春画本に描かれる江戸庶民のリアル ―不倫の真っ最中に夫の愚痴をこぼす人妻

暮らし

2016/1/5


『春画のすべて』(エディキューブ/双葉社)

【本稿には刺激的な画像が含まれます。ご了承の上、お読みください。(編集部)】

 恋を知らない少女が大人の恋愛を読み物でのぞき見して擬似恋愛をし、オトナになったらなったで冬の寒い日に暖を取りながら頬杖ついてエロ本のページをめくり(傍らにはオトナのオモチャが!)、夏になると川辺で恋しい人とデートをし、花火を見ながらも考えるのはその後ふたりですることばかり……。

 これ、いまを生きる女性について書いたものではありません。『春画のすべて』(エディキューブ/双葉社)に収録された春画から読み取れる、お江戸のリアルな色恋模様&セックスカルチャー。永青文庫の「春画展」が盛況のうちに幕を下ろしましたが、いったん火が点いた春画への興味は消えないもの。フルカラーで春画の名作とともに江戸の庶民文化や恋愛事情をぎっしり詰め込んだ1冊は、そんな春画展ロスな人から初めて春画に触れる人までが満足できる1冊なのです。

 書入れ(背景に書き込まれたセリフや状況描写)の一部が現代語訳されているので、絵だけを見ているときよりライブ感が増します。たとえば下の絵は長屋の人妻が不倫の真っ最中に夫の愚痴……しかも「モノがお粗末」と浮気相手にいって聞かせているシーン。本音あふれる男女のやり取りからはエロス以上に、人間味があふれ出ています。

 美術館ではじっくりと鑑賞しにくいディテールにまで目を凝らすことができるのも、春画本の醍醐味。春画で人気のモチーフ・吉原の遊女を描いた作品でも、アンダーヘアを処理している遊女の真剣な表情、そしてそれとは裏腹な禿(廓に買い取られた子ども)のユーモラスな表情まで、そのすべてが活き活きとしていて見逃せません。さらに、江戸時代の豊富なアダルトグッズやアクロバティックな仰天体位は、ぜひ本書でご確認を。

 春画は江戸時代、男も女も老いも若きもこぞって楽しんだ極上のエンタテインメント。歌麿や北斎らが描こうとした時代背景を読み解きながら、当時の人たちと同じテンションで私たちも本書のページをめくり、ニヤニヤしたりドキドキしたりしながら耽溺しようじゃありませんか。

文=三浦ゆえ

双葉社の12月おすすめ書籍を紹介中!