「僕はもう通り魔みたいなもの。悪口を言えれば誰でもいい」小野ほりでいインタビュー

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/19

何かを書くには、どちらか極端に振り切らざるを得ない

――悪く言えばそうですが、良く言えば片方だけに肩入れしない、とも言えますね。

小野 主義主張というものは、何を言っても、ある程度は“正しい”とされるものだと思うんですよね。Aという主張をしたら、それに当てはまる人にとっては正しくなる。その反対のBという主張をしたら、やっぱり一定数正しいと思う人はいる。シーソーの真ん中を押しても意味がなくて、一つのコラムを書くときはどちらか片方に振り切って、別のコラムを書くときはその真逆の方向に振り切って、ぎっこんばったんしているイメージです。“誰にとっても正しい”ということを追求すると、何も言えなくなってしまうんですよね。だったら、極端なことを言って、分かりやすく間違ってる方がいい。

――エッジを立たせるために、“作り物の悪口”をこしらえているんですね。本心から出たものでないとなると、ネタ出しするのが大変そうです。

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小野 先ほど、基本的にどれも“自分の立場”としては書いていない、とは言いましたが、自分の立場がまるで何もないわけではなく、「蝉ガール」や「Twitterでモテたい女子」の場合は、どちらかと言うと僕がイラついていることをそのままおおげさに書いたものです。逆に、「繊細チンピラ」なんかは、自分で自分を叩いているようなところがあります。僕自身がまさに繊細チンピラに当てはまると思うので、僕のような人間にイラつく人の立場になってみて書きました。繊細チンピラの悪口を言っているようでいて、ただの自虐です。だから、こういう系の記事をネットで書く場合、記事に文句をつけてくる人は、僕をかばってくれているように思えるんですよね。

ミカ先輩が「繊細チンピラ」などの用語を教えてくれて、エリコちゃんが驚いているシーン

――記事で自分を傷つけて、その記事を叩いてくるコメントを見て傷を癒す……。

小野 だから、この本を読んでネットの世界のことをよく知った気持ちになっていたらダメなんです。書いてあることを素直に受け取らないで、気をつけながら読んでほしいです。1冊を通して読んだら矛盾だらけなんですから。そもそも、「蝉ガール」や「ふかん中毒」、「繊細チンピラ」などの言葉を、あたかもそんな言葉が存在するかのように書いていますが、僕が勝手に作っただけの適当な言葉ですからね。これらの言葉を今後流行らせていこう、と意気込んでいるわけでも決してないです。なのに、ネットで連載していると、「こんな言葉、存在しないじゃないか!」と怒る読者がいたり、「繊細チンピラに絡まれた」とかツイートする人がいたりするんですよね……。僕、ときどきTwitterで「繊細チンピラ」とかで検索しているんですけど……。うわぁ、この人、こんないい加減に作った嘘の言葉使っちゃってる、と思いながら見ています。

Twitterで人気者になる方法と、なった後

最後に、せっかくなので本書のタイトルに『ツイッターくらいはモテさせろ~』にちなんで、『ダ・ヴィンチニュース』のTwitterアカウントが人気が出る方法を聞いてみたのだが……小野さんの口から意外な答えが返ってきた。

小野 僕、そもそも企業アカウントってあんまり好きじゃないんですよね。だってズルいじゃないですか。企業のアカウントってだけで一つギャップがあるので、どうでもいいツイートをしても、それだけで少し喜ばれるから。普通の人と比べて、ハードルが低いなぁと。そういうどうでもいいツイートにイラつく僕のような人間もいるので、無難かつ意味がありそうなのは、ニュース記事の告知の際に、記事に載っていないこぼれ話を少し添える、とかでしょうか。でも、そもそもですが……、フォロワーなんて増やして何になるの、と思います。

――??

小野 僕も結構頑張ってフォロワー増やしたんですけど、Twitterのフォロワーって、何も助けてくれないんですよ。例えば、一瞬で読むことができる漫画とかを描いてツイートすると反響があるんですけど、もっと手間かけて、「長い文章書きました」とか「何かの商品を作りました」とかの大事な告知をしたときに、全然反応してくれないんですよ。ツイッターで求められているのは、4秒くらいでパッと見終わるコンテンツくらいで、彼らはリンク先に飛ぶのすら億劫なんですよね。

――ああ、分かります……。

ここまで話した小野ほりでい氏は、最後にこう付け加える。「今回の話や、本の内容、ネット上でごちゃごちゃ言われていることなんて、ネットをしていない人が何か一言バッサリ言えば、ガラガラ崩れ落ちるものだと思うんですよ」。ここまでの話のすべてが台無しになる一言だが、もし、ネットなんてほとんど見ない(またはライトなネットユーザー)人が本記事を読んだら……、きっと1割も共感してもらえない、そんな気がする。

取材・文=朝井麻由美