全世界で愛されるダメ少年をご存じですか? 大人でも楽しめる児童書

文芸・カルチャー

2016/3/8


『グレッグのダメ日記 やっぱり、むいてないよ!』(ジェフ・キニー:作、中井はるの:訳/ポプラ社)

とんでもなくダメな少年が書いているのに 、全世界45の言語に翻訳され、シリーズ累計1億5000万部を記録した、超有名な日記をあなたは知っているだろうか。

グレッグのダメ日記 やっぱり、むいてないよ!』(ジェフ・キニー:作、中井はるの:訳/ポプラ社)は、主人公のグレッグというダメダメな少年が綴る日記の体をとった本作は、 笑いあり、教訓あり、深みあり、全米ナンバーワンの児童書だ。

日本でも小学中学年から、高学年を中心に、男女問わず読まれているという本書だが、大人が読んでも面白い。私も寝る前に少しだけ目を通すつもりで開いたのだが、そのまま吸い込まれるように読み続けて、結局一晩で全て読み終わってしまったほどだ。

内容はとても簡単。子どもとして様々な願望を持つ少年のグレッグ。しかし大変なことはしたくないと、ラクをしようとして失敗する。はたまた家族のトラブルに巻き込まれ、大変な目に遭うといったような、タイトル通りの「ダメな生活」が描かれている。

本書では、グレッグの家族の話が多く見受けられた。

アイスクリーム屋でアルバイトを始めた兄と、その様子を見に行く過保護な母。老人ホームの家賃が値上がりし、住むことができなくなったため、居候することになった祖父。なぜかペットの豚が二足歩行で服を着始め、人間のように振る舞い出すというファンタジーな展開もある。

グレッグ自身は、宿題を天才の下級生に任せてやってもらったり、お小遣い稼ぎのためにレモネードを作り、友人のロウリーと販売したり(結局失敗する)、ボランティアで公園の清掃 したり(結局嫌になって逃亡を図る)、学校の希望者が集うキャンプに行ったり(ひょんなことから車を壊してしまったので、父親にバレる前に逃亡!)する。

こんなダメダメなグレッグが、ここまで愛されている理由は一体なんなのだろうか?

一つは、グレッグの行動力にあると思う。グレッグは結局失敗したり、怒られたりすることになるのだが、人一倍行動力がある。

それも、「楽をしたい」「お金がほしい」「人気者になりたい」という、全く崇高でもなんでもない志から動き出すのだ。それでいて機知に富んだ発想、行動はいかにも枠に囚われない、アメリカ人らしく感じる。そのユーモアのある行動力が、日本人の児童書にはない「ゆるさ」を表現していて面白いのかもしれない。

また、「児童書なのに」と驚いた表現もある。公園の清掃ボランティアをしている際、逃げ出したグレッグの元に、さらなる逃亡者が現れる。それが万引きをして捕まり、社会奉仕をしていた高校生のビリー・ロットナー。

グレッグは「そんなヤツが、ボクがかくれているところに来るなんて、かんべんしてほしいよ」と率直な意見を漏らす。日本の児童書なら、主人公が万引きについて考えたり、「悪いことだよ」と注意したりするのではないだろうか。

しかし、万引きをしたビリーにも言い分がある。盗んだのはミミズ・グミキャンディ。なんでも、小さい頃、分け合って食べなさいと与えられたグミキャンディをいつも兄に一人占めされていた思い出があり、「やっと、一袋全部、自分で食べられた」と語る。

万引きをした方にも言い分があるのも、児童書らしからぬところ。

さらに、農場体験のキャンプでは、グレッグと友人たちが女子のキャビンにしのびこみ、没収されてしまったデオドラント剤を盗む場面がある。

ここでグレッグは「ボクは人のものをぬすむなんて、いい気分じゃない。バレる前にバッグを、女の子のキャビンにもどすべきだ」と発言する。ダメダメなグレッグだが、言うべきところはしっかり言う。

児童書だが、「悪いところ」が描かれており、それに対して主人公が「自分の意見」を持っているところにも、本書の魅力があるのではないだろうか。空気を読み、周囲に流されやすい日本人にはない気質を持つグレッグが、心のどこかでみんな羨ましいのかもしれない。

文=雨野裾