迷宮』では、その地表面の多くが水で覆われた大陸の存在しない海の惑星・マルガラスにおける銀河連合組織下の先史文明探査チームのリーダーを護衛する仕事を請け負ったジョウのチームが、長い間この惑星で続いている内戦に巻き込まれるところから始まっている。

 いずれにせよ、背後には何らかの大きな野望や陰謀が潜んでおり、それが徐々に顕になっていく展開は、変な言い方だが集中して“ハラハラ”することができるだろう。それが、このシリーズが長年たっても飽きを感じさせない一因なのかもしれない。

 なお、劇場版のキャラクターデザインを担当した安彦良和は、第1巻から作中の挿絵を担当しており、今回もそのタッチは健在。

 また、クラッシャーとはどんな職業なのか? ワープ航法とはどのようなものなのか? 人類の宇宙進出の歴史とは? といった設定上の解説は、どの巻においても文中の定番事項として無理なく入っており、シリーズ全体としては一連の時系列に沿って流れているものの、どの巻から読みはじめても難解にならないような工夫がなされている。

 劇場版を見たことがある人は、当時と変わることのないクラッシャーの世界にすんなり入り込めるはずなので、これを機会にシリーズを通して読破するのもいいだろう。もちろん、SFオペラを純粋に楽しみたい者にも胸を張って推奨できるシリーズだ。

文=キビタキビオ