「ひとりきりの私をさらけ出す」―大人気ブロガー・ゆんころが処女小説にこめた想いとは【インタビュー】

文芸・カルチャー

2015/12/10

 2015年11月、ひとりの女流作家が誕生した。彼女の名前は小原優花。通称“ゆんころ”と言われれば、人気ブロガーの“ゆんころ”さんだと分かる人も多いだろう。

デビューのきっかけとなった「ゆんころブログ☆」でファッションやメイク、ダイエット、自撮りテクニック記事などを発信し始めると、若い女の子を中心に人気を集め、1日に110万件を超えるアクセス数を記録。ハウツー記事だけではなく、偽りのないまっすぐな言葉で語られる日記を読めば、彼女の確かな文章力に気づかされる。

処女作となる『蒼い闇』は、10代の女の子が壮絶な過去を振り返るところから始まる。義父からのDV、中学時代のいじめ、高校時代に手を染めた犯罪……。たたみかけるようなスリリングな展開とリアルな心理描写は、どのようにして生まれたのか。単独インタビューで明かしてもらった。

「ゆんころ」こと小原優花さん

――――作家デビューおめでとうございます! 小説を書くことになったキッカケから教えてください。

「ありがとうございます! 今回のお話は、作家の新堂冬樹さんからプロデュースしたいとお話をいただいて決まりました。小説家デビューは小さいころからの夢だったので、とてもうれしかったです」

――小さいころから読書が好きだったんですか?

「はい。小説家になりたいと思った原点は、保育園のときに読んだ『エルマーの冒険』でした。ひらがなが分からなくて、これなんて読むの? って何度も親に聞きながら解読するのが面白くて。その頃から漠然と『私も物語を書く人になりたいな』と思うようになりました。当時書いていたのは、黒猫が魔法使いになる物語で、親には『これまだ続きがあるんだよ』って話していたんですけど、そういえば続いてないです(笑)。小学生のときに書いた読書感想文が区のコンクールで優勝したこともありました」

――執筆開始から完成まで三年かかったと聞きました。

「本当はお話をいただいてから一年くらいで完成させる予定だったんですけど、納得のいく文章が全然書けなかったんです。ブログで発信しているような表面的な言葉だと、全くおもしろくなかったんですよ。新堂さんに書けないかもしれないって相談したら、『大それたエピソードじゃなくていい。少女の生き様にリアリティがあっておもしろいからどんどん書いたほうがいい』と励ましていただいたのと、その頃ちょうど出会った本の言葉にも勇気をもらって、一気に筆が進みました」

――執筆で悩んでいたときに“出会った本”とは?

「アドラー心理学の『嫌われる勇気』です。この本には、『何かをするときに間違えていると指摘されるのは、それは相手が感じる課題だ。自分の考えを捻じ曲げてまで人に好かれようとすることは、その人のためだから自分のためではない』というようなことが書かれていて、あ、評価されることに怖がっていても仕方ないんだって思ったんです。小説を書くときの私は、普段見せないひとりきりの私をさらけ出すようなものだから、知らず知らずのうちに嫌われないような言葉ばかり選んでいたんです。それって、ただの偽善者ですよね。この本を読んでから、人に見せない自分を評価されるのも、逆に面白いんじゃないかなと思うようになって。それからは、悩んでいた三年間はなんだったんだろうってくらい一気に書きました。25歳という節目にピリオドを打ててよかったです」

――表現することに新たなステップに入ったんですね。

「考え方が一気に変わりましたね。今まではブログの批判的なコメントにも申し訳なさを感じていたんですけど、今では自分が間違ってないと思うことには『それはあなたの感覚だから押し付けないでください』と、ハッキリ言うようになりました。友達からは、『最近やたら戦っているね』なんて言われているんですけど(笑)」

――『蒼い闇』は、10代の少女ユウカが、家庭や学校でのつらい体験を乗り越えて成長する物語です。このテーマを選んだ理由は?

「小説にはいろんなジャンルがありますが、私が書けることは何かと考えたとき、同世代の子たちが共感できる内容にチャレンジしたいと思いました。そこでスポットを当てたのが、ひとりの少女が大人になっていくまでの過程です。10代って学校でコミュニティが作られて、友達や恋人との出会いが運命を変える。その期間の成長は、長い人生に大きく影響するものですよね。その短くも尊い期間を、夜明けを迎える寸前の“蒼い闇”に重ね合わせて描きました」

――ユウカが中学時代に体験するいじめのエピソードは、胸が痛みました。

「自分が被害者のいじめと、目の当たりにしているけど助けられないいじめ。この二種類のいじめを両方とも書きたいと思っていました。中学時代のユウカが仲良くなるアヤは、誰にでも優しく接するヒーローのようだけど、裏では気に入らない人を姑息な方法で追い詰めます。ヒーローって悪い人をこらしめても許されるけど、それはヒーローにとって“都合の悪い人”なのかもしれないですよね。人をある一面だけで判断することがいかに危ういかも伝えたかったんです」

――同級生のシオリを「調子に乗っている」といじめるアヤとのやり取りは、とてもリアリティがありました。

「実は、いじめのエピソードはほとんど実話に近いんです。お母さんに産んでもらって大事に育ててもらったのに、いじめられているときは人として価値がないんだって思い込んでしまうんですよ。それって自分の人生を捨てているようなもので、当時は生きていることが本当につらくて苦しくて……。今の時代はスマホもSNSも普及して、私よりもっとつらい経験をしている子も多いと思うんですけど、他人に何か言われたからってダメだと落ち込む必要は全くないと思うんです。誰かの意見が自分のすべてではないし、その環境から抜け出せばあなたの良さに気づいてくれる人がきっと現れるんですから」

――本作はあとがきがないことも特徴的ですが、あとがきを書いていない理由は?

「3年間かけて書き上げたときに、自分ができることをすべて出しきったから、あとがきで書くことが何もなかったんです。これが完全なドキュメンタリーだったらあとがきがあってもよかったかもしれませんが、書ききった時点でもう私の物語ではありませんし、あとは読んでくださる方がそれぞれに受け止めてくださればそれだけで十分だなって。この物語を通して自分を振り返ってもらったり、まさに今どうやって生きていけばいいんだろうって悩んでいる方の考えるキッカケになったらうれしいです」

――本作でもブログでも、小原さんは丁寧に言葉を選んでいる印象がありますが、言葉を綴るときに気をつけていることは?

「自分が伝えたい感情に近い言葉を選ぶように心がけています。よく、そんなつもりはなかったのに攻撃的に聞こえてしまったりすることってありますよね。それって私はもったいないと思うんです。言葉でコミュニケーションをとることは人が持つ素晴らしい能力のひとつですし、その言葉で自分を表現できる人になりたいと目指していたからこそ、どんなときも言葉の選び方には慎重になっています」

――本作を書き終えたばかりですが、二作目の構想はありますか?

「今回書き終えてみて、同世代の子たちが抱えている問題を描くことが得意なのかなって気づきました。ガラスに触れるような感覚で書くときもあったんですけど、そこを書くからこそ小説家としての自分の存在意義があるのかもって。次回作を書かせていただけるなら、同世代や10代の子たちに共感してもらえる内容にしたいです。今回は重たいテーマでしたが、次は恋愛のことも入れてみたいです」

――モデル、ブランドプロデュース、執筆活動と幅広く活躍される小原さん。最後に、これから挑戦してみたいことを教えてください。

「とてもありがたいことに、今まで自分が興味を持ってきたものすべてが、現在のお仕事につながっています。だから今後も、新しいことに興味をもって挑戦していきたいです。でも、お仕事につながりそうだからチャレンジしたいということじゃなくて、いつか何かのキッカケになるかもしれないってくらいに思っています。たとえば今は、海外経験を増やしたくて、近々留学することに決めました。ブログで海外の方からコメントをいただいたときに、その言葉を正確に受け止められないのがもどかしかったんです。英語を勉強しながら海外の文化に触れられたら、また新しい世界が広がるのかなと楽しみになっています」

――さまざまな分野で成功されていても、挑戦し続けることがすごいです!

「今いるところに落ち着けたら、どんなに楽なんだろうと思います(笑)。でも、時間は誰しも平等に流れるものだから、記憶にも残らない時間を作るのはイヤで。プラプラ遊んで適当に過ごしていたなって時間じゃなくて、あのときにしていたことが今につながっているんだって満足できる過ごし方をしたいんです。そのためには自ら積極的に挑戦していくことが大切で。『どうして今から留学するの?』って驚かれることもあるんですけど、他の人がイメージした“私らしさ”を意識していたら新しい挑戦はできないと思っています。むしろそこを壊していくことが、新しい自分を見つけるキッカケになるはず。これからも好きなことを本気でやり続けていきたいです」

――小原さんの挑戦に勇気をもらえる人がたくさんいると思います。ありがとうございました!

■『蒼い闇
著:小原優花
価格:1200円(+税)
発売日:2015年11月27日(金)
出版社:KADOKAWA

取材・文=松本まりあ