「本を読んだら忘れない」ための方法とは? スキマ時間を使って効果的な読書を!

ビジネス

2015/7/11

 書評の仕事をするようになってから、読書の機会は増えたと思う。しかし元々多読していたほうではなく、月に10冊を超えないレベルである。ところが『読んだら忘れない読書術』(サンマーク出版)の著者である樺沢紫苑氏は、月に30冊の本を読破するのだという。……マジデスカ。まともに測ったことはないが、私はそんなに本を読むのが早くない。1冊の文庫本を読了するのに、おそらく2日はかかるだろう。それも結構な時間を費やして、である。なのでこの数字から考えるに、私がどんなに全力で頑張ったとしても、月に読めるのは15冊が限度ということになる。それを樺沢氏は、倍の量をこなすというのだ。読むスピードもあるだろうが、おそらく違いはそれだけではないはず。一体どのような読み方をしているのか、俄然興味が湧いてきた。

 精神科医である著者は講演などで移動することが多いらしく、その際の「スキマ時間」を使って読書をしているのだという。都内のサラリーマンでいえば「通勤時間」などに相当すると思うが、それは誰でもやっていることなのでは……。しかし著者はこうも書いている。「電車でスマホをさわるのは最大の時間の無駄である」と。要はメールの返信をスマホでやるのは時間がかかって仕方ないし、メールの受信を頻繁に確認するのは効率が悪いということだ。確かに電車内では大半の人がスマホをいじっており、本を開いている人はほとんど見かけない。今や、電車で本を読むのは少数派なのである。本をたくさん読みたければ「電車内ではケータイをいじらず本を読め」というのが著者の主張だ。

 本を読む時間は確保できるとして、問題は表題でもある「読んだら忘れない」という部分。筆者は主に「アウトプット」と「スキマ時間」を意識しているという。アウトプットとは人に内容を話すなどの、いわゆる「発信」である。本書曰く「最初のインプット(読書)から7~10日以内に3~4回アウトプットする」と、記憶に残るのだそうだ。筆者はその手段として、本にマーカーで線を引き、人に感想を話し、ツイッターなどでつぶやき、さらに書評を投稿している。確かにこの手順なら、本についての内容を記憶できるかもしれない。しかし、これって微妙にハードルが高くないか? 本に書き込むのを嫌がる人もいるだろうし、いちいちつぶやくのが面倒くさい人もいるだろう。自由時間の少ない社会人には、少々難しいのでは……。

 一方で「スキマ時間」のほうは意外と実践的かもしれない。電車に乗っている時間など「空いた時間」に本を読むのだが、時間制限があるのがポイント。制限があると緊張感が生まれ、ノルアドレナリンという脳内物質が発生して記憶力が強化されるというのだ。また自ら「次の駅までにここまで読もう」と目標を設定すれば、ドーパミンという脳内物質が分泌されて記憶に役立つらしい。これならば効果としては「アウトプット」に及ばないかもしれないが、手軽に実行できるという点では優れている。

 以上のように、本の内容を記憶しておくにはそれなりの努力が必要となるが、そうすることで何のメリットがあるのか? これについて筆者は「自己成長」をアピールしている。本には先人たちの成功談や失敗談が書かれており、それを参考にすることで自身の選択肢が増え、より早い時間で次のステップに進むことができるというのだ。本の知識だけですべてがうまくいくわけはないだろうが、予備知識が最初からあれば物事がよりスムーズに進むはず。結果として成功を手にすれば、それは本のメリットが活かされたということだ。そうやって成長していくことこそ、本の正しい読み方なのだと樺沢氏は説く。

 本書では、著者の体験を通して読書の意義や、本の素晴らしさが目いっぱい語られている。本当に本が好きなのだなと思う一方、読書をしない人への配慮にはやや欠ける部分を感じた。「ほとんどの人の仕事、生活は無駄だらけ」とか「本を読まない人は『我流』である」など、言っていることは分からなくもないが、やや本の効果を強調しすぎのような印象を受けた。とはいえ、本が好きな人には共感できる部分も多いだろう。「読書好きだが、もっと効果的に本を読みたい」という方にオススメできそうではある。

文=木谷誠(Office Ti+)