男が裸になると視聴率が上がる? 女性の性欲のナゾ

科学

更新日:2013/5/30

 前評判通り『ガリレオ』が一人勝ち状態の今期のテレビドラマ。しかし、今クールのドラマでもっとも注目を集めているのは“男性俳優の裸”が溢れかえっている点だ。

 まず、テレビ朝日系の『ダブルス~二人の刑事』では、伊藤英明と坂口憲二のシャワーシーンが“お約束”化し、『水戸黄門』の由美かおる状態に。一方、フジテレビ系『ラスト・シンデレラ』は、これまで“清純派”イメージだった三浦春馬がこれでもかと脱ぎに脱ぎ、きわどい台詞を連発。Twitter上でも「三浦春馬のエロシーンがかなりもえる」「三浦春馬がエロ過ぎて足つった」と女性視聴者のあいだで大いに盛り上がっている。また、今年の1月には、大河ドラマ『八重の桜』で西島秀俊が完璧な肉体美を披露し、大反響を巻き起こしたことも記憶に新しい。『ラスト・シンデレラ』を除いては男性俳優の裸が視聴率に貢献しているとはいいがたいが、話題性はバツグンのよう。

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 これまでもテレビドラマでは、男性のシャワーシーンなどが挟まれることは珍しくなかったが、『ダブルス』や『ラスト・シンデレラ』に挿入される伊藤や坂口、三浦の裸は、意図的に“女性ウケ”を狙って連発されていることは誰の目にも明らか。昔は“女性は男性の裸よりも内面に興味があるもの”と語られがちだったが、もはやそんな時代はとっくに過ぎてしまったのだろうか。

 アメリカの学者が性欲の解読に挑戦した『性欲の科学 なぜ男は「素人」に興奮し、女は「男同士」に萌えるのか』(オギ・オーガス、サイ・ガダム:著、坂東智子:訳/阪急コミュニケーションズ)によれば、「女性は、(男性の)体のパーツについては男性よりもはるかにこだわらないし、ペニス崇拝のある男たちと違って、男のペニスを見ることにもほとんど興味がない」という。その証拠に、男性向けアダルト動画サイトのカテゴリーには「巨乳」「本物のオッパイ」「脚とストッキング」といった項目が並ぶが、女性向けアダルト動画サイトには「体のパーツのカテゴリーはひとつも見当たらない」と書いている。しかし、例外がひとつだけある。それは「お尻」である。「女性は一般に、引き締まった、アスリートのようなお尻を好む」という。

 他方、日本の学者による『女はポルノを読む 女性の性欲とフェミニズム』(守 如子/青弓社)では、レディースコミックやハードなBLといった女性向けポルノコミックを分析し、女性の性欲について考察しているのだが、ここに興味深い話が掲載されている。たとえば、ハードなBL誌に寄せられた女性読者からの声に、「Hで、だけどHだけじゃなくてちゃんと愛もあるから好きです」という意見と、「手枷、4P、調教、といったオプションが加わり、快楽に落ちていく所なんか大好物です」という、一見相反する意見が共存しているのだ。いわば「恋愛を強調する読者」と、「ポルノ表現を歓迎する読者」に二分化しているというのである。ここから見えてくるのは、「ポルノグラフィに楽しみを見い出す自分自身を受容することが難しい女性の存在」。いくらハードなH雑誌を買っていても「愛」を持ち出さないとポルノを楽しむことができないのでは? というのだ。

 社会では、長い間、男性が性に奔放なのは許容され、女性は「ふしだらだ」と後ろ指を指されてきた。この性のダブルスタンダードは、今も是正されたわけではない。だが、女性たちが自分の性を自分の言葉でもっと語るようになれば、きっとアダルトサイトのカテゴリには、さまざまな男性の身体のパーツが並ぶのではないか。そう考えると、ドラマに登場した男性の裸が大きな話題になるのは、そうした未来の予兆なのかもしれない。ともかくドラマ制作者のみなさん、次は「お尻」で視聴率アップを目指してみる……というのも手かもしれませんよ。