16年間、カラスをペットとして飼い続けて分かったこと【けっこうカワイイ?】

コミックエッセイ

2014/11/14

 先日、車で田舎道を走っていたら、道路の真ん中に黒々としたものが。スピードを落としてよけると、目に入ったのは猫の死体と数羽のカラス。猫は見るも無残な姿に。カラス憎し、猫あわれ…。

 では、これが逆だったらどうだろう? 傷ついたカラスを見ても、多くの人はおそらくたいしてなんとも思わないのではないだろうか。

 ところが、そんなカラスを助けた人がいる。それが漫画家の犬養ヒロさん。元々動物看護士として動物病院に勤務したことがあるくらい、根っからの動物好き。ある日、猫に羽をかまれて飛べないでいたハシボソカラスのヒナを見つけたそうだ。そこでかわいそうに思った犬養さんは、愛情深い親ガラスに襲われつつもなんとか保護。傷が治ったら自然にかえすつもりが、動物病院で一生飛べないと診断されたために、自宅で飼うことに。コミックエッセイ『カラス飼っちゃいました』(ぶんか社)で、かいがいしく世話をするカラスライフを披露する。

 そもそもカラスを飼うことができるのか? NPO札幌カラス研究会によると、カラスを含める野生動物をペットとして飼育することはできないそうだ。ただ、傷ついたカラスを「傷病鳥獣」として保護した場合、元気になるまで飼育することは仕方がないとの見解を示している。ということは、やはりカラスをペットにするなんて貴重な経験なのだ。誰も飼おうと思わないだろうから、うらやましく思うこともないだろうけれど。

 そして、実際、この本を読むとカラスがいかにペットに向かないかがよくわかる。スズメやカラスの巣の下がフンだらけであることからわかるように、鳥類はよくフンをする。空を飛ぶときに身を軽くするため、ひんぱんに排泄を繰り返すのだ。カラスも例外ではなく、犬養さんもカラスの“かぁ子りん”のうんこの処理に日々明け暮れている。しかも、犬養さんはほかの犬や猫とともに放し飼いに近い状態で飼っている様子。かぁ子りんは、鳥の特徴である尿と便が一緒になったものを所構わずべちゃっと落とす。このため、犬養さんは「うんこ鳥」と何度となくかぁ子りんをののしっている。

 さらに、かぁ子りんはとてもくさいらしい。きれい好きのため、寒い冬でも天気が良い日にはベランダで水浴びをするそうだが、それでもスパイシーで野性的なにおいが消えないという。そもそもハシボソガラスは、墨汁とキュウリを足して2で割ったようなニオイがするそうだ。

 残念ながら、とても飼おうとは思えない。犬養さん自身「カラスだけは拾うな!」と警告する。それでも、犬養さんはかぁ子りんが2013年12月に最期を迎えるまで16年もの間、世話し続けた。そして今、かぁ子りんのことを思い出すたびに、泣けて泣けてたまらないという。それはなぜか。ご存じの通り、カラスはとても頭がいい。ある研究によれば犬よりも賢いそうだ。そんなかぁ子りんは、ものすごく犬養さんになついていた。

 かぁ子りんは普段「がぁがぁ」と鳴くが、犬養さんが買い物から帰ってくると、「ワンワン」と犬の鳴きまねをして大興奮しながら迎えてくれる。大好物の生肉をちらつかせると、すかさず甘えてくるそうだ。エサの器や小屋の床を壊すほどの破壊力を持つくちばしで、犬養さんの手をつんつんと優しくつついて肉をおねだりする。そして、「グェ~」と幸せそうな声を発しながらガツガツと食べる。

 また、カラスを触ることさえないので知る由もないが、かぁ子りんは頭をなでられるのが好きらしい。犬養さんがその小さな頭を指でなでてあげると、うっとりと気持ちよさそうな顔をして目をつぶるという。

 その様子はまるで犬と同じ。いや、従順な犬よりも独立心の強い猫よりも、怒ったり喜んだり感受性がとても豊かだ。害鳥として凶暴性ばかりが目立つカラスだが、実は心をもった生き物であることがわかる。

 都会にカラスが増え、人間とのにらみ合いが続く昨今。互いの心の距離をもっと縮めることができたなら、カラスとのゴミ捨て場戦争によりよい打開策を見出し、仲良く共存できる道を探すことができる…かもしれない。

文=佐藤来未(Office Ti+)