性病に罹るリスクよりぬくもりが欲しい。男が男にカラダを売る、「ウリ専」という仕事のリアル【ゲイの”本”音③】

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更新日:2020/5/11

 しかし! これが彼らの本音なのか。リアルな意見なのか。本書をファンタジーではないと言い切れるだろうか。正直、そんな疑問は解消されなかった。そこで今回、ウリ専経験者とコンタクトを取り、よりリアルな声を聞いてみた。

 「ウリ専時代の話を聞かせてほしい」というリクエストを快諾してくれたのは、たむさん(20代後半)とチロさん(30代前半)のふたり。両者とも非常に爽やかで、一見そんな過去を持っているようには見えない。

 彼らがどうして「カラダを売る」という道を選んだのか。その理由は、「ぬくもりがほしかったから」だという。中高といじめられっこだったたむさんは「自分を必要としてほしかった」と笑いながら語ってくれた。チロさんも「家にいたくなかった」という理由から、ウリ専へと走ったそうだ。

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 しかし、チロさんには目的ができる。それは「専門学校へ行くこと」。その目的ができてからは、さらに精力的に働いた。昼間のバイトをしながら、夜は終電までカラダを売る。そうして稼いだお金は200万円ほどにまでなり、見事専門学校へ入学するという目的を果たしたのだ。

 そんな彼らに「カラダを売ることで危険な目に遭ったことはなかったのか」と尋ねたところ、チロさんは「性病にかかっちゃいました」とあっけらかんと答えてくれた。病名は梅毒。しかし当時はなんの知識もなかったため、病院へも行かなかったという。「お酒を飲むたびに全身が迷彩柄みたいになっちゃって」。

 とても明るく振る舞う彼らからは、後悔の念は感じられない。一応質問してみたが、やはりふたりとも「後悔なんて全然してない」と断言した。専門学校へ行くためという大義名分のもと働いていたチロさんは、「そのおかげでいまがある」と過去を肯定する。それどころか、たむさんに至っては、「変な話、いまでもお金もらってヤレるんだったら普通にヤルと思います。別にもうそこまでお金に困っているわけじゃないからやらないだけで」と、ウリ専自体を特別視していないようだった……。

 インタビュー後、あらためて『ウリ専!』のページをめくってみた。「後悔なんてしていない」。 “9人のボーイたち”は、みなそう口にする。これもまた、「ひとつの生き方」ということなのだろう。カラダを売るも売らないも、すべては自分次第。その道を選択した瞬間から、彼らは前しか見据えていないのだ――。

文=渋谷アシル

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