「消えてなくなっても」特設サイト

小森羊仔

2014/3/7

もしも大切な存在が目の前からいなくなってしまったら……。
運命がもたらす大きな悲しみを、人はどのように受け入れるのでしょうか。
椰月美智子さんが初めて挑んだ”死生観”を問う新作。
それは優しさに満ち、多くの人々を豊かにしてくれる物語でした。

ここでは萩尾望都さん、書店さんをはじめ、発売前より応援くださった皆様の言葉を掲載しています。
皆様の声もどんどんお寄せください。

イラスト:小森羊仔

消えてなくなっても

消えてなくなっても椰月美智子

ストーリー紹介

物語の主人公「あおの」はタウン誌の編集者になったばかりの新人社会人で、高千穂を思わせる神話の国のような山中にある鍼灸治療の「キシダ治療院」を取材で訪れます。幼少期に両親を亡くし、親戚の家で育ったあおのは、血の繋がった家族というものを知らずに育ち、ストレス性の病を患っています。難病患者のどんな病も治してしまうという、どこか妖しげな治療院には、あおのと年齢の近い「つきの」という女の子が手伝いとして住み込んでいました。ひょんなことからあおのも住み込みで治療に専念することになります。

二人は規則正しい暮らしの中で、少しずつ距離を縮め、いつしかあおのの病気は回復していきます。けれど、その暮らしは、河童が庭に現れるところから急変していきます。
二人を呼び寄せたものは何だったのか——。
物語はラストに向けて一気に加速していきます。
最後まで目が離せない感動の物語です。

作品世界のイメージそのもののPVをご覧ください!

素敵な楽曲を提供してくださった篠笛奏者ことさんからのメッセージはこちら

『消えてなくなっても』椰月美智子インタビュー

山の中の治療院に流れる、不思議でおだやかな日常。
椰月美智子さんの『消えてなくなっても』は、目に見えない世界をはじめて正面から扱った、著者の新境地となる作品。全国の書店員さんからすでに「号泣した!」とのコメントが多数寄せられているこの話題作について、お話をうかがった。

椰月美智子
著者 椰月美智子(やづき・みちこ)1970年神奈川県生まれ。2001年、『十二歳』で第42回講談社児童文学新人賞を受賞し、2002年にデビュー。
07年に『しずかな日々』で第45回野間児童文芸賞、第23回坪田譲治文学賞を受賞。著書に『るり姉』『恋愛小説』『かっこうの親 もずの子ども』『その青の、その先の、』『シロシロクビハダ』『坂道の向こう』『フリン』『ダリアの笑顔』『みきわめ検定』など多数。
(写真:松田優子)

お天道さまが見ているから
悪いことしちゃいけないよ。
子どものころ、よく言われました。
目に見えない世界のことを信じるのは
むずかしいですよね。
でもこの世に存在するすべてを肯定できたら、
人はもっと豊かに、
もっと謙虚になれると思うのです。椰月美智子

世の中には不思議な力を
もった人がいる、というのが
自然な感覚です。

『しずかな日々』『るり姉』などの作品で知られる人気作家・椰月美智子さんは幼い頃より、目に見えない世界の存在を実感しながら生きてきた。
「子どもの頃から、なぜかお墓参りに行くのが好きでした。お墓に行けば死んでしまった大好きな人たちに会えるんじゃないか、という気がしていたんですよ。死後の世界、人間の魂、妖怪、神様、宇宙人。そういったものは普段感じることができないだけで、確かに存在しているんじゃないか、という気がするんです」
 最新作『消えてなくなっても』は、そんな椰月さんの不思議なものへの思いがつまった長編である。物語の主人公・あおのは自然豊かな田舎町で、タウン誌編集部に勤務している20代の青年。ある日彼は、町の住人から「拝み屋」と呼ばれている、山の中の治療院を取材することになった。
「舞台としてイメージしたのは宮崎県の高千穂です。見えない世界を描くにはぴったりじゃないかと思って、取材旅行で初めて訪れました。実際訪れてみると、山が多くて、由緒ある神社もたくさんあって、やはり独特の雰囲気の町でしたね」
 治療院を営む節子は、患者の悩みを千里眼のように見抜き、マッサージや気で治療するという不思議な力の持ち主だった。ストレス性の病を抱え、日々強い不安感に悩まされていたあおのは、しばらく治療院に滞在することを決心する。
「わたしが生まれ育った小田原は、古い町のせいか、拝み屋さんや占い師さんが多いんです。商売でしている方もいれば、お金を取らずにアドバイスをしている方もいる。そういう方と接する機会があったので、世の中には不思議な力をもった人がいる、というのが自然な感覚です。節子はわたしにとって理想の拝み屋さん。宗教っぽくならず、自分の価値観を押しつけない。こんな人がいたらいいだろうな、という思いから生まれました」
 明るく頼りがいのある節子、その手伝いをしながら気ままに毎日を送っている、自称小説家志望の女性・つきの。ちょっと風変わりな二人との共同生活は、あおのにとって驚きと発見の連続だった。
 蝉の声を聴きながらの草むしりや、つきのとの他愛ない口げんか、見えない世界をめぐる節子との会話など、山の中の治療院に流れる“しずかな日々”を、著者はあおのの心情に寄り添いながらていねいに描いてゆく。
「大人になってふと、子どもの頃に感じた日の光や風の強さを思い出すことってありますよね。その時になって初めて、なんでもない日常がいかに幸せに満ちていたかに気づかされる。あまり小説や映画では扱われませんが、わたしはそういう普通の一日を描きたいんです」
 あおのの内的変化を象徴的にあらわすシーンがある。節子とともに庭を眺めていたあおのは、ふいに「庭木の名前を全部知りたい」と考えるのだ。図鑑を手がかりに少しずつ木々の名前を覚えてゆくあおのの横顔には、もう不安の色は見られなかった。
「ものの名前が分かると、それだけで距離が近くなりますよね。どうでもいいと思っていたものでも、なぜか愛おしさがわいてくる。植物の名前に興味を示したことで、あおのと世界との距離が縮まったんです」
 台風、お祭り、河童との遭遇、優しい女性との出会い。さまざまな出来事とともに、キシダ治療院での日々は過ぎてゆく。そして印象的な一夏が終わるころ、物語はクライマックスに向けて大きく動きはじめるのだった。
「この作品は子どものころ読んだ『つきよのあおいさる』という児童書を念頭においています。サーカスに買われていった子猿が、そこを月の世界だと信じて幸せに暮らす、というお話で、大人になっても考えさせられる部分が多い。いつか作品に使いたいなと思っていました。あおのとつきのという名前も、この本のタイトルから取ったんですよ」
 物語終盤、あおのには大きな環境の変化が訪れる。しかし、彼はもう殻をかぶって、心を閉ざすことはない。悲しい運命さえも受け入れて、新たな一歩を踏み出してゆくあおのの姿に、読者はきっと感動を禁じえないだろう。
「目に見えない世界を描いてはいますが、何かを押しつけるつもりはありません。こういう世界もあるんじゃないかな、と思ってもらえると嬉しいですね。見えないものを信じることで、人間は今よりもっと謙虚になることができると思うんです」
 タイトルは『消えてなくなっても』。その先につづく言葉を噛みしめながら、わたしたちを取りまく不思議な世界に思いを馳せてほしい。

取材・文=朝宮運河

楽曲提供の篠笛奏者ことさんからのメッセージ

PVに素敵な楽曲を提供してくださった篠笛奏者・ことさんから、メッセージが届きました。

神楽笛/篠笛奏者 こと
神楽笛/篠笛奏者 こと広島県出身。北広島町苅屋形神楽団の団員である父親の影響を受け、5歳から神楽笛を始める。小中学校で吹奏楽部に所属、フルートを吹く。15歳で苅屋形神楽団に入団。以来、県内各地での神楽競演退会にて数々の賞を受ける。19歳から篠笛を独学で始めると同時にピアノなど様々な楽器とのコラボレーションを展開。
現在、東京を拠点に国内外で演奏活動中。
http://fuekoto.com/
(写真:innovation artists)

 夜帰宅してからさっそく読み始め、今朝起きてまた読み、今読み終わりました。すごく興味深く面白いストーリーに心動かされました!
 基本的に人は愛の存在を知るために生まれて来ること、人の役に立ちたくて生まれて来ること、深いところで優しく教えてくれるようなそんな物語だと感じました。
 また、不思議な世界の話をしながらもそれをあくまでもさわやかに物語っているところもすごいさじ加減だと思いました。
 科学や機会などに頼り切って生きて来た現代人も、ここから先は何か目に見えない「それでも確かに存在するもの」を認めざるを得ない状況にある今、素晴らしい切り口で世の中に訴えかける力がある作品だと思います!
 素敵な作品に出会わせていただき、どうもありがとうございます!
 この曲を作ったときの私のストーリーもお伝えします。今から2年以上前になるのですが、1人でヨーロッパを旅して帰国した次の日、どうやっても全 然眠れなくて……。それが不思議なことに本当に美しいブルーグレイの大自然の中を自分が鳥みたいになって飛んで、ひたすらその世界を天上から見ているのです。不思議すぎて、これは夢だと思ったのでおそるおそる目を開けたら、やはりそこは部屋でした。やはり夢か……と目を閉じたら驚いたことに完全にまたそちら側の世界でした。「なんじゃこりゃ!?」と思って、何度も目を開けたり閉じたりしながらその美しい世界を楽しみ、朝を迎えたのでした。ちなみにそのときの景色はアイスランドの大自然によく似ていて(私は2011年にアイスランドに行きました)、崖がずっと続いていてでもアイスランドには見られなかった綺麗な花もたくさん咲いていました。
 『消えてなくなっても』の中で、最後につきのとあおのが見た断崖絶壁の景色と少しでも重なるところがあれば……などと勝手に想像を膨らませてみました。

消えてなくなっても

『消えてなくなっても』

著:椰月美智子
挿画:小森羊仔

幽BOOKS(KADOKAWA)
価格:1,000円(税抜)