「こんなに時間をかけ、考えた作品は他にない」 東野圭吾、新作を語る

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2013/4/6

こんなに時間をかけ、考えた作品は他にない――
著者である東野圭吾にいわしめた最新作『夢幻花』。
バイオ技術をキーにした新たな長編の世界は、
親しみやすい科学ミステリに定評ある著者ならではの興奮が続く。

  • アサガオに黄色い花はありません。
    しかし江戸時代には存在したのです。
    ではなぜ今は存在しないのか。
    人工的に蘇らせることは不可能なのか。
    そのように考えていくと、徐々に
    ミステリの香りが立ち上ってきました。
         ――――――――東野圭吾

    『夢幻花』
     PHP研究所 1680円
    黄色いアサガオだけは追いかけるな――。ある日、西荻窪に住む独り暮らしの老人が何者かに殺された。不幸にも遺体の第一発見者となってしまった孫娘は、祖父の死とともに消えた謎の「黄色い花」に疑問を持ち、蒲生蒼太と謎解きに乗り出す。謎の花に呼ばれるように警察庁のエリートも加わり、所轄の捜査本部と三つ巴の謎解きがはじまる。謎の花とは「黄色いアサガオ」だったのか…? 疑問が疑問をよぶ長編科学ミステリ。
    装丁:川上成夫 装画:水口理恵子

 

 かつて『歴史街道』に連載した小説をベースに、10年もの歳月を経て大幅改稿して誕生したという最新作『夢幻花』。著者自身が「ほぼ書き下ろし」と語るほど新作同様に変化したというその内容は、「この世の中にない植物を作り出す」というバイオ技術をキーにした長編科学ミステリだ。

 タイトルの「夢幻花」とはズバリ「夢まぼろしの花」のこと。現代のバイオ技術をもってしても作ることのできない花を指すが、実際、作中には、独り暮らしの老人の殺人事件に絡み謎の黄色い花が登場する。どうやら「アサガオ」と思われる花なのだが、実は「黄色いアサガオ」は江戸時代の変化朝顔の隆盛以降、姿を消した幻の花であり、まさか、それが現代に蘇った?……バイオ技術をキーに、殺人事件の犯人探しと謎の花が絶妙に絡んだミステリの世界は、さすがにガリレオ・シリーズで一気に科学ミステリを親しみやすいものにした著者ならでは。しかも、シリーズものではなく本作は単発の長編とあって、手に取りやすさは格別だろう。謎に挑む被害者の孫、捜査本部、警察庁のエリートが微妙な駆け引きを繰り広げる展開(下図参照)にも緊張感がみなぎる一方、根底には「家族」という人と人のつながりの大切さを意識した深いテーマが流れているなど、読み応えも充分だ。

 折しもガリレオの映画公開もあり、この春は東野圭吾が熱くなる予感大。もちろん、この新作ははずせない!

取材・文=荒井理恵

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